「北朝鮮の最大の祝日」の式典をだまって欠席する謎

4月20日、アメリカの「CNNテレビ」は、アメリカ政府関係者の話として、「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が手術を受け、重篤な状態になっているという情報がある」と伝えた。このニュースが世界中をざわつかせている。

北朝鮮専門のインターネット新聞「デイリーNK」も4月20日夕方、今度は北朝鮮内部の消息筋の話として「金正恩委員長が12日に心臓の血管の手術を受けた」と報じた。ただし、CNNとは違い、「金正恩委員長は現在も療養中だが、状態は好転した」と伝えた。さらに「手術が行われたのは首都平壌(ピョンヤン)北方の妙香山近くにある最高指導者専用の病院で、平壌から集まったお抱えの複数の医師が執刀した」とも報じた。

金正恩氏が重篤ではないかという臆測の根拠のひとつが、「太陽節」の欠席だ。

2019年6月12日、板門店で、韓国大統領府の鄭義溶国家安保室長(前列左)と話す北朝鮮の金与正朝鮮労働党第1副部長(同右)[韓国統一省提供]
写真=時事通信フォト
2019年6月12日、板門店で、韓国大統領府の鄭義溶国家安保室長(前列左)と話す北朝鮮の金与正朝鮮労働党第1副部長(同右)[韓国統一省提供]

4月15日は、金正恩氏の祖父で、建国指導者の金日成(キム・イルソン)主席の誕生日「太陽節」で、北朝鮮の最大の祝日だ。この日は金主席の遺体がある錦繍山(クムスサン)を参拝するのが通例だ。2012年4月に最高指導者となって以降、参拝を欠かしたことはなかったが、今回は参拝の様子が報じられていない。

金正恩氏の動静は、党中央委員会本部(平壌)で4月11日に開かれた党政治局会議への出席が国内外に伝えられ、12日には朝鮮中央通信が西部地区の航空師団管下の攻撃機連隊の視察を報じていた。これが公になっている最後の動静だった。

新型コロナで「4万8528人が隔離、267人が死亡」の情報も

金正恩氏は36歳(推定)にもかかわらず、高血圧や心臓病、糖尿病などの持病を抱えているという。テレビに映し出されるあの体形から見ても太り過ぎであることは明らかで、彼に深刻な持病があっても不思議ではない。

沙鴎一歩は新型コロナウイルスの感染が気になる。北朝鮮は「感染者はゼロ」としているが、中国と親密な北朝鮮に感染者がいないわけがない。すでに産経新聞(4月26日付)は、韓国の脱北者組織「北朝鮮人民解放戦線」の報告書(4月10日付)をもとに、4万8528人が隔離され、267人の死者が出ていると報じている。

金正恩氏も最高指導者だからといって感染しないとは限らない。世界でも首相や閣僚が感染している。そして新型コロナウイルス感染症は持病のある人ほど、症状が重篤化しやすい。金正恩氏が感染して、重篤な症状に陥ったのかもしれない。

なお中国・北京発のロイター通信は4月25日、「中国が金正恩委員長の病状についてアドバイスするために医療の専門家を北朝鮮に派遣した」と伝えている。