頑張って節約生活を送っているのにお金が貯まらないと嘆く人は多い。タレントであり投資家、実業家でもある杉原杏璃さんは「これからしばらく給料が増えず、インフレの進む日本において、節約だけで資産形成をすることは無理がある。資産運用をプラスして効率よくお金を増やすことが大切」という――。

※本稿は、杉原杏璃『マンガでよくわかる資産運用1年生 億り人杉原杏璃と一緒に』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

子どもの頃からお金に関して効率的な考え方をしてきた

私、杉原杏璃は、なぜか子どもの頃から、お金に関しては効率的な考え方をするタイプのようです。その理由は、よくわからないのですが、気がつくとそうでした。

たとえば、子どもの頃のクリスマスプレゼントにしても、私と弟とで上手に補完し合えるような内容を、親にお願いしていたような記憶があります。

どういうことかというと、テレビゲームをプレゼントしてもらうのであれば、弟がゲーム機の本体を買ってもらい、そのソフトを数本、私が買ってもらうというようにするのです。

またゲーム機を複数台持つようになった時は、昨年がプレイステーションのソフトをプレゼントしてもらったとしたら、今年はセガサターンのソフトにしてもらうというようにしていました。それを自分たちで考えて、両親にお願いするのです。

そういう子ども時代を送ってきた私が今、どうなっているのかというと、やはり変わらず効率性を重視したお金の使い方を心がけています。

お金の「効率性」は「節約」とは違う

さて、効率性は「節約」と少し違います。

お金の効率性は、無駄のない使い方をすることですが、節約は使うこと自体を抑えて我慢することです。

あまり我慢ってしたくありませんよね。

私はあまり物欲がなく、なんでもかんでも高級品を買うというタイプではありません。

そのことも結果的に節約につながっている面もあるのですが、正直、節約にどれだけの効果があるのかについては、皆さん、冷静に考えてみてもいいかもしれません。

「ちりも積もれば……」などという言葉もありますが、たとえば電気代の節約で契約アンペアを見直して月300円、待機電力の無駄をなくして月750円、冷蔵庫の設定温度を高くするなど家電の使い方を見直して月1000円、これで毎月合計2050円の節約になるなど、涙ぐましい節約をすることに、どれだけの効果があるのかを、改めて考えてみてください。

節約には収入以上の効果は期待できない

この手の節約話をする人は、結論としてこう言います。

「毎月、生活の必要経費を1万円抑えられれば年間12万円、10年で120万円の節約になります。30年で360万円だから、自動車1台分です」

私はこういう話を聞くと、気分がしらけてしまいます。

今、360万円が入ってくるなら良いのですが、30年後に入ってくる360万円に、現時点でどれだけの価値があるのか、と考えてしまうのです。

もし将来、日本の物価がどんどん上昇したら、30年後の360万円が持ちうる価値は、今受け取る360万円のそれに比べて、かなり落ちるはずです。

もう少し言うと、節約には今、得ている収入以上の効果は期待できません。

当たり前といえば当たり前の話なのですが、毎月のお給料が手取り20万円として、どれだけ頑張って節約したとしても、20万円以上のお金を残すことはできないのです。これが節約の限界であり、節約だけで資産形成をすること自体に無理があります。

でも、これに資産運用をプラスすると、効率よくお金を増やすことができます。

我慢に我慢を重ねて、節約だけで何とかしのごうとするのではなく、無駄遣いを避けたうえで残ったお金を投資に回していくという考え方をおすすめします。

日本の会社員の給料はこれからも上がらない

資産運用と節約、そして効率的なお金の使い方で、自分の資産を増やすことが大事ですが、実は「それで将来の資産形成は十分」、とは言えないかもしれません。

なぜなら、これからはきっとお給料がそんなに増えないからです。

もちろん、国は今、積極的に企業に対して「お給料を増やすように」という要望を出していますが、そう簡単には増えないでしょう。なぜなら日本企業は、業績が大幅に伸びたとしても、社員のお給料を急に上げられない理由があるからです。まず、企業側がなかなか社員を解雇できないからです。

「終身雇用制度は終った」などと言われていますが、正社員の大半は今も終身雇用に近い状態で働いています。ただ、正社員を解雇できないとなると、業績の先行きが非常に厳しい時、社員全員を企業が抱え込むことになり、収益が圧迫されます。

