※本稿は、しかまのりこ『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)の一部を再編集したものです。
部屋が片付かない人が使っている収納家具の特徴
人が過ごす場所には、衣類やカバン・趣味の物など多くの物が集まっています。とくにリビング・ダイニングは家族全員が集まる場所ですから、寝室や子供部屋以上に物があふれ、散らかりやすくなります。その一方で、部屋が狭いと、これらの多くの物の収納場所も当然少なくなります。そのため、部屋が狭いというお悩みを抱える方の多くは、部屋が片付かないというお悩みも同時に抱えています。
実際ご相談にいらっしゃる方のリビング・ダイニングには、家族のコートや帽子、カバンや勉強道具、漫画や雑誌・雑貨やお菓子などといった多くのものが散らかっています。部屋が片付かないというお悩みを持つご相談者の部屋を拝見してみると、収納家具に関してある共通点があります。それはカラーボックスなど奥行の少ない収納家具を部屋に多く並べているということです。
カラーボックスは安価で容易にインターネットや量販店で購入できるというメリットがあります。しかし奥行が29センチ程度しかなく、収納できる物が限定されます。そのため、想像していたほど物が収納できないということになりがちです。奥行の少ない収納家具をいくら部屋に置いても、収納量が限られるため、部屋は片付かないのです。では、どのような収納家具を選べば、部屋が片付きやすくなるのでしょうか。
収納家具は奥行きで決める
家具選びでとくに重要なのは収納家具の奥行です。奥行が30センチ程度の収納家具は、単行本や漫画、学習用品などは収納できますが、少し大きめの雑誌や雑貨、おもちゃや小物などをまとめるかごや整理箱などは、小さいものしか収納できません。そのため、リビングであれば奥行が40センチ以上の収納家具を選べば、少し大きめの雑誌や様々なタイプの整理箱が収納でき、部屋が片付けやすくなります。たった10センチの奥行の違いが、片付けには大きく影響します。
このように収納家具は、収納量を考え、計画的に選ぶことが大切です。収納家具を変えることで、どの程度収納量が増え、部屋が片付くようになるのか、実際の事例で見てみましょう。
片付かない家にはカラーボックスが…
(解決例)収納家具はたくさんあるのですが、リビングが上手く片付きません
図表1はリビング・ダイニング部分が約10畳の戸建ての様子です。ご夫婦+ご子息1人の3人で暮らしていらっしゃいます。
リビングの中心にテレビを置き、その両隣りにカラーボックスを置いて、DVDや雑誌、小物などを収納していました。しかし、「収納家具は置いていますが、リビングの片付けが上手にできません」とのお悩みから、家具の見直しも含めた模様替えをご希望されていました。
部屋を拝見すると、リビングにはカラーボックスが並べられています。しかし、収納家具を置けば、部屋が片付くというものではありません。とくにカラーボックスは、前述の通り奥行が29センチ程度と小さいため、大きめの雑誌や小物・整理箱など収納できないものも多く、収納物が限られてきます。また、テレビボードは奥行が50センチあるのですが、棚が1段のみですので、収納量が多くありませんでした。そこで、カラーボックスやテレビボードなどの収納家具を、収納量のある家具に変更してみました。
リビングの収納家具は奥行き40センチ以上のものを選ぶ
漫画から雑誌、小物や雑貨・整理箱など、大きさの違うものを上手に収納するには、収納家具の奥行は40センチ以上必要になります。そこで図表2のように、シェルフとリビングボード、テレビボードは奥行40センチのものに買い替えて、壁際に置きました。シェルフは高さを150センチと低めのものにして、圧迫感を抑えました。
奥行が10センチ広くなりましたので、様々なタイプの整理箱や収納ケースに小物や雑貨をまとめて収納することができました。また、リビングボードは、引き出しの多いタイプのものがお勧めです。収納する物を仕分けして、それぞれの引き出しに収納することができます。そのほか、テレビボードは引き出しと棚のあるタイプに変更したため、収納がしやすく、また収納量も増えました。収納家具の奥行を10センチ変えただけで、収納できるものが増え、リビングが片付きやすくなりました。片付けやすい部屋にするには、奥行があり、収納量のある家具を選ぶことが大切です。
