フリーランスで働くうえで仕事が途切れないコツはあるのか。ライターの小川真理子さんは「胸を張って言えるのは仲間を大切にしてきたということだ。たとえば、同業者の仲間の手が空いているときは、仕事や受注先の担当者を紹介した。仕事を取られたことはなく、むしろ私の仕事は増えていった」という――。

※本稿は、小川真理子『仕事がとぎれない ムリせず長く続けられる 女性フリーランスの働き方』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

仕事は仲間にどんどん紹介する

世の中には、バリバリ仕事ができる人がいます。営業トークが上手で、次から次へと仕事が取れたり、頭の回転が速く、仕事を効率的にこなせる。集中力も高い。

私はそういうタイプではありません。

そんな私が、ここまでやってこられたのは、「仲間」と仕事をしてきたからです。

25年以上のフリーランス経験で胸を張っていえるのは、仲間を大切にしてきたことです。

たとえば、同業者の仲間の手が空いていると聞けば、それを覚えておき、仕事や受注先の担当者を紹介してきました。

「そんなことをしたら自分の立場が危うくなるのでは?」と思っている人がいるかもしれませんね。しかし、自分の仕事を取られたことは一度もありません。

むしろ、私の仕事は増えていきました。

たとえば、自分が5社の取引先をもっていたとします。自分と異なる5社の取引先をもつ仲間と組めば、取引先は10社になります。

結婚をして親戚が倍になる感覚に似ているかもしれません。

新規の取引先を5社増やすのは大変なことです。しかし、仲間と組めば、実現する可能性は一気に高まります。ひとりで営業するよりも効率的なのです。

これまでいろいろな仕事先を紹介してもらいました。個人的な事情で自分の仕事ができないときも、仲間に助けてもらいました。そうした経験は数えきれないほどあります。

握手をするビジネスマン
写真=iStock.com/Atstock Productions
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紹介してくれた人には事後報告を

「ビジネスでは人と人とのつながりが大切。お客さまを紹介してもらったときには、丁寧にフォローしていくことが欠かせない」

私にそう教えてくれたのは、作家や経営コンサルタントとしても活躍する歯科医師の井上裕之先生です。

お客さまに丁寧に対応するのはもちろんのこと、自分に仕事を紹介してくれた人に対して、お客さまとのやりとりを報告します。

これは基本のマナーといえます。なぜなら、紹介した人は、「その後、どうなったのか」を気にしているからです。

もしも、取引先を紹介してもらった場合は、

「紹介してくださった◇◇社の○○さんと先日お会いしてきました。さっそく、案件をご依頼いただきました。大変助かりました。紹介してくださり、本当にありがとうございました」

と紹介してくれた人にお礼と報告をします。

きちんとお礼と報告をすると、紹介してくれた人は、「役に立てて良かった。またこの人に紹介しよう」と思うものです。

仲間とは取引先をお互いに紹介し合い、紹介後のフォローを大切にしましょう。

〈POINT〉フリーランスだからこそ助け合える仲間を大切にする

仲間がいたから続けてこれた

私がフリーランスを長く続けてこられた一番の理由は、フリーランスの仲間をつくって仕事をしてきたからです。これに尽きます。

最初は、自宅で書き、メールで納品する「ひとりきり」で仕事をするスタイルでした。

そのうち、ある会社の外注スタッフとして、カタログや社史などの年史をつくる仕事をするようになりました。案件ごとに仕事をする業務委託契約だったので、出社や退勤する時間にしばりはなく、並行して別の会社の仕事を請け負うことも自由です。

その会社には同世代の従業員がいたので、ひとりで仕事をするよりも楽しく、「自分は人と一緒に仕事をするほうが向いているのかも」と感じました。

その後、別の会社でも、業務委託契約で数名の編集者と情報誌をつくる仕事をしました。いろいろな人と知恵を出し合うことで、よりよいものをつくりあげる雑誌編集は私の好きな仕事のひとつで、このときも充実感がありました。

円陣を組んで手を重ねる人々
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決定権が自分にある

「だったらフリーランスをやめて、編プロや出版社に就職すればよかったのではないか?」という声も聞こえてきそうです。

しかし、社員になると会社の意向に沿った仕事が優先され、苦手な案件もしなければなりません。それは避けたかったのです。

フリーランスであれば、自分に決定権があり、やりたい仕事とそうでない仕事を選ぶことができます。時間も自分でコントロールできます。

私にフリーランスとしてやっていけそうなスキルがまったくなかったら、会社員の立場を選んだかもしれません。その点は、編プロでの激務によって鍛えられ、土台ができたことが奏功そうこうしたように思います。

そもそもサラリーマン家庭に育っていなかったこともあり、「勤める」というスタイルになじめなかった気もします。「社員」という選択肢はありませんでした。

仕事を共有するチームを作る

その後、フリーランスの仲間と「クロロス」というユニットを立ち上げました。

編プロに正社員として働いていたときの先輩である柴山幸夫と、同僚だった藤よし豊(※)、藤よしの知り合いだった斎藤充(のちにデザイナーに転向)、私の計4名のユニットです。

私たちのいう「ユニット」は法人組織ではありません。それぞれが自立し、自分でできる仕事はそれぞれがやるけれど、4人でできる仕事が入ったときは4人でやるという、運命共同体ではなく「仕事を共有するチーム」です。

※よしの漢字は土の下に口

オフィスで同僚グループ
写真=iStock.com/Edwin Tan
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ユニットの5つのメリット

ユニットのメリットは下記5つ。

1 仕事をシェアできる
2 上下関係の窮屈きゅうくつさがない
3 大きなプロジェクトを引き受けられる
4 短納期の仕事を引き受けられる
5 困ったときに助け合える
1 仕事をシェアできる
小川真理子『仕事がとぎれない ムリせず長く続けられる 女性フリーランスの働き方』(日本実業出版社)
小川真理子『仕事がとぎれない ムリせず長く続けられる 女性フリーランスの働き方』(日本実業出版社)

フリーランスで仕事をしていると、立て続けに依頼がくることもあれば、仕事が途切れることもあります。そんなとき、仲間がいると仕事をシェアできます。

たとえば、「今、スケジュール的に自分は対応できませんが、よろしければ、ほかのメンバーに聞いてみましょうか?」と提案できるのです。

依頼主にとっては、別の候補を探す手間を省けるので喜ばれました。クロロスのメンバーにとっても、新しい仕事に着手できることはメリットになります。

2 上下関係の窮屈さがない

クロロスは法人化していません。そのため、主従関係はありません。

4人全員で取り組むような仕事は、案件ごとにリーダーを決めて作業を進めるようにしていましたが、誰が上で誰が下といった組織特有の窮屈さはありませんでした。

4人でマンションの一室を借りて事務所にしていたときも、賃料等はワリカンでした。

3 大きなプロジェクトを引き受けられる

ページ数や取材件数の多い大型案件の制作依頼が入ることもありました。ひとりでは手に負えず受けづらいですが、仲間がいれば手分けして制作できます。

4 短納期の仕事を引き受けられる

タイトなスケジュールの案件も、数人で手分けすることで納品できます。

5 困ったときに助け合える

家族の病気等で身動きが取れないときなどに、お互いに支え合えるのもメリットです。

〈POINT〉法人ではない「ユニット」でいいとこどりをするのも一案