※本稿は、杉原杏璃『マンガでよくわかる資産運用1年生 億り人杉原杏璃と一緒に』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
約6000本の投資信託の中からどれを選ぶか
日本国内で運用されている投資信託の本数は2024年3月末時点で5915本あります。
約6000本もあるなかから1本を選ぶのは、迷ってしまいそうだし大変、などと思われるかも知れませんが、それはやり方次第です。というのも、全体で見れば約6000本でも、投資信託を販売している銀行や証券会社では、6000本全部扱っているわけではないからです。
株式の場合、どの証券会社でも同じ銘柄を売買できますが、投資信託の場合、販売金融機関によって扱っている銘柄は異なります。つまり、1つの販売金融機関で、約6000本の投資信託をすべて購入できるわけではないのです。
ちなみに楽天証券の場合、扱っている投資信託の本数は2024年6月3日現在で2627本ですから、投資信託の購入窓口を楽天証券にした時点で、購入できる投資信託の本数は約半分にまで絞り込むことができます。
まずは新NISA「つみたて投資枠」対象の280本から選んでみる
さらに、新NISAのつみたて投資枠を使って購入できる投資信託はおよそ280本ですから、まずは非課税枠で運用できる新NISAで買える商品の中から選ぶといいと思います。楽天証券の場合、投資信託のページを見ると、自分自身のライフプランなどに、適した投資信託を絞り込める機能なども付いているので、それを活用すれば、投資信託の沼にはまることなく、自分自身のスタイルに合った投資信託の候補を抽出することができます。
このように、さまざまな条件から自分に合うと思われる投資信託を抽出するプロセスのことをスクリーニングといいますが、楽天証券に限らず、他の証券会社でもホームページにこの手のスクリーニング機能を実装させているケースが多いので、とりあえずどの証券会社でも良いので、一度、ホームページをチェックしてみてください。
投資信託の仕組みを知っておこう
ここで、投資信託がどのようにして運用され、販売されているのかを簡単に説明しておきますね。
投資信託はファンドの運用を指図する「投資信託会社」、ファンドの資産を管理する「受託銀行」、そして販売窓口になる「販売金融機関」の三者で構成されています。
一部の例外を除き、基本的に投資信託を購入する際には、証券会社や銀行などの販売金融機関の窓口、もしくはインターネットのホームページから申し込みます。
個人が投資信託を購入すると、その購入代金は受託銀行が管理します。
また、ファンドに集まった資金で買い付けた株式や債券なども、すべてこの受託銀行が管理することになります。そうすることによって、販売金融機関や投資信託会社が経営破綻しても、ファンドの資産が守られる仕組みになっています。そして投資信託会社は、受託銀行に対して、株式や債券の売買を指示します。これが投資信託の大まかな仕組みです。
投資信託には上場しているものとしていないものがある
ところで、投資信託には株式などと同じように証券取引所に上場されているものと、されていないものとがあります。証券取引所に上場されている投資信託には、「ETF」と「J-REIT」があります。
ETFとJ-REITは、証券取引所に上場されているので、株式と同じように午前9時から午後3時まで、証券取引所が開いている時間帯を通じて、いつでも売買できます。
両者とも証券取引所に上場されている投資信託ですが、投資対象が全く異なるものなので、この点は注意が必要です。
ETFやJ-REITについて詳しく説明すると、それだけで1冊になってしまうので、あまり詳しくは触れませんが、ETFは日本国内、および海外のさまざまな株価インデックスなどに連動するタイプ、私はこのETFが大好きで、日経平均に連動するETFや半導体関連のETFを売買することが多いです。J-REITは国内の不動産市況を反映するタイプで、かつ証券取引所に上場されている投資信託と考えていただければいいと思います。
また、ここで説明している約6000本の投資信託は、証券取引所に上場されていないタイプです。日本における投資信託の大半は、この上場されていない投資信託であると考えてください。
アクティブ型とインデックス型、どちらがいいか
ここまでいろいろなタイプの投資信託について説明してきましたが、もう1つとても大切な分類があります。
それは運用のスタイルによって分類するもので、「アクティブ型」と「インデックス型」の2種類になります。ちなみにインデックスとは、マーケット全体の方向性を示す株価指数のことで、日本だと日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、海外だと米国のNYダウやS&P500、MSCIコクサイなどが有名です。
