株主優待に逆風。廃止や改悪などが相次ぐ
自社商品や買物券、お食事券などがもらえる株主優待銘柄は、個人投資家に根強い人気を誇ります。
しかし、突然の優待廃止や改悪も少なくなく、その場合には、大きなショックと、株価暴落による損失のWパンチを受けることになります。
とくに近年では、そんな優待廃止・改悪の傾向が強まっています。
そんな中、私の保有する優待銘柄も、ここ最近、次々と優待廃止・改悪となり、あらためて、株主優待投資についていろいろと考える機会となりました。
そして、そんな優待逆風の中でも、いや、逆風の中だからこそ、自信をもって持ち続けたい優待銘柄があることに気付きました。
そこで今回は、優待銘柄の「矛と盾」と言ってもよい、大本命の2銘柄を紹介したいと思います。
優待廃止銘柄は株価も下落する可能性大
昨年8月、「いきなり!ステーキ」で一世を風靡したペッパーフードサービスが株主優待(年間2000円分の優待券)を廃止しました。
この突然の廃止は、店舗名をもじって「いきなり!優待廃止」とも揶揄され、格好のネタにもされました。
そして今年2月には、「香の川製麺」を運営するフレンドリーが優待(年間2000円分の優待券)を廃止。
こちらは昨年3月に優待を復活させたばかりだっただけに、「1回で終わりかよ」と、多くの投資家を失望させました。
※当記事においては、各社の優待内容は100株保有の場合。
私自身、いずれも楽しみに保有していた銘柄だったので、残念でした。
そして、いずれも優待廃止発表直後に株価は暴落し、その後も低迷、現在、株価は廃止前の半額にまで落ち込んでいます。
ただ、両社とも業績・財務状態は厳しく、不安定な経営状態ゆえに、ある程度は、優待廃止の覚悟はしておりました。
それよりも大きなショックだったのは、同じ外食優待でも、「吉野家」や「すかいらーく」の優待改悪でした。
人気の優待銘柄、吉野家、すかいらーくも改悪
牛丼でおなじみの「吉野家」、大手外食チェーン「すかいらーく」も、有名な優待銘柄です。
かつては、いずれも年間6000円分の優待券・カードと優待額は大きく(優待利回りも高く)、絶大な人気を誇っていました。
また、同じ外食企業でも、前述のペッパーフードサービスやフレンドリーと比べ、企業としての知名度・規模・体力は雲泥の差で、その安定感の違いは歴然です。長年続いている株主優待の実績も申し分なく、(私も含め)多くの投資家は、安心して保有していました。
それが、吉野家は2021年10月、すかいらーくは2020年9月に優待変更を発表し、いずれも年間4000円に減額(改悪)となったのでした。
優待廃止でないだけマシとはいえ、これは大きなショックだったわけです。
このように、優待銘柄として安定の人気・実績を誇る大手企業であっても改悪するくらいに、今、株主優待には逆風が吹いているのです。
企業が株主優待を廃止、改悪する理由とは
昨今、「株主間の不公平解消」「配当金への注力」などといった理由から、株主優待の廃止・改悪が相次いでいることは、以前の記事でも書いたとおりです。
実際、私の保有する優待銘柄も、ここまで挙げたペッパーフードサービス、フレンドリー、吉野家、すかいらーく以外にも、次々と廃止・改悪となっております。
たとえば、オリックスの優待廃止(2024年3月末で廃止予定)。
これは超人気優待だっただけに、優待投資家の間でも大きな衝撃が走りました。
3年以上継続保有でグレードアップする「カタログギフト」優待だったのですが、私はようやくグレードアップした矢先だったので、それも含めて非常にショックでした。
また、東京個別指導学院の優待(図書カード等から選択)は、優待利回りが高く、非常にお得だったのですが、こちらも今年から廃止となりました。
その優待廃止によるショックと損失もさることながら、その親会社であるベネッセホールディングスも保有しているので、そちらの優待は大丈夫なのか……と心配は尽きません。
優待逆風のいまこそ持つべき2銘柄
正直言って、これまでは優待廃止・改悪にもどこかのんびり構えていた私でしたが、ここ最近の、あまりにも度重なる保有銘柄の優待廃止・改悪に、「これは真剣に考えないと、ヤバいぞ」と危機感を持たざるを得ません。
また、FPとして、これまでさまざまな優待銘柄を(わりと軽々しく)紹介していたのですが、それについても、それは本当に勧められる銘柄なのかと、考え直すようになりました。
すなわちFPとして、そして優待投資家として、あらためて、株主優待の意義についてなど、いろいろと考えるのでした。
そしてたどり着いたのが、大手総合スーパーのイオンと、大手百貨店の高島屋の2銘柄。
優待逆風の中でも、いや、逆風の中だからこそ、今、持つべき優待銘柄の大本命として、自信をもって紹介できる、数少ない銘柄でもあります。
もちろん、私自身、この2銘柄については、自信をもって持ち続けています。
イオンと高島屋、株主優待の共通点とは
イオンの優待は、オーナーズカード。
