株式投資で利益を上げるためには何が必要か。著書『87歳、現役トレーダーシゲルさんの教え』が話題の藤本茂さんは「投資の世界は『仕事ができるか』とは、また別の世界。もちろん、株に向いている人、向いていない人というのはいる。頭はいいほうが呑み込みは早い。ただそれ以上に重要なのが、最初は負けたとしても、『よし、勉強するチャンスをもらった』と思って『なにクソ!』と奮起できるかどうかだ」という――。

※本稿は、藤本茂『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

株価チャート
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アナリストを信じない理由

かつて証券会社の店頭で株を売買していたときには、顔なじみの投資家もいましたが、ネット取引になってからは頻繁に会う投資家仲間というのは、ほとんどいなくなりました。いま、誰かの情報を参考にするということはありません。

藤本茂『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)
藤本茂『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)

日経CNBCに出てくるキャスターやアナリストも随分もっともらしいことを言いますが、もし彼らの言うことが全部当たるなら、いまごろ彼らは大儲けしていますよ。

それができないからキャスターやアナリストをやっているわけです。なので、個人的には信じていません。

「たまにはいいことも言うじゃないか」と思うことがあるくらいです。

結局、信じられるのは自分だけです。証券会社の人間の言葉を信じて、そのとおりに買ったとしても、自分の何が成長するんでしょうか。

そんなビギナーズラックで儲けて、そこで株をやめるならまだしも、そういう人は自分の頭を使わない株の売買を繰り返し、いずれ大きく失敗するはずです。

空売りで失敗した日には、目も当てられません。

楽して儲けたい人は株をやらないほうがいい

「株で楽して儲けたい」と考える人は多いと思います。でも、私に言わせると、そう考えている人は株に手を出さないほうがいいです。ましてやデイトレードにはね。

自分の頭を使うことができないのであれば、普通にどこかで雇われて働くほうがいいと思いますね。たいして頭を使わなくたって、毎月決まった給料をもらえるわけですから。

株は決してラクなものじゃないですよ。どれだけ勉強を重ねても、勝ち続けられるものではありません。私だっていまも読み間違えることはいくらでもあります。

70年近い経験があったって、「予想だにしない方向に値が動く」ことが普通です。

スペインには、「ソル・イ・ソンブラ」という言葉があります。意味としては「光と影」です。スペインの闘牛場では、日なた席と日陰席がちょうど半分に分かれていて、それが生と死、光と影を意味するそうです。

株も同じなんですよ。本気でやっていれば、必ず光と影が出てくる。光が濃いほど、同じだけ影も濃くなるんです。

投資で得た利益は“不労所得”ではない

私が2002年にネット取引を始めてからしばらくたったころ、MBS(毎日放送)の関西ローカル「ちちんぷいぷい」という、いまはもう放送していない情報番組に出させてもらったことがあります。

2002年、初めてパソコンを購入しネット取引を始めたシゲルさん
写真=川瀬典子
2002年、初めてパソコンを購入しネット取引を始めたシゲルさん

そのとき、ゲスト出演していた考古学者の先生から、「そんな不労所得で儲けようとせずに、ちゃんと働きなさい」と言われてしまいました。いまでも日本人は、株に「ギャンブル同然」「危ないもの」「楽して儲けられるもの」という先入観を抱いている人が多いですが、当時はなおさらでしたからね。

でも「不労所得」なんてとんでもない。収入に見合うだけの働きはしているつもりです。頭がいいからといってラクに儲けられるわけではありません。日本でいえば孫正義さんや村上世彰さんは、頭の良さでいえば別格だと思いますが、彼らだって間違うことはある。

東大を出てようが米国の大学を出てようが、そんなことは関係ないんです。

株を始めたばかりのころには、たまたま勝って小金を手にすることもあるでしょう。

株で勝つために必要な“頭の良さ”より重要な要素

株は「上がるか、下がるか」なわけですから、要は丁半ばくちという側面があることは確かです。何も勉強しない状態であっても、勝つこともあります。

ただし、最初から勝ってばかりなのもよくないと思いますね。なまじ勝ってしまって、そのまま調子に乗って大金を投じてしまい、財産を失ってしまう人はたくさんいます。

ただ、株の勉強を怠らなければ、頭のいい人たちにも勝てる大きなチャンスに恵まれます。たとえ、その人たちと同じ会社に入ったとしても、出世のスピードでは大きく差をつけられるかもしれない。

