※本稿は、藤吉豊・小川真理子『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)の一部を再編集したものです。
自分で何でもやりすぎない
時間術の名著100冊中35冊が、「すべてを自分でやろうとしない」「周囲を巻き込む」「他人の助けを借りる」など、「自分で何でもやりすぎない」ことの重要性を説いていました。
「私たちがあまりに多忙な日々を送らざるをえないのは多くの場合、あらゆることを自分でやろうとしすぎるのが原因だ。強力な人的ネットワークを築ければ、自分の肩にのしかかる負担をいくらか軽くできるだろう」(リンダ・グラットン『ワーク・シフト』/プレジデント社)
人に任せた方がいい仕事3つ
では、どのようなケースは人に任せたほうがいいのでしょうか? おもに次の3つです。
◆人に任せたほうがいい3つのケース
(1)誰でもできる仕事
自分の仕事を「自分にしかできない仕事」と「ほかの人でも(誰でも)できる仕事」に分け、誰でもできる仕事は任せる。
「誰でもできる仕事は、部下などにどんどん振ってしまい、『自分にしかできない仕事』をやるようにしましょう。そうすることで、付加価値の高い仕事だけをすることができ、会社のため、ひいては社会のために役立つことができるのです」(山本憲明『「仕事が速い人」と「仕事が遅い人」の習慣』/明日香出版社)
(2)自分が苦手・不得意なこと
「向き・不向きを判別し、自分にはできない、向いていない業務だと判断したなら、その分野の仕事は誰か別の得意な人に、できるだけお任せするようにしましょう。
すべての領域の仕事を自分だけでやる必要はないのです」(山本大平『トヨタの会議は30分』/すばる舎)
(3)行き詰まってきたとき
「私たちはつい、自分に任された仕事は自分の力だけで行なおうとします。(略)
しかし、『その道の達人』といわれる人は、やはり、普通の人とは違います。私たちが何人集まっても出なかったアイデアを思いついたり、新しい視点で物事を見られる。それが、ミス撲滅の大きな一手となるのです」(飯野謙次『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』/文響社)
人に任せたほうがいい仕事には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
エッセイストの臼井由紀さんは、「任せやすい順」に次のような仕事を挙げています。
「①簡単な事務処理的なこと」
「②定型文やリストがあればできること」
「③部下・後輩の成長につながる資料の作成」
「④チームでやったほうがさまざまなアイデアが出るもの」
(『55歳からやりたいことを全部やる! 時間術』/日経BP日本経済新聞出版)
任せるときは具体的に
仕事を誰かに依頼する場合、依頼の仕方を工夫する必要があります。あいまいに依頼すると、期待していたものと違う成果物になる可能性があります。
飯田剛弘さんは、『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』(明日香出版社)で次のように指摘しています。
「依頼した仕事がうまくいかないと、(略)もっともらしい言い訳や相手に非があることを強調し、誤魔化します。
これは、ハッキリ言ってしまえば、依頼者の力不足です。何を具体的に求めているのか、いつまでに完成させるのかを明確にし、依頼することが重要です」
◆人に仕事を依頼するときのポイント
●具体的に依頼する
「何を」「どこまで」「いつまでに(締め切り)」「どんな形でほしいのか(完成のイメージ)」を明確に伝える。
●早めに依頼する
相手の作業時間が取れるように早めに依頼する。
●口頭では伝えない
相手が真剣に聞いていない場合もある。
●謙虚に依頼する
相手が抱えている仕事量などを見極めた上で、謙虚な気持ちで依頼する。
●相手のスキルを見極めた上で依頼する
スキル不足の場合、期待通りの成果物が上がってこない場合も。
● 進捗を確認する
頼みっぱなしではなく、途中で定期的に進捗状況を確認する。
● 感謝を伝える
依頼した仕事が終わったら、お礼を伝える。
人に任せることは悪いことではない
人に任せることは大切です。
しかし、実際は自分で仕事を抱え込んでいる人が少なくありません。