造りつけの収納があれば理想的だが…
先程、収納家具は収納量で考えるというお話をしましたが、キッチンの食器や調理器具、子供のおもちゃやリビング周りの小物や雑貨など、大量の収納物を片付けるには、どうしてもそれなりの収納スペースが必要です。
1番望ましいのは、カップボードや吊戸棚、リビング収納やダイニング収納など、部屋に造りつけの収納スペースがあることです。造りつけの収納家具は、床から天井までと空間の無駄もなくサイズも大きいため、収納量が大きいことが最大のメリットです。また、地震時に転倒などの危険もありません。
しかし、キッチンやリビング・ダイニングに、初めからこのような収納スペースを確保した間取りは、とても少ないのが現状です。なぜ収納スペースを、あらかじめ部屋に確保していない間取りが多いのでしょうか。それには、設計者側の都合があります。
設計者は間取り図の畳数を稼ぎたい
部屋を借りる場合や、自宅を購入する際は、いくつかの物件の資料を取り寄せ、間取り図などの情報を見比べます。その時、最初に比較・確認するのが、「LD12畳」など、その部屋の広さです。もし、部屋にリビング収納などの収納スペースを造ってしまうと、そのぶん部屋が狭くなります。本来なら「LD12畳」の部屋でも、1畳の収納スペースを作れば、間取り図の記載は「LD11畳」になってしまうため、狭い部屋という印象を与えてしまいます。
そのため、実際には家具を置いてしまうぶん狭くなる部屋であっても「LD12畳」という広い部屋という印象を強くするため、収納スペースをあえて作らないのです。このように、設計者の都合で収納スペースが造られないことはとても多く、その結果、入居してから収納に困ってしまいます。そしてその場合は、不足する収納スペースは家具で賄わなければなりません。この時、家具の置き方次第で、収納を確保するとともに、部屋の空間分けをすることで片付きやすい部屋にすることができます。
では、収納スペースを造りながら部屋を空間分けする実際の方法を、解決例で詳しく見ていきましょう。
物が入り混じり散らかり放題のLDK
(解決例)子供が生まれてから物が増え、LDKが片付きません
図表3はリビング・ダイニング部分が約7畳、キッチン部分が約5畳の合計12畳であるマンションです。ご夫婦と赤ちゃん1人の3人で暮らしていらっしゃいます。
リビング・ダイニングとキッチンの間に壁やカウンターなどの仕切りがないワンルームタイプの間取りのため、哺乳瓶やお皿などキッチンで使う物と、おもちゃ・雑貨などリビングで使う物の境界線がなく、物が入り交じり、乱れていました。「子供が生まれてから物が増え、LDKが散らかり放題で片付かない」とのお悩みから、収納家具の見直しも含めた、模様替えをご希望されていました。
キッチン・リビング・ダイニングは、キッチンワゴンやカラーボックスなどを壁際に置くことで、収納を確保していました。しかし、どこからどこまでがキッチンで、どこからがリビング・ダイニングという明確な空間分けはされていませんでした。そこで、収納家具を配置し、その収納家具でキッチンとリビング・ダイニングの空間を分けて、さらに物を収納できるようにすることにしました。具体的には、キッチンカウンター風に市販のリビング収納家具を置き、キッチンとリビング・ダイニングを分けました。
圧迫感を防ぎながら収納量を確保
まず、キッチンは、図表3のように収納が少ない状態でした。そのため、背が高く収納量のあるスチール棚を、図表4のように、冷蔵庫の高さに合わせて壁際に、また背の低いカウンター収納を部屋の中心にレイアウトすることで、圧迫感を防ぎながら収納量を確保しました。
カウンター収納や背の高い収納家具は、それぞれキッチン側・リビング・ダイニング側から、物の出し入れができるように、並べ方を工夫しました。このようにリビング収納家具を置くだけで、簡単にキッチンとリビング・ダイニングが空間分けできます。空間分けすることで、物が入り交じることが少なくなります。
そして、調理器具・電化製品などは背の高いスチール棚に、雑誌や文具などのリビング雑貨はリビング収納に、食器や食材などはカウンター収納に収納しました。物の収納場所を決めることで、部屋がスッキリ片付けやすい空間に変わりました(図表5参照)。
部屋にリビング収納などを造ることで、簡単に空間分けができ、また片付けやすい部屋にすることができます。