けれど、投資の世界は「仕事ができるか」とは、また別の世界です。

もちろん、株に向いている人、向いていない人というのはいます。頭はいいほうがみ込みは早いでしょう。

ただそれ以上に重要なのが、最初は負けたとしても、「よし、勉強するチャンスをもらった」と思って「なにクソ!」と奮起できるかです。

奮起できる人は、あとにつながります。株は自分が買ったら下がり、売ったら上がることがよくあります。そういうものなんです。

そんな世界で勝負しようと思っているわけですから、「失敗してナンボ」ですよ。失敗の過程も、道が開けるまでのチャンスだと思ってぜひ楽しんでください。

いまは昔と違って、ずいぶんと株の取引が簡単な環境になりました。

70年近く株の世界で生きてきて、最高の時代だと思います。この本を読んでくれた方も、興味があるなら、まずは始めてみたらいかがでしょうか。

まずはやってみる。いくらか損したとしても、そこから学びを得て、自分なりのやり方を確立させていく。この本では私のやり方をお教えしましたが、もっとインターネットを駆使するなど、やり方は人の数だけあります。

先輩投資家ウォーレン・バフェットとの共通点

本書『87歳、現役トレーダーシゲルさんの教え』でも何回か、「投資の神様」ことウォーレン・バフェットについて触れています。バフェットと私を比べるのはおこがましいですが、私とはいくつか共通点があると思っています。

1つは年をとっていること(笑)。バフェットは1930年生まれ。私より6歳年上です。そんなバフェットが現役なのですから、私が年齢を言い訳にしていいわけはありません。

世界的投資家ウォーレンバフェットはシゲルさんより6歳年上
世界的投資家ウォーレンバフェットはシゲルさんより6歳年上(写真=Mark Hirschey/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

投資スタイルとしても、「事業の内容を理解できる」「長期的に業績が良いことが予想される」「割安である」といった企業の銘柄を買うのは同じです。

結局、長い間株式市場から退場することのない投資家というのは、ある程度自分のスタイルはありつつも、似たような投資スタイルになっていくのではないかと思います。

あとは、お金は副産物だと思っていること。無駄なお金を使わないこと。そして、自分にウソをつかずに生きていること。

2023年4月、彼はインタビューにこう答えています。

「『好きなものを食べるのではなく、一生ブロッコリーとほかにいくつかのものだけを食べれば余命が1年延びる』と誰かに言われたら、私は『1年余分に生きなくていいから、自分の食べたいものを食べさせてくれ』と言うだろう。

幸せであることは、寿命に大きな違いをもたらすと思う。私はホットドッグやホットファッジサンデーを食べたり、コーラを飲んだりしているときに幸せを感じる」

私自身も「もう引退したら」「身体のことを考えたら」と言われることもありますが、大きなお世話としか思いません。

私はいまこの生活を楽しんでいます。健康だけを気にして好きなこともできずに窮屈に生きるより、好きなことをやって楽しんで生きるほうが絶対にいい人生だと思います。

人をうらやむより自分の頭と身体を動かしたほうがいい

もちろん、バフェットとの違いもたくさんあります。まず、生まれたときの環境の違いも大きいですよね。こっちは貧乏農家、かたやバフェットは父親が証券会社を営み、下院議員にも当選しているような裕福な家庭です。

株は元手がものをいいますから、そういう意味では非常にうらやましいです。バフェットくらいの元手があれば、いまごろどれだけ資産を伸ばせたことか。

けれど、それをうらやんだって何にもなりません。うらやむことにエネルギーを使うよりも、自分の頭や身体を動かしたほうがいい。自分の力で人生は切り開けるわけです。

いい会社の株を買う、株取引を楽しむ、人生を楽しむ

投資手法も違いがあります。私はデイトレードが中心ですが、バフェットは長期投資を基本としています。また、私はデイトレードで常時80銘柄ほど、長期保有で20銘柄ほど保有していますが、バフェットは基本的に優れた企業を買収、あるいは株式を大量に取得する集中的な投資を行います。

