※本稿は、西崎彩智『部屋がゴチャゴチャで、毎日ヘトヘトなんですが、二度と散らからない片づけのコツ、教えてください!』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
もうイライラしない! 片づけ術
現在、必要なモノをすぐに見つけられていますか? お財布がない、携帯がない、カギがないなど、部屋の中を行ったり来たりしていませんか?
かつての私がそうでした。出勤前、お出かけ前など、急いでいるときに限って持って行くモノが見つからないんです。こういうことが起こるのは、日々自分が使っているモノや、毎日持って行かなければならないモノの定位置、つまり住所が決まっていないからです。では、モノの定位置を決めるためにはどうすれば良いのでしょうか。そのカギを握るのが「動線」です。動線とは、人が家の中を動くルートのこと。この動線上に定位置をつくると良いのです。
「動線」は2種類ある
家の動線を考えるとき、大事なのは「家事動線」と「生活動線」です。家事動線は、掃除、洗濯、料理などをするときに人が動く通り道のこと。また生活動線とは、家の中で生活する人が家の中を移動する道を指します。家事動線については、普段のご自分の行動を振り返り、歩くルートを点検してみましょう。
大事なのは「家族の生活動線」をチェックすることです。「生活動線」とは、家の中で生活する人が移動するルートのこと。顔を洗う、トイレに行く、食事をとる、帰宅するなど、普段の生活をする際、どのルートを通っていますか? 本来、そのルート上によく使うモノを配置すると、スムーズにモノを取り出せるうえに戻しやすいため、片づけの手間がかからないのです。
簡単にとりかかれるのは、外出先から帰ってきたときの家族の行動をチェックすること。帰宅後から寝るまでの間、家族が何を手に持っているのか、そして、何をどこにどう置くのかを観察してみるのです。
まず、帰宅後、誰が何を持ち帰っているのかを書き出し、そのモノが定位置に置かれているかどうかチェックしていきましょう。
定位置管理がされない「2つの理由」
定位置に置かれていない場合、2つのケースが考えられます。1つ目は、「定位置があるけれど、定位置に置かなかった(置けなかった)ケース」。2つ目は、「そもそも定位置が決まっていなかったケース」。
1 定位置はあるが置いていない→定位置を再検討しよう
1つ目のケースについては、定位置があるにも関わらず、定位置に置かれなかったモノがどこに置かれたのかを確認しましょう。大切なのは、「どうしてそうなってしまったのか」を分析すること。
一番多い理由として考えられるのが、そもそも生活動線の流れに沿った場所に定位置がなかった、ということです。それなら、生活動線に沿って、戻しやすい場所はどこなのかを設定し直せばよいでしょう。他にも、例えば、「収納スペースはあっても、置くモノとサイズが合っていない」、「収納スペースが使う人の使いやすい高さにない」、この2つも定位置が条件に合っていない理由としてよく挙がります。
原因がわかったら、どのように対応したら解決できるのかを解決するまで徹底的に考えることが大切です。それこそ、トライアンドエラーあるのみ!