半年ごとに、イオンでの買上金額(上限100万円)の3%キャッシュバックを受けることができ、これは毎月20日・30日のお客様感謝デー(5%割引)とも併用できます。
普段からイオンで食料・日用品等を買っている私は、この優待には、かなりお世話になっています。
半年ごとのキャッシュバックは1万円を優に超えることもあり、イオンのサービスカウンターにて手渡しで受け取る現金は、密かな楽しみとなっています。
高島屋の優待は、株主様ご優待カード。
会計時のカード提示で、高島屋での買物(半年ごとに上限30万円)が10%引きとなります。
高級品を買うことなどめったにないですが、デパ地下で総菜やスイーツはちょくちょく買っており、また、書籍も10%引きとなるので、本を買うことが多い私は、積み重ねれば、高島屋では、けっこうな額を使っています。
結果、多い時だと、月に3万円程度は使っているので、年間で2万~3万円もの割引を受けている計算です。
そんなイオンと高島屋の優待ですが、その共通点は、いずれも「割引優待(※)」であることです。
※キャッシュバックも割引の一種と解釈
優待で買物券や食事券を配る企業の株価は危うい
ところで、株式投資とは、その企業を「応援」することでもあります。
そして、株主優待とは、そんな応援してくれた人の気持ちに応える、企業の心意気のようなもの。
ちょっと青臭い表現ですが、企業と株主、そんなお互いの信頼で成り立つような関係こそ、一つの理想と言えるでしょう。
しかし、その株主優待が、買物券や食事券のような、いわゆるタダ券の類の場合、応援というよりも、「タダでお得だから」「うまく利用してやろう」と、優待目的のみの株主が一定数いることも事実です。
それも一つの楽しみ方ですから、それが悪いこととは言いませんし、私自身、保有銘柄によっては、優待目的のみだったりもします。
ただ、そのような(企業自体に関心はなく、優待目的のみの)株主が多いと、株価は脆いものです。
また、そのような(一見、魅力的なタダ券の類の)優待は企業の負担が大きく、廃止・改悪のリスクも大きいのです。
株主にも企業にもメリットのある理想的な優待
その点、割引優待であれば、その優待を活用するには、お金を出して商品を買うこと(飲食をすること)になるので、企業の売り上げにしっかり貢献します。
つまり、「買って応援」ですね。
しかも、割引優待の効果で、株主は「多くのもの」「高いもの」を買ってくれる可能性も高く、それは企業にとっては大きなプラスです。
当然、割引優待をたくさん活用するほど、その割引額も大きくなり、株主もうれしいわけです。
これこそ、株主優待を通じた、企業と株主との、一つの理想の関係ではないでしょうか。
そして、そのような割引優待であれば、(企業にとって大きなメリットがあることから)廃止・改悪リスクも少なく、安心して持てるはずです。
一般には、(いくらかは出費が伴う)割引優待は不人気ですが、実は、大いに注目すべきなのです。
イオンは「守り」、高島屋は「攻め」の投資
そんな割引優待ですが、もちろん、イオンや高島屋以外にも実施している企業はたくさんあります。
ただ、安心して持ち続けるには、株主優待だけでなく、その企業の将来性も大きなポイントなわけで、とくにこの2銘柄を選んだのは、その将来性もしっかり評価してのことです。
イオンは、国内首位級の大手総合スーパー。
景気の良しあしに関係なく、一定量の食料・日用品等は買わないと生きていけないので、スーパーはわれわれの暮らしに欠かせません。なので、全国展開するイオンは、もはや生活インフラといっても過言ではなく、いわゆる、景気に左右されない手堅いディフェンシブ銘柄としても有名です。
その意味では、「守り」の銘柄とも言えるでしょう。
それに対し、大手百貨店である高島屋は、「攻め」の銘柄と言えます。
なぜなら、高級品を多く扱う百貨店は、基本的には、景気が良くなれば売り上げは上がり、業績も向上するからです。また、コロナも落ち着き、インバウンド消費再来の兆しの中、その恩恵を大いに受ける銘柄でもあります。
株主優待を得つつ、しっかり守って攻める2銘柄、すなわちイオンと高島屋は、優待銘柄の「矛と盾」とも言えるでしょう。
優待のフル活用で投資資金は5年で回収できる
ちなみに現在の株価(100株単位)は、イオンは約28万円、高島屋は約20万円。
これは、割引優待をフル活用すれば(上限いっぱいまで買物をすれば)、イオンは5年、高島屋は3年程度で、元が取れてしまう計算なのです。
また、いずれの優待も、買物の割引だけではありません。
イオンでは、イオンイーハート(飲食店運営)やイオンシネマやなどで割引金額・優待料金となる特典もあり、高島屋では、高島屋各店で開催される有料催事(美術展など)に3名まで無料で入場できるという特典もあります。
そして、いずれも優待だけでなく、配当金もあります(イオンは年間3600円、高島屋は年間2800円/いずれも24年2月期予想)。
イオンや高島屋を普段からよく利用している人であれば、株主にならない理由はないのでは、と思うほどに、おススメしています。