中学受験に挑むわが子に親はどのように接すれば合格を引き寄せられるのか。慶應義塾普通部に合格した子供の両親は本番まで半年の「小6の夏」にわが子へのアプローチをがらりと変えたことが功を奏した。中学受験専門プロ家庭教師集団「名門指導会」の代表・西村則康さんと、同会副代表で理数教育家・辻義夫さんにコロナ禍の成功・失敗事例を聞いた――。
オンラインを使い自宅学習する小学生
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コロナ禍で親子の距離が変わってきた

今後の自分の人生を大きく左右するかもしれない受験に挑むのは、まだ11歳か12歳の小学6年生だ。中学受験には親の関わりが不可欠だが、その関わり方の加減が難しい。とりわけ親子の距離感だ。常にぴったりとくっついてフォローすることが、必ずしもいい伴走とは限らない。むしろ、逆効果になることもある

コロナ禍で、良くも悪くも親子の距離感が縮まったことで、こんな弊害も出ていると、中学受験専門プロ家庭教師集団「名門指導会」の代表・西村則康さんは指摘する。

「リモートワークの普及に伴い、自宅で過ごす時間を利用して親が子供の勉強に関わる機会が増えています。

すると、どうなるか。これまで塾に“丸投げ”していた親が、改めてわが子の勉強をそばで見ていたり教えたりすると、『何でこんなことも分からないのだろう?』という疑問が湧いてくる。気が短い父親の場合、5分経ったところで『何で分からないんだ!』『以前も教えただろ!』と怒鳴ってしまうという話はよく聞きます」(西村さん)

特に、成績表を几帳面にエクセルに記録しているような、いわゆる“エクセル父さん”ほどそうなりやすいと話すのは同会副代表・辻義夫さんだ。

「完全な仕事モードで、エクセルに塾の小テストや模試の結果などを入力して熟達度を見たり、今後の目標を立てたりするわけですが、想定通りにならないとイライラしてしまう。子供は親の思い通りに動かなくて当たり前。その前提が抜け落ちているのかもしれません」(辻さん)

一方、母親は母親で、呪文のように同じ声掛けをしてしまう。

「『なぜできないの?』などと『できない』というワードを連発し、ことあるごとに“できない確認”を子供と一緒にしてしまう。さらに追い打ちをかけのるは、『はぁ~』という深いため息です。子供には強力な無言のプレッシャーになります。父親から『何でできないんだ!』と叱咤され、母親からは『はぁ~』攻撃。子供の勉強のやる気はそがれ、成績は下がっていきます」(辻さん)

両親ともに、愛するわが子だからこそそやって“サポート”するのだが、完全に空回り、親子バトルも増える――。