そうならないようにするためには、社員のお給料を低く抑えておく必要があります。

つまりいつでも社員を解雇できるような環境を整備しない限り、日本企業の社員のお給料は上がりにくいといえるでしょう。

逆に、米国企業の社員の給料が高いのは、いつでも社員を解雇できるからです。社員からすれば、そのリスクがある分だけ高めのお給料をもらわないと働けない、ということもあるでしょう。

給料の増えない時代に複数のお金の流れを持っておく

また、日本はこれから人口が減少していきます。それによって経済活動が落ち込んでいくと、企業も儲かりにくくなり、ますます社員のお給料が上がりにくくなります。

もちろん、稼ぐ場を日本国内ではなく海外に展開しているグローバル企業は少し事情が異なるかも知れませんが、少なくとも日本国内をメインのマーケットにしているような企業の場合、人口減少は業績に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。そういった企業に勤めている人は、恐らくお給料が上がらない環境で働き続けることになります。

お給料がなかなか上がらないという環境に身を置いている人は、「副業」などによって収入を得る道を増やす必要があります。

私自身も、芸能だけでなく実業にも携わっていますし、株式投資や不動産投資をしていますが、それは自分に入ってくるお金の流れを増やすという狙いがあります。

複数のお金の流れを持っておけば、たとえ会社が倒産するとか、投資に失敗するといったことがあっても、残りのお金の流れが健全であれば、生活に困ることがないからです。

インフレになるとお金の価値が相対的に減る

「どうして資産運用する必要があるのでしょうか」

時々、このような質問を受けることがあります。

もちろん自分の老後を考えて、少しでも多くのお金を作っておく必要があるのは言うまでもありませんが、資産運用にはもう1つ、大きな目的があります。

それは、インフレによって生じる悪影響から、自分の大事な財産を守るためです。

最近、「物価が2%上昇しました」といったニュースを見聞きすることがあると思います。このように物価が上昇することを「インフレ」と言います。

日本はバブル経済が崩壊してから、20年以上にわたって物価が下がり続けました。このように、継続的に物価が下がり続けることを、インフレの逆で「デフレ」と言います。

ところがこの1、2年で、今度はインフレの影響が私たちの生活に及ぶようになってきました。インフレが進むと、相対的にお金の価値が目減りしていきます。

たとえば1個=100円で買えるものがあったとして、それを10個買うのに必要なお金は1000円です。

では、モノの値段が1個=200円に値上がりしたら、どうなるでしょうか。同じ1000円札1枚で買えるモノの数は、10個から5個に減ってしまいます。同じ金額で買えるモノの数が減ったのですから、それだけ1000円の持つ価値が目減りしたことになります。つまり物価上昇=インフレは、お金の価値を減らしてしまうのです。

インフレからお金を守るためにも資産運用は必要

なぜ、資産運用で運用利回りを稼ぐのかというと、インフレによってお金の価値が目減りするのを防ぐためです。

たとえば、物価上昇率が年2%だとしたら、運用利回りは少なくとも年2%は欲しいところです。これでプラスマイナスゼロですから、できれば年3%、あるいは年4%くらいあれば、物価上昇率をカバーしたうえで、資産が増えることになります。

昔はそれが十分に可能でした。なぜなら、預貯金の利率が高かったからです。

たとえば1991年の日本の定期預金利率は年6.08%程度でしたが、この頃の消費者物価指数上昇率は3.3%でした。定期預金に預けておけば、消費者物価指数の上昇率を上回る利息を得ることができました。つまり、インフレによってお金の価値が目減りするのを防ぐことができたのです。

でも、今はどうでしょうか。2023年4月に1年物定期預金に預けると、その利率は年0.014%(日本銀行調べ平均金利)。2023年4月から2024年4月までの1年間で消費者物価指数は2.4%上昇(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)していますから、実質的にお金の価値は2.386%目減りしたことになります。

杉原杏璃『マンガでよくわかる資産運用1年生 億り人杉原杏璃と一緒に』(かんき出版)
杉原杏璃『マンガでよくわかる資産運用1年生 億り人杉原杏璃と一緒に』(かんき出版)

株式をはじめとする投資商品を用いて資産運用する必要性は、ここにあるのです。

預貯金してもお金の価値が目減りしますから、預貯金以上のリターンが期待できる投資商品で運用しなければ、お金の価値がこの先、どんどん目減りしていくことになります。

そのため、私は株式投資や不動産投資のように、高い利回りが期待できる投資商品での運用をおすすめしています。

お給与だけでなく、「収入の柱を増やして、不安を減らし人生を豊かにする」ことを目指しましょう!