日本は自由で豊かなはずなのに、「閉塞感を覚える」という人が少なくない。なぜなのか。東京工業大学の西田亮介准教授は「経済成長していないことが一因ではないか。経済的な不自由さは閉塞感につながる」という――。

※本稿は、西田亮介『17歳からの民主主義とメディアの授業 ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

積み上がったコインと赤い車
写真=iStock.com/amphotora
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選択肢が豊富で、選べて、やり直せるのが「豊かな社会」

【生徒】生まれたときから自由だったと言われますが、実際には自由より閉塞感を覚えます。
【先生】そうかもしれませんね……実のところぼくもそうです。

なぜ自由で豊かなはずの自由民主主義国家で閉塞感が強いのでしょうか?

社会学では閉塞感を期待された水準と現実の差で説明しようとします。

ぼくは、本当に豊かな社会とは選択肢が豊富にあって、その選択肢を実際に選ぶことができ、仮に選択を間違えた場合にもやり直すことができるような社会だと考えています。

多くの人が閉塞感を覚えるのだとしたら、日本の社会において選ぶことができる選択肢が少なくなっているのかもしれません。たとえば、少し前には、若者たちが親にクルマを買ってもらい、デートでどんなクルマに乗っているかが大事だとされた時代もあったようです。バブル期ですね。でも、ぼくもそんな時代はドラマでしか見たことがありませんが……。

間違えれば怒られるから、みんなが安定と安牌を求める

いまは、貧しい選択肢から選べというふうに言われて、しかも間違えたときには怒られているように感じてしまいます。自己責任論の風潮もすごく強くなっていて、選択を間違えたときには、「それは選んだあなたの責任でしょう」と言われてしまう。

だからみんな間違えたくなくて、安定と安牌(リスクのない選択)を求めようとしているようです。

それからもう一つは、やっぱり経済成長していないことに起因するのではないでしょうか。

先述したようにぼくもバブルの記憶はありません。1983年生まれですから、自分が消費を積極的に行なうようになったときにはバブルがはじけたあとでした。失われた30年の世代です。ちなみに親はバブルの一番高いときに家を買ってしまいました。もう大変だったわけですね。持ち家を買っても、その後、期待したようには給料は伸びないということですから。