※本稿は、グレッグ・マキューン『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
断り方のレパートリーを増やす
エッセンシャル思考の生き方は、ノーを言いつづける生活だ。だから、上手な断り方を何種類も身につけておいたほうがいい。以下に、8つの例を紹介しよう。
1 とりあえず黙る
気まずい沈黙を怖がらず、沈黙を味方につけよう。誰かに何かを頼まれたら、少しだけ黙ってみるのだ。ゆっくり3つ数えて、それから自分の意見を言う。もう少し慣れたら、相手が気まずくなって何か言うまでじっと待ってみよう。
2 代替案を出す
代替案を出して、相手に歩み寄りながら断ろう。先日メールでお茶に誘われたとき、私はこう答えた。
「今は本の執筆で手いっぱいなんです。でも、書き終わったらぜひご一緒させてください。夏の終わり頃でどうでしょう?」
メールは、ノーを言う練習にちょうどいい。文章を何度でも推敲できるし、直接顔を見なくてすむからだ。
自分のペースを守る
3 予定を確認して折り返します
ある知り合いの女性は、有能であるがゆえに誰からも便利に使われていた。非エッセンシャル思考の典型のような人で、能力があるものだから、何でも引き受けてしまう。周囲の人はそれを知っているので、何かあると彼女に頼ろうとする。「このプロジェクトが大変なので、手を貸してくれませんか?」と言われると、彼女はついイエスと言ってしまう。仕事を抱えすぎて、ストレスばかりが増えてくる。
そんな彼女の生活を変えたのは、「予定を確認して折り返します」という言葉だった。いったん時間をおいて考えると、断ることが容易になる。その場でつい引き受けてしまうことがなくなり、自分のペースで仕事ができるようになった。
4 自動返信メール
休暇中や外出中に自動返信メールを使う人は多いと思う。今は返信できないので、あとで折り返しますというものだ。受けとったほうもいやな気持ちにならないし、とても洗練された断り方である。それなら、休暇中にかぎらず普段から自動返信メールを使ってみてはどうだろう?
私は書籍『エッセンシャル思考』を書いているあいだ、「執筆のために隠遁中」という件名の自動返信メールを設定していた。「現在、本の執筆に忙殺されております。返信が遅くなりますが、どうかご理解ください」
驚いたことに、誰も怒らなかったし文句を言わなかった。執筆が終わるまで返信できないという事実を、そのまま受け入れてくれたのだ。
上司でも親しい人でも断り方はある
5 どの仕事を後まわしにしますか?
上司からの依頼は断りづらいものだ。機嫌を損ねたら、どうなるかわからない。それでも、無理な状況で仕事を引き受けてしまうと、結果はよけいに悪いことになる。目の前の依頼を断らなければ、もっと重要な仕事が駄目になるかもしれないのだ。
単にノーと言うのが難しければ、上司にトレードオフを意識させよう。
たとえば、「はい、ではこの仕事を優先でやります。今抱えている仕事のうち、どれを後まわしにしましょうか?」。
あるいはこんなふうに断ってもいい。
「今かなり仕事を抱えているので、これを無理やり差し込むと品質が落ちてしまいます」
私の知り合いも、部下にそうやって断られたと言っていた。筋の通った断り方に納得し、その仕事は別の何でも引き受ける部下にまわしたそうだ。
6 冗談めかして断る
親しい間柄なら、冗談めかして断ってしまえばいい。友人からマラソンに誘われたとき、私は「絶対無理!」と言って断った。友人は「まったく、きみらしい答えだね」と笑ってくれた。普段からエッセンシャル思考をアピールしておくと、こういうときに話が早くて助かる。
選り好みしてもいい
7 肯定を使って否定する
喜んで引き受けるふりをして、実は断るという高度なテクニック。たとえば「どうぞ僕の車を使ってください。キーを置いておきますね」。親切な言葉を使いながら、運転は引き受けないという意志をきっぱりと表現している。いくらかは力になりたいが、全面的に巻き込まれたくない場合にきわめて有効だ。
8 別の人を紹介する
「僕は無理ですけど、彼は興味を示すんじゃないかな」と言って、別の人にまわしてしまおう。自分を見込んで特別に頼んでくれたと思いたいところだが、実際は誰がやってもいい場合がほとんどだ。
アパレル大手のアンを経営するケイ・クリルは、社交の誘いを断るのが大の苦手だった。まったく興味のない交流イベントに参加することもしょっちゅうだった。会場に入った瞬間、後悔することはわかっているのに。
そんなある日、信頼する先輩に「断らなければ駄目だ」と言われた。どうでもいい人やイベントを切り捨てて、本当に意味のあることに100%の力を注ぎなさい、と。それを聞いて、彼女は心が軽くなった。選り好みをしてもいいのだ、と思えるようになった。
やってみると、誘いを断るのは思ったより簡単だった。
「何が重要かを考えたら、断ることは怖くなくなりました。もっと早く気づけばよかった」
ノーを言うことは、優秀な人の必須スキルだ。どんなスキルでもそうだが、はじめはうまくいかないこともある。それでも練習するうちに、だんだん技術が身についてくる。試行錯誤を重ね、腕を磨いていけばいい。そのうちに断り方のレパートリーも増えて、そつなく断れるようになるはずだ。どんな相手からのどんな依頼も、上手に断ることはできる。
ハイドリック・アンド・ストラグルズ社のトム・フリールCEOの言葉を引用しよう。
「われわれに必要なのは、もっとゆっくりイエスを言い、もっとすばやくノーを言うことだ」
