株価が10倍、100倍になる銘柄を見つけるにはどうすればいいのか。複眼経済塾塾長の渡部清二さんは「世の中で起きている現象が一時的ブームで終わるものなのか、長期トレンドになるものかを見極める必要があります」という――。

※本稿は、渡部清二『会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍・100倍になる! 超優良株ベスト30』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

沖縄の屋根のシーサー
写真=iStock.com/linegold
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中長期ニーズに着目した「オカムラ」「ピアズ」

コロナ禍でさまざまなものが変化しましたが、その中には短期的なブームで終わったものと長期トレンドになったものがあります。

短期的なブームの代表と言えばマスクです。コロナが流行り始め、マスク需要が高まって品不足になった2020年1~3月に大相場が来たものの、やがて品不足も解消されて株価としては単なるブームで終わってしまいました。

一方、コロナ禍において中長期的なニーズが発生しそうな領域に目をつけた企業もいくつかあったことは事実です。

オカムラ(7994)
<会社プロフィール>
【特色】オフィス家具首位級、コクヨと双璧
【連続増配】オフィス家具は働き方改革に伴うレイアウト変更が追い風
【冷ケース】オフィス家具は固定席減少に伴う新レイアウトに合わせ商品展開を強化

ピアズ(7066)
<会社プロフィール>
【特色】店舗運営コンサルから、オンライン接客サービス、個室型オフィスサービス事業強化に軸足移す
【上向く】個室型オフィスが増収牽引
【強化】個室型オフィスは法人に加え自治体への導入強化

※『会社四季報』2022年4集秋号より

雑音の入らない、1人きりになれる静かな環境に着目した企業

コロナ禍の前まで私たちには、「ビジネス=対面で行うもの」と思い込んでいました。ところが感染予防のために家から出てはいけない、人に会ってはいけない、という状況になり、オンラインに切り替えてみたところ、必ずしも対面する必要がなかったという事実に直面します。

現場仕事でない限り、ネット環境さえ整っていれば、会社以外の場所でも仕事ができることがわかったわけですが、そこで初めて必要なものに気づきました。それは「外部の雑音の入らない、1人きりになれる静かな環境」です。

ここに目をつけたのがオフィス家具首位のオカムラ(7994)と、ピアズ(7066)です。ともに個室ブースを売り出して業績を伸ばしています。ただ、これが長期トレンドになるかどうかはまだわかりません。

アフターコロナに注目の「サンエー」

もう1つ、将来的に面白いと言える企業をご紹介しましょう。

サンエー(2659)
<会社プロフィール>
【特色】沖縄流通最大手。スーパー軸に外食等展開
【上向く】コロナ対応の店舗休業なく、既存店売上が前年上回る。外出機会増え、好採算の衣料品と外食回復
【省人化】フルセルフレジを試験導入。6月開店の宮古島の店舗で離島初のネットスーパー開始

※『会社四季報』2022年4集秋号より

47都道府県では唯一人口が増加した「沖縄県」に期待

1950年に個人商店として開業し、沖縄の本土復帰前の1970年に那覇市で設立されました。現在の本社は宜野湾市です。スーパーマーケットの他、ローソンと合弁で県内のコンビニ拡充をはかっています。また外食やホテル経営も行う他、家電販売やドラッグストアをフランチャイズ展開しています。

1つ言えることは、コロナ禍によって人々の意識が変わったのだけは間違いありません。特に住む場所の意識は大きく変わっていて、地方に移住する人も増えてきました。実際に2022年8月9日、総務省が公表した1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査で1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)の人口が、1975年の調査開始以来、初めて減少したのです。これは大きな構造転換です。

この調査でもう1つ面白いのが、47都道府県では唯一人口が増加したのが「沖縄県」でした。とすると、四季報【特色】欄に「沖縄流通最大手」と書かれるサンエー(2659)は将来的にも面白いのかもしれません。