けれど、この違いは投資や人生の本質からすれば、些末さまつな違いだと思います。

いい会社の株を買う。株取引を楽しむ。人生を楽しむ。やっぱり、それに尽きると思います。

こんな私の姿を見て、よく「自分には無理だ」「あなただからできるんでしょう」という人もいます。けれど、私とあなたの一体何が違うんでしょうか。

私だって震災や大病を経験したり、バブルで財産を大きく減らしたりと散々な目にも遭っています。

やらない理由を挙げるのは簡単です。でも、私に言わせれば、本当にやりたいのであればやらない理由はどこにもありません。

バフェットは77歳のとき、資産を100億ドル増やしました。そんなことを聞くと、「自分もがんばらなあかん」と思います。読者のみなさんも、「あの人ががんばっているなら自分も」という存在を見つけてみると、人生に張りがでるかもしれません。なんなら「87歳の藤本茂というじいさんにできるなら、自分にだってできるはず」と思ってもらえたら嬉しいですね。

あなたの人生を、私は応援していますよ。

資産の多寡そのものにはこだわっていない

本書には、「この株でいくら儲けた」「この株でいくら勝った」という、株式投資の本でよくある話がほとんど出てきません。

正直なところ、覚えていないんです。最初に買った株は70年近くも前の話になりますからしょうがないにしても、ちょっと前の話でも覚えていません。

2002年以降であれば、ノートでいくら勝っていくら負けたかはわかりますが、それを振り返ることに意味を見出すことはできません。

デイトレードを繰り返し、勝てば資産は増えるし、負ければ減る。それだけのことです。

結果として資産が増えたり、減ったりするだけであり、資産の多寡そのものにはあまりこだわっていないんです。それに、取引を終えてしまえば、それはもう過去の話。

次の取引につなげる必要はあるにせよ、深くこだわることはありません。

配当利回りで悠々自適な人生を送っても楽しくない

人によっては、「87歳で資産を18億円も持っているなら、配当金だけで暮らしているのでは?」と思う人もいるかもしれません。

私は配当金を重視して投資しているわけではないので、平均すると2%にも満たない配当利回りですが、高配当株に替え、配当利回りを3%程度にアップするだけで、年間の配当収入は5100万円になる計算です。

これだけの収入があれば、贅沢をしても、十分に暮らしていけるでしょう。

しかし、そもそも私が株をやっているのは、お金のためというよりも、楽しいから。

資産があるといっても、そのお金はほとんどを投資に回すので、実際に現金で持っているわけでもありません。

なので、資産が1億円であろうが100億円であろうが、生活水準もスタイルも変わらないんです。

お金のためだけであれば、デイトレードなどせず、高配当の株を買って、悠々自適の配当生活を送っているでしょう。

でも、そんな生活を送っても、私は楽しいとは思えないんです。この年になってもリスクを負ってデイトレードをすることが楽しいんですね。

今はまだ二分咲き

金額からしたって18億円なんてかわいいものです。バフェットは14兆円ですから、桁違い。なので私は「これで十分だ」ともまったく思いません。あと5倍は、ほしいですよ。いまの状態はまだまだ“二分咲き”程度のものです。

あと4、5億円稼いでようやく五分咲きといったところではないでしょうか。とりあえずあと数年でもう4、5億円稼ぐことがいまの目標であり、決して不可能な数字ではないと考えています。

そこに年齢は関係ないですよ。もちろん、年をとったからできなくなったことはあります。いまの私が肉体労働で資産を増やすのは難しいでしょう。でも、頭を使うことは、いくつになっても可能です。

多少記憶力が衰えたとしても、取引を重ねるたびに経験値は増えていき、その経験値は間違いなく血肉となります。どれだけ頭で考えていても、実際の動きは異なります。やってみないことには話になりません。

株を引退するのは死ぬとき

私は高卒で大学を出ていませんが、どれだけ若く賢い人であっても、私にかなう人はそうはいません。バフェットは、私の6歳年上ですが、さすがに毎日デイトレードをしているわけでもないでしょう。

「もう引退してもいいんじゃないか」と思われる人もいるかもしれませんが、私が株をやっているのは、何度も言うように純粋に株式投資が楽しいからです。

頭を使うので、結果的に認知症予防にもなっていると思います。楽しくて、認知症防止にもなって、お金もついてくる。こんな最高の話はないと思いませんか。

私が株を引退するのは、死ぬときだと決めています。私は“生涯現役”の投資家なのです。

なお、最後に言っておきますが、最終的な投資判断は自己責任でなさるようにお願いします。