※本稿は、佐藤智『SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること』(ディスカバー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
テスト結果について子どもから「言い訳」が出たらどう応じるか
子どもにとって小さい成功体験はとても重要です。スモールステップで、「これができたじゃん! じゃあ、次に進んでみよう」という一段一段の階段を上がっていく過程(プロセス)が学びへのモチベーションになります。
つまり、勉強で大事なことは「過程」。
結果だけをみて追い立てるようなことは絶対にNGです。
テスト結果で大事なことは、できたこととできなかったことを確認して、そこから学力を伸ばしていくためには何が必要かを一緒に見直していくことです。
間違えた部分に関しては、転記ミスがあったのかもしれませんし、計算ミスをしてしまったのかもしれません。できなかった理由は子どもなりにたくさんもっています。
間違えてしまった原因を聞き取って、見直しにつなげましょう。
逆に、こうした言い訳に聞く耳をもたず、点数だけで一刀両断してしまっては、子どもは何も話さなくなりますし、前向きさも失われてしまいます。
過程を認めてあげるうえで大事なことは、子どもの話を聞いて「共感する」ことです。
計算ミスをしていた場合、「惜しかったね。どこを間違えていたのか一緒に考えてみようか?」と声をかけます。
子どもが「計算ミスをした」と言っていても、どこでミスをしていたのか正確には気づいていない場合が少なくありません。親が寄り添っていくことで、改めて筆算をして、ミスに気がつくことができます。
また、字が汚くて筆算の縦の列がきちんと並んでいないから、違う桁の数字を足してしまって、うっかり間違えることもよくあります。その場合は、「大きくきれいに数字を書くことが大事なんだ」と学びます。
結果重視の接し方が招く残念な結末
重要なことは自分で確認をして、今後ミスをしないように注意すること。子どももミスをしたくてしているわけではありません。どうすれば改善するのかを考えさせていく体験を大事にしましょう。
残念ながらSAPIX小学部でも、「結果だけよくしよう」とする子に遭遇することがあります。子どもたちに悪気があるわけではなく、保護者の価値観が投影されているのだろうと感じます。
こうした「結果偏重」になると、「点数さえ取ればいい」と考えて、カンニングなどの問題行動につながるケースもあります。子どもの倫理感がゆがんでしまう前に、早急に家庭での接し方を見直すことが大切です。
勉強を教えたあとの「ひと言」が重要
家庭学習をしているなかで、お父さんお母さんが子どもに問題の解き方を教えることがあるでしょう。何回も教えていることだったり、ほかにもやらなければいけない家事があったりすると、つい「これでわかったよね?」と念押しして話を終わらせてしまうことがあるかもしれません。
少しでも親の言葉から「圧」を感じると、子どもは「うん」としか返事ができなくなります。「わかったよね?」に対して「わからない」と言ったら、「なんでわからないの!?」と返されるのが目にみえているからです。
「わかったよね?」という保護者からの言葉は、保護者にそのつもりがなかったとしても、コミュニケーションを切ることにつながります。本当はわかっていないことも、子どもは「わかった」としか言えない雰囲気になってしまうのですから。
大事なことは、どうやったら「わからない」が言える雰囲気をつくれるかということです。
「わかったよね?」ではなく、たとえば「じゃあ、説明できるようになったかな?」とうながしてみると、子どもが本当に理解できているかがみえてきます。
「わからなかったら、また聞いてね」でもいいですね。100%の理解ができていなかったとしても、また聞ける環境さえ整っていれば、子どもは再度確認してきます。
ときには、「おおまかにわかっていればOK」といったスタンスで接していくことも必要だと思っておきましょう。
忘れること前提で何度も繰り返せばOK
子どもは忘れる生き物です。びっくりするくらい忘れます。
そして大人になると、こんなにも子どもの頃に忘れていたこと自体を忘れてしまうんですよね。だから、親としては「昨日言ったばかりでしょう!」「もう何回も言っているじゃないの!」とイライラしてしまいます。
でも、「子どもは忘れる生き物なのだ」と思っていれば、少しだけ気持ちがラクになりませんか?
どんどん忘れていくことを念頭に置いて、根気よく、繰り返し学んでいくことが大切です。SAPIXのカリキュラムも子どもが忘れることを前提としてつくられています。だから、何回も何回も何回も同じ内容がでてきます。
覚えておいてほしい漢字や知識について、「絶対に忘れないようにね」と子どもに念押ししてもあまり意味がないでしょう。
それよりも、忘れていたら「また覚えよう」と前向きな声をかけていきましょう。忘れたことに一喜一憂するよりも、次は覚えていられるように、もう1回丁寧に繰り返していく。これが大事なポイントです。
イライラしないもう一つの方法として、お父さんお母さんが何かまったく新しい学びをスタートしてみるのもいいかもしれません。案外、1週間前に習ったことも覚えていないものです。
リアルタイムに自分が忘れてしまうような体験をしていれば、「なかなか覚えていられないものだよね」とおおらかな気持ちになれるかもしれません。
ノートを取ることは頭の整理に役立つ
授業中に板書や先生の話をノートに取ることは、「思考を整理して書く」というアウトプットの基本トレーニングになります。
しかし、時間もかかるし面倒くさいので「書くこと」を嫌う子どもは多いです。人間はどうしてもラクな方向に流れていくものだから、仕方ないのかもしれません。
授業時間の節約のために最近では、学校や塾でも穴埋めプリントで板書の代用をすることも多いようです。
ただ、メモを取らない子は、その場ではわかったつもりでも、結局記憶に残っていないケースがほとんどです。
ノートは頭が整理されていないと上手に取ることができません。ノートを取るのに時間がかかる子の多くは、その内容を理解しておらず、一字ずつ書き写しています。
つまり、うまくノートを取ることと内容の理解度はリンクしていることがほとんどです。
どんどん伸びる子のノート
ただ機械的に写し取るだけではなくて、理解できていることなら一部を省略して書いてもいいでしょうし、逆に先生が「ここは書かなくてもいいよ」と言ったことでも、「大事だな」「おもしろいから書いておこう」とノートを取れる子はどんどん伸びていきます。
「書くこと」でアウトプットする方法は、文字情報だけとは限りません。理科では植物や昆虫を観察した絵を描かせることがあります。見たものすべてをノートに写し切ることはできませんから、「どこに特徴があるのか」「何を注視すべきなのか」をつかんだうえで抽象化して描いていく力をつけるのが、この理科の観察の目的です。
パソコンやタブレットなどを使った学習も広がっていますし、「書く」以外の学びの選択肢は増えています。
それらももちろん効果的ではありますが、「書くこと」を疎かにするとアウトプット能力が磨かれないという懸念もあります。今も昔も板書をノートに取ることは、子どもたちにとって大切な学びなのです。