「タイヤ世界王者」という“チャンピオンベルト”を8年連続防衛するブリヂストン。しかし常に「我々は1位では満足しない。断トツでなければならない」と繰り返す。何がそこまで彼らを駆り立てるのか。
ブリヂストンのモノづくりの精神の原点に触れようと、発祥の地である福岡県久留米市を訪れた。筑後川沿いの広大な敷地にはタイヤ生産用の3工場と部材生産用の3工場が並び、乗用車用、小型トラック用、航空機用、レーシング用、農業機械用、産業車両用の各種タイヤを生産する。扱う製品の種類が多いため、世界のグループ工場のなかでも最も多くの部材を扱う久留米工場は、今もブリヂストンのマザー工場として機能している。
(写真左)2010 年にリニューアルされ、最先端の生産システムが導入された久留米工場第一工場。小型トラック用タイヤを生産。(右)久留米工場では中型航空機用タイヤも生産。航空機用タイヤは高度な技術力が要求され、競合企業は少ない
「ここにはブリヂストンのエキスがある」と語るのは、日本タイヤ生産・日本タイヤ生産CQO担当の細幸彦だ。
「ブリヂストン製品の質を支えているのは、間違いなく現場の改善力です。生産体制の設計段階では予測しきれない微妙なズレを補い、均一で質の高い製品に仕上げていくには現場の改善力に頼らざるをえない。各部門がそれぞれ地道に工夫を積み重ね少しでも上を目指す文化は、この久留米工場で創業時から培われたもの」と細は語る。
今もここで海外の工場への技術指導が行われ、各国エリアから派遣されたグループ幹部候補生の研修場所に使われている。世界150カ国以上に事業展開するブリヂストンのモノづくりの精神的支柱が久留米工場なのである。