「イギリスのある大学の調査によれば、事務系の職場の上司は、本来なら部下でもできる仕事の41%を自分で抱え込んでしまっているそうです」(石川和男『仕事が速い人は、「これ」しかやらない』/PHP研究所)
なかには人に何かを頼むのが苦手な人もいます。
「やりたくないことを相手に押し付けているようで気が引ける」
「自分でやったほうが早い」
「自分のほうがうまくできる」
と、人に任せずに、自分でやってしまう人もいます。
しかし、人に任せないことで相手の成長の機会を取り上げている可能性もあります。また、何もかも自分でやってしまうことで、時間を奪われ、効率が低下する場合もあります。人に任せるのは悪いことではないのです。
もっと部下や仲間を頼ってもいい
タイムコーディネーターの吉武麻子さんは、『目標や夢が達成できる1年・1カ月・1週間・1日の時間術』(かんき出版)で次のように記しています。
「実は、抱え込んでおくことが、結果的に皆を不幸にする可能性もあります。
自分以外の人の成長と活躍の機会を奪っているかもしれないのです。家庭でも職場でも、抱え込まずに誰もが担える環境づくりをしておくと、いざというときに助け合えます」
研修トレーナーの伊庭正康さんも『できるリーダーは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)で、次のように述べています。
「私が研修で耳にする部下の不満を紹介します。
『もっと、信頼して任せてほしい』『チームでできることはあると思うのに』──。
つまり、もっと部下や仲間を頼ってもいい、ということなのです」
誰かに仕事を任せたり、頼んだりすることは、自分の時間をつくるだけでなく、相手のためにもなっている可能性が少なくないのです。また、相手が協力したくなるように、普段からコミュニケーションを深めておくことも不可欠です。
「やらないこと」を決める
「『やること』ではなく『やらないこと』を決める」です。
「自分にとって本当に大切なもの以外は手放す」
「しないことを明確にする」
「絶対にしないことを決めておく」
など、時間術の名著の多くに、「やめること」「しないこと」を決める大切さが書かれています。
実業家の堀江貴文さんは『時間革命』(朝日新聞出版)で、次のように記しています。
「『シンプルに考えて、自分時間に満たされた人生を生きる』とは、(略)本当に大切にしたいこと“以外”はすべて手放し、自分の根本的な欲求に向き合うことなのだ。
『自分にとっていちばん大切なことは何か?』──それをシンプルに絞り込めた人こそが、自分の時間を手に入れているのである」
なぜ、やらないことを決めるといいのでしょうか?
やらないことを決めるメリットはおもに次の4つです。
①本当に大切なことに使う時間をつくり出せる。
②行動や判断に迷いがなくなる。
③やることを少なくすると、心にもスケジュールにも余裕が生まれる。
④集中しやすくなる。
本当にやるべきことに時間を確保する
「世の中には、『一流の人ほど多くのことをやっている』というイメージがあります。(略)
多くのことをこなしているように見える彼らは、それ以上に多くのことに対して『これはやらない』と決め、実践できているのです。
だからこそ、時間の使い方にムダがなく、本当にやるべきことをやる時間を確保できるのです」(石田淳『なぜ一流は「その時間」を作り出せるのか』/青春出版社)
「『やらないこと』を基準にフィルタリングしていくと、かなりの量の『今はやらなくてもいいこと』がそぎ落とされる。すると、『すぐできること、かつ絶対にやらなきゃいけないこと』がおのずとあぶり出されるので、そういう優先度の高いものをスケジュールに組み込んでいく」(佐々木大輔『「3か月」の使い方で人生は変わる』/日本実業出版社)
1「何をどうやめるか」の基準を明確に
2人生が豊かになる「やらないことリスト」
やめても仕事に影響しないか
まず、何をどうやめるか、基準をつくりましょう。
◆やらないことを決めるポイント
●やらないことは先に決める。
●目的をはっきりさせて、やらなくていいことを明確にする。
●時間を確保できるよう、できるだけ具体的に決める。
×「ぼーっとしない」「悩まない」
○「メール返信に30分以上時間をかけない」
