【図表2】からは、親世代の子どもへの関与の割合が父親と母親とで違っていることもわかります。父親よりも母親のほうが干渉割合が高い傾向にあり、娘に対しては14ポイント、息子に対しては5ポイント、母親の関与が父親を上回っています。
ここで、母親の干渉度合いの強さについて一つ懸念されることがあります。それは、過干渉な母親の存在が、夫婦の役割について時代遅れな価値観を子どもにもたらしかねないということです。
時代が変わっても自分の「理想」を押しつける
夫婦の働き方はこの20~30年で大きく変わりました。なお、【図表2】のデータで調査対象となっている子世代(2016年時点で中学生から29歳)に対して、親世代(2016年時点で35~59歳)が結婚したのは今から20~30年前です。
ここ20~30年間における夫婦の働き方の変化を示した【図表3】を見てください。グラフは、非農林業における専業主婦世帯と共働き世帯の割合を示しています(農林業は原則として、家族経営・共働きが前提なのでデータには含まれない)。
親世代が結婚・出産したであろう20~30年前の1990年あたりは、ちょうど専業主婦世帯がマジョリティだった時代から、共働き世帯と専業主婦世帯が拮抗する時代へと移行した頃でした。その後、共働き世帯割合が専業主婦世帯割合を追い抜き、2017年で65%の世帯が共働き世帯となっています。
また、厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、18歳未満の子どもを持つ母親に限定すると、その7割が仕事を持っています。このように夫婦の働き方が大きく変化してきているなかで、親世代が自らの時代価値観を捨てられない場合、子世代の実情やトレンドとは反する「常識という思込み」を子どもに押しつけるリスクが生じます。
子どもの職業選択やライフデザインがゆがむ可能性
専業主婦が圧倒的だった時代の常識を捨てられない母親が子どもの就職に干渉しすぎるケースでは、子どもの職業選択やライフデザインが実体から離れてゆがむ可能性が高くなります。
たとえば息子に対して、「パパのように大黒柱としてしっかり一家を養いなさい(それがカッコいい夫の姿)」「パパよりも就職偏差値の高い会社を目指しなさい(だってあなたは大卒だもの)」と、過剰な期待を抱く。
娘に対しては、「女は子どもを産むのだから、仕事を頑張るのはそこそこにして、稼ぎのいい夫に養ってもらいなさい。それが女の幸せよ(だってママがそうだから)」「どうせ結婚・出産したら仕事をやめるかセーブするのだから、そこまで頑張らなくてもいいわよ(ママもそうしてあなたを育ててあげたのよ)」と、法整備を含む社会変化という「前提条件の変化」をまったく考慮しない「自らが歩んだライフコースの理想化と押しつけ」を行なったりしかねません。