さまざまな人間関係を整理し、本当に重要なつながりを大切にするにはどうすればよいか。働き甲斐を発見し、成功へと近づく方法を、多くの人に示してきたライス大学経営学教授であるスコット氏は「質の高い人脈を築くには、相手としっかり向き合わなければいけません。友人のフェイスブックの投稿に『いいね!』するのは簡単ですが、どう考えてもなんの意味もありません」という――。

※本稿は、近藤麻理恵、スコット・ソネンシェイン『Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

ときめく人脈づくりを叶える3つの質問

きっと、あなたの人脈はいろいろなところにあるでしょう。リンクトインやフェイスブックなどのソーシャルメディア、そしてスマホの連絡先やメールのアドレス帳。さまざまな人脈リストを一つにまとめるのは、とても時間と手間のかかる作業になるでしょう。ですが、そうした人間関係については、プラットフォームごとに整理してもいいのです。まずは、あなたの理想のワークスタイルをイメージしてください。だれと一緒に、どんなタイプの人