●決めたら、頭の中だけで考えず、文字化する。文字化してルールにしておくと達成しやすい。
●「やらなくても仕事に影響はない」など理由をつける。
何でもかんでもやめていいわけではなく、「やめても仕事に影響しない」「やめても生活に影響しない」ことが大切です。そのためにやめる基準を設けておくといいでしょう。
らしさラボ代表の伊庭正康さんは、『できるリーダーは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)で、やらないことを決めるときに、「ムダを診断する基準」の使用をすすめています。
「《ムダを診断する基準》
●ヤメても、『お客様満足』に影響しない
●ヤメても、『従業員満足』に影響しない
●ヤメても、『リスクマネジメント』に影響しない
●ヤメても、『業績』に影響しない」
「やらないことリスト」を作る
やらないことリストは、「今日はやらない」「今週はやらない」などのように、期限を決めたリストもあれば、「仕事のルールとしてやらない」のようにいつもやらない基本リストもあります。
まずは「基本リスト」をつくり、「今日はやらないことリスト」は今日のToDoリストをつくる際に一緒につくるといいでしょう。
以下を参考に、さっそく自身のやらないことリストをつくってみてください。
●ランチタイムには仕事をしない
●午後6時以降は仕事をしない
●進行中のプロジェクト以外の仕事には手を出さない
●メールの処理に30分以上かけない
●計画した仕事が完了するまで他のことをしない
(マーク・フォースター『仕事に追われない仕事術』/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
●テレビ番組は録画し、放送時間に見ない
●ラッシュ時の電車には乗らない
●脂質20グラムを超えるものは食べない(ダイエット時のみ)
●24時以降に寝ない
●他人の陰口を言わない
(塚本亮『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』/明日香出版社)
やりたいことに時間を使うべき
時間術の名著を読むと、
「やりたくないこと、嫌いなことに時間を使ってはいけない」
「やらされている仕事の時間を減らし、やりたいことに時間を使うべき」
「通勤、したくない電話、気を使う飲み会など、他人のための時間を生きてはいけない」
という考えが目立ちました。
仕事では、「やりたくないけれど、やらざるを得ないとき」もあります。しかし、
「苦手な分野ではなく、自分の得意な分野(好きな分野)で力を発揮する」
「苦手なこと、嫌いなことは人に頼む(外注する)」
「嫌いなことに時間をかけず短時間で終わらせる方法を考える」
といった工夫をして、やりたくないことをする時間を減らすことも必要です。
嫌いなことは時間の無駄
「嫌いなことに携わる時間とは、人生における『無駄な時間』とも言い換えられます。無駄な時間こそ、人生における一番の損です」(大住力『一度しかない人生を「どう生きるか」がわかる100年カレンダー』/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
◆好きなことに時間を使ったほうがいい理由
●モチベーションが高くなるから。
●精神的に健康でいられるから(我慢してやりたくないことを続けると体調を崩しかねない)。
●「楽しかった」「幸せだ」といった充足感を得られるから。
●自分のやりたいことが、周囲の幸せにもつながっているから。
●得意なことを伸ばしたほうが、差別化が図れるから。
●「好きこそものの上手なれ」で、好きなことをしたほうがスキルを高めることができるから。
●好きなことに時間を割くほうが集中力が高くなるから。
●他人の目が気にならなくなるから。
「これからはアクセルを踏み続けることをやめて、好きなことや楽しいことを選んで、自分の心が喜ぶことに人生の在庫時間の多くを使っていきましょう。
『わがままに見えるのでは?』と思う方がいるかもしれません。しかし、『社会の役に立ちたい』『周囲の人を笑顔にしたい』という視点があれば、それは少しもわがままではありません」(臼井由妃『55歳からやりたいことを全部やる! 時間術』/日経BP日本経済新聞出版)
人生の時間は有限。やりたくないことは最小限に