私自身、テレビ出演をしていた数年前まで、今思うと、公正世界仮説の被害者でした。

当時はクイズ番組や教養番組、討論番組などによく呼ばれて出演していたため、知識人として取り上げられることが多かったのですが、これが「女は男よりものを知らない」と思い込んでいるステレオタイプの人たちの不興を買ってしまったのです。

バッシングの対象になってわかったこと

その結果、何が起きたかといえば、「えらそう」「性格がきつい」「意地悪」というバッシングの嵐です。

勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)
勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)

男性なら許される発言でも、女性である私が発すると、途端「上からものを言っている」となってしまうのです。バッシングは男性に限らず、女性からもたくさんありました。

経営者や政治家も同じです。

女性がリーダーシップや頭脳で勝負しようとすると、途端にバッシングを受けてしまう。そんな様子を、これまで数限りなく目の当たりにしてきました。

「女は男よりものを知らない」という自分の信じる秩序を乱されることが許せない。そういう人は、信じられないほど多数存在していることが分かります。

「お金持ち=悪い人」「貧しい人=いい人」という認知のゆがみ

公正世界仮説の延長線上に「お金をたくさん儲けているのは悪いことをしているから」という認知バイアスもあります。そのためか、「水戸黄門」に出てくる悪者は権力者や富裕層で、派手な着物を着ていたり、箱いっぱいの小判を数えていたりします。

一方で、貧しい農民が悪者として描かれることはありません。

時にこの「お金=悪の象徴」という社会的洗脳によって、社会から敵視される人や企業が出てきます。

最近ではメタ(元フェイスブック)やアマゾンなど、巨大テック企業がその標的となっています。すでに社会インフラと化しているために、批判しながらもその利便性だけは享受している人が多いようです。

この背景には、「お金儲けに成功した人は悪い人。私はいい人だから成功していない」という認知バイアスの働きがあり、お金持ちが悪役だと“気持ちがいい状態”になっているということがあります。