2 そもそも定位置がない→定位置を決めよう
2つ目のケースも、方法としては同じ。そもそも定位置が決まっていないのですから、生活動線、または家事動線に沿って、戻しやすい場所に定位置を新たに作ればよいということになります。
帰宅後から寝るまでの持ちモノの定位置を決められたら、今度は、朝起きてから、外出するまでの動きもチェックします。
外出に持って行きたいモノに定位置があるかどうか、その場所が定位置に相応しいのかどうかを、一つ一つ検証していきましょう。生活動線に沿って行動できるような仕組みを作ることが、片づけを習慣化するための第一歩になります。
ネクタイはスーツの傍に…は思い込み
ここでは、2つのケースを紹介しながら、定位置の決め方の例をご紹介します。
ケース1 出勤前にはなぜか必ず寝室に戻る夫…
Kさんのお宅では、ご主人が朝、出勤前に寝室でスーツを着て、リビングでくつろいでいるのに、出かける直前に、必ず寝室に戻ってから出勤するということに気づいたそうです。
観察していると、どうやらご主人は、出かける直前に寝室にネクタイを取りに戻って、リビングにある大きな姿見の前でネクタイをつけていたようです。おそらく出かける直前に、その日の気分に合ったネクタイをつけて出て行きたい、ということなんでしょうね。
でも、せっかくリビングでくつろいでいたにもかかわらず、出勤前にバタバタと寝室に戻るのは効率の良い行動とはいえませんよね。では、そのお宅ではどうしたか。リビングの姿見のすぐ近くに、ネクタイを置くスペースを作ったそうです。スーツとネクタイを一緒に置いておかなければならない、というのは思い込みなんですね。
誰のモノなのか、誰が使っているのか。そして、どう使いたいのか。モノの定位置を決めるには、使う人の視点に立って考えることが大切なんです。使う人の不便を解消してあげる、ということが定位置を決める目的であり、結果なのでしょうね。
ケース2 キッチンにごちゃつく小物を放置する夫
Tさんのお宅では、ご主人がご自分の持ちモノをすべてリビングに置くので困っていました。スマホ、小銭入れ、キーケース、携帯……、それらをリビングに隣接するキッチンカウンターにバラバラと置いておくご主人。リビングには生活感をあまり持ち込みたくない、という奥様にはそれが気になって仕方がありません。
でも、ご主人にとって、必要なモノを置きたいのは、キッチンカウンターであり、そこが定位置なわけです。生活動線から見ても、そこに置くのがベスト。そこで、奥様にご提案したのは、ご主人が置いておきたいモノを全てまとめて置けるレザープレートをキッチンカウンターに置いてはどうか、ということでした。
キッチンカウンターにバラバラと置いておくと、確かに見栄えが悪い。だから、そこには置いてほしくない……、奥様はそのように思い込んでいました。でも、見栄えの悪さをフォローできる、素敵なレザープレートを一つ置くことで、奥様の不満は解決できたようです。
なお、全ての場合においてWIN-WINになるわけではありません。家族と生活する上で大切なのは折り合いをつけること。自分の考えを押し付けてもダメですし、家族のやりたいことを全て受け止めようとすると、今度は自分に負荷がかかります。「絶対にこうでないといけない」という思い込みを捨て、妥協点を見つけて、みんなが心地よく過ごせるようにすることが大切なんですね。
使い勝手の良さを優先し、柔軟にモノの位置を決めよう
「家族みんなで使うモノ」はどこに置くが正解か
モノの定位置、つまり住所を決めるためには、家族の生活動線を考え、モノを配置することが大切だということは、先にも述べた通りです。ここまでで、ご自分と家族の持ちモノは大半、定位置が決まっていることでしょう。
あとは、もうひと頑張り。家族みんなで使うものも、やはり生活動線を意識し、何をどこで使うのかを考えて、モノの配置を考えていきましょう。モノの置き場所を考えるときの基本ルールは、「取り出しやすく、戻しやすい」場所です。
暮らしのイメージとモノの置き場所をリンクさせていきましょう。例えば、「週末に家族とのんびり過ごしたい」場合の例を紹介します。のんびり過ごす方法は人それぞれです。仮に、こんなイメージを描いたとします。
・子どもと一緒に、ケーキを作るなど、お菓子作りをしたい
・家族でボードゲームをしたい
ケーキ作りであれば、どのような道具が必要で、どこに置くかが明確です。なお、お子さんと一緒に作るのであれば、それらを高い棚にしまうのではなく、子どもが取り出しやすい場所においたほうがいいですよね。
土曜日の夜に家族でボードゲームをする場合、遊ぶ場所がリビングであれば、その置き場所は、子ども部屋ではなくてリビングにしたほうが取り出しやすく戻しやすいというメリットがあります。
また、週末に夫婦でお酒を飲む方であれば、晩酌セットを買っておき、取り出しやすい場所にセットしておくのも一案でしょう。
あるいは、「月に1回は人を呼べる部屋にしたい」というイメージをもっている方であれば、 ホームパーティーをしやすい部屋にするのもいいですね。例えば、
●来客用のコップ、皿など→ダイニングに置き、可愛いカゴの中に入れておけば、お客さん自身で取り出せる
●ホットプレート→キッチンではなく、ダイニングにしまう
こんなふうに、どんなふうに暮らしたいかを考えることで、モノの置き場所も自然と決まっていきます。