国内外の株式型、国内外の債券型など資産クラスの別に関係なく、大半の投資信託にアクティブ型とインデックス型がありますが、債券のインデックス型は、ややマイナーで、インデックス型の投資信託として多くを占めるのは株式型です。
両者の違いを簡単に言うと、アクティブ型はできるだけ高いリターンを目指した尖った運用であり、インデックス型は市場全体の平均的なリターンを目指した運用、となります。
アクティブ型の成績は運用会社や運用担当者の能力に左右される
どちらが良いのかについては、いずれも一長一短なので一概には言えません。
アクティブ型は、平均的なリターンを目指すインデックス型に比べて高いリターンが実現する可能性はあるものの、逆にインデックス型を下回るリターンになることもあります。
アクティブ型は、インデックス型を上回るリターンを実現させるために、運用者が企業リサーチをし、将来性の高い企業のみに投資します。組入銘柄数(ファンドが投資している銘柄)も、たとえば東証株価指数に連動するインデックスファンドなら、東証プライム市場に上場されている全銘柄(1841銘柄)に投資したのと同じようなポートフォリオで運用しますが、日本株のアクティブ型運用だと、なかには30銘柄程度にしか投資しないファンドもあります。
組入銘柄数が少なくなればなるほど、高い精度で銘柄を厳選しなければなりません。その精度が下がると、インデックス以下のリターンしか得られなくなるのです。
つまりアクティブ型の場合、運用する投資信託会社、それに属している運用担当者の能力によって、リターンには大きな差が生じます。その中から、良い運用成績が期待できるアクティブ型ファンドを選ぶのは、難易度の高い作業になります。
インデックス型でも十分なリターンが期待できる
それに対して、インデックス型の場合、同じ株価指数に連動するファンドであれば、運用会社や運用担当者が違ったとしても、リターンの差はほとんど生じません。
したがって、どの運用会社のインデックス型ファンドを買っても、結果はほぼ同じです。
正直なところ、これまでの米国株式市場のように、市場全体が値上がりし続けているような場合は、インデックス型でも十分なリターンが期待できます。
でも、日本のように国の経済が成熟し、かつての高度経済成長期のような経済成長が期待できないような国においては、そのなかでも成長が期待できる個別企業を選んで投資する必要があるので、どちらかといえば優秀な運用能力を持つ運用会社を探して、そこが運用するアクティブ型ファンドを買ったほうが、長期的には高いリターンが実現する可能性があるとも考えられます。
どちらにすべきかは、本当に答えが見つからない問題ですので、最終的には投資信託を買って自分の資産を運用する個人が、自分の趣味嗜好で選んでいくしかないでしょう。
投資信託の運用コストに注意しよう
株式を売買するのに委託手数料というコストがかかるのと同じように、投資信託で運用する時もコストがかかります。
投資信託のコストは、おおまかに「購入時手数料」と「信託報酬」の2つがあります。「購入時手数料」は、投資信託を購入する時に購入金額に対して1%とか2%が取られます。たとえば、10万円分購入した投資信託の購入時手数料が2%だとしたら、その金額は2000円になります。これは投資信託を買う人が、その投資信託を販売している販売金融機関に対して支払うものです。
そして、もう1つの「信託報酬」は、ファンドを保有し続けている期間に応じて、年率換算したものが自動的に引き落とされていきます。仮に信託報酬率が年2%だとしたら、その365分の1日分が日々、購入資金から徴収されていくのです。
これらのコストは基本的に、低率であるに越したことはありません。ちなみに最近は、購入時の手数料を取らないタイプの投資信託が増えています。また株式の場合は、買い付ける時だけでなく売却時にも手数料がかかりますが、投資信託は解約時手数料を取らないファンドが大半です。
信託報酬率は、こちらも昨今ではかなり引き下げ傾向にあります。特にインデックス型(運用成績が日経平均株価などの株価インデックスに連動することを目指した投資信託の場合)は、年率0.2%前後と極めて低率に設定されているものが増えてきています。
基本的に、インデックス型の投資信託は全体的に信託報酬率が低くなる一方、アクティブ型(株価インデックスを超える運用成績を目指すタイプの投資信託)は、信託報酬率も高めに設定される傾向が見られます。
といっても、昔に比べると全体的に信託報酬率は低めになっていて、アクティブ型の投資信託でも年1%前後に設定されるものが増えています。
以上が、投資信託の大まかな仕組みです。
何事も「習うより慣れろ」。今、投資は数千円からチャレンジできる時代ですから、ぜひ、資産形成の最初の一歩を踏み出してみてください。