※本稿は、西宮伸幸『水素社会入門』(KAWADE夢新書)の一部を再編集したものです。
「環境に悪い」車のイメージを変える燃料電池車
現在、燃料電池の実用化といえば、燃料電池車がもっともよく知られた使用例でしょう。
自動車といえば、1970年代には排気ガスが大気汚染の原因のひとつとされ、また、1989年にはボルボ社が「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生み出しています」という新聞広告で自社の環境対策を訴えるなど、環境に負荷を与えるものと当然のように思われてきましたが、燃料電池車の登場で、そのイメージも大きく変わるかもしれません。
脱ガソリン車といえば、電気自動車(EV)が先行していますが、電気自動車が、電池を充電して走行するのに対し、燃料電池車は、圧縮水素を燃料として使用します。圧縮水素は、高圧タンクに貯蔵され、燃料電池に供給されます。ここで外気から取り込んだ酸素と反応し、電気を発生させモーターを回す、という仕組みです。
自動車の燃料に水素を使用することのメリットはいくつかあります。
エネルギー効率はガソリン車の2倍
まず、CO2を排出しないということ。燃料電池から吐き出されるのは水だけで、走行中に車外に排出されますが、環境に無害です。また、一酸化炭素や窒素化合物などの有害物質も排出しません。
また、他の動力に比べてエネルギー効率がよいということも燃料電池車のメリットといえるでしょう。
エネルギー源を揃えた比較では、燃料電池車の総合的なエネルギー効率は40%。これは、ガソリン車19%の約2倍であり、電気自動車(EV)33%、ハイブリッド車34%よりも、優れた数字となっています。なお、これらの数値は、少し古い2013年の新聞報道に基づくものです。
いくら環境にいい、エネルギー効率がいいといっても、実際に“気体”を燃料にしてどのくらい走るのか、疑問に思う人もいるでしょう。