タピオカはなぜ短期的なブームで終わってしまったのか

ここで、ブームとトレンドの違いについて少し触れてみることにします。

ブームというのは一過性の流行で、定着することなく去っていくものです。先ほどマスクの例を挙げましたが、それ以上にわかりやすいのがタピオカなのではないでしょうか。

タピオカミルクティーを飲む女性
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人は「○○が流行っている」と聞くと飛びつきたくなるものです。まだ数が少なかったタピオカの店に大勢の人が押しかけました。

タピオカは原価率が低く、利幅が大きい商品です。これで一儲けしようと企んだ人たちが多数出店しました。

でも、実はそのときはもう終わりに近かったのです。案の定、多くの店ができた段階で人々は飽きてしまい、見向きもしなくなりました。

ブームが短時間のうちに過ぎ去ってしまうものであるのに対し、トレンドは長期間にわたって私たちの生活に浸透してくるものです。

多くの人の生活を根本的に変えるものは長期トレンドになる

その違いを私は「多くの人の生活を根本的に変えるかどうか」にかかっていると見ています。タピオカは嗜好しこう品です。好きな人はブームが去っても飲みたいと思うかも知れませんが、おそらく大多数の人にとっては「なくても困らないもの」だと思うのです。

一方、私たちの生活に溶け込み、必要不可欠なものとなったのはどのようなものでしょう。まずは、昭和30年代に登場して「三種の神器」と呼ばれた冷蔵庫・洗濯機・テレビです。冷蔵庫や洗濯機のない生活は、まず考えられません。

特に、洗濯は重労働です。職業の歴史の中でも、洗濯を職業としていた女性(現代でいうクリーニング店に近い専門職種)は、一番早くに確立されたのだとか。昭和30年代に家事を担っていた専業主婦の方々にとって、洗濯労働から解放されたことの意味は、今の私たちには想像もつかないほど大きなものだったことでしょう。

冷蔵庫やテレビが長期トレンドになった理由

冷蔵庫も同様です。冷蔵庫のない時代は食品を衛生的に保存することが難しく、必然的に毎日食料品の買い出しに行かざるを得ませんでした。人は食べなければ生きていくことができません。ただでさえ今よりも家族の数が多かった時代、家族を飢えさせないように日々の食糧を確保することには、大変な労力が求められたに違いありません。

渡部清二『会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍・100倍になる! 超優良株ベスト30』(SBクリエイティブ)
渡部清二『会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍・100倍になる! 超優良株ベスト30』(SBクリエイティブ)

最近はテレビを持たない人やあっても見ない人も増えてきていますが、長い間、多くの人にとって手近で安価な娯楽であり続けました。

こうして「三種の神器」は一過性のブームではなく、人々の生活を便利にしたことから長期トレンドとなり、消費を押し上げ、それに関連する銘柄が成長していったのです。

最近ではインターネットがそれに該当します。

インターネットの黎明れいめい期、拒絶反応を示す人は少なくありませんでした。ある人から、1990年代に書かれたある小説を読んでいたら、20代の女性主人公が「友人のY子は『自分は死ぬまでインターネットはしない』と言っている」と語る場面が出てきてびっくりした、と聞いたことがあります。また、ご高齢の方の中にはウェブやインターネットを「怖いもの」と思い込んでいる方も多かったように思います。

長期トレンドとなりえる潜在テーマを見つけて関連銘柄を仕込む

今の時代にこのようなことを言う人はあまり見かけません。

しかしこの例に見られるように、当時はインターネットがここまで私たちの生活に浸透し、必要不可欠なものになると認識していない人も多かったのです。

今も昔も、長期間にわたって私たちの生活を便利にしてくれるものが長期トレンドとなり、経済を動かす要因の1つになっていくことは間違いありません。

みなさんもぜひ長期トレンドとなりえる潜在テーマを見つけて、関連銘柄を仕込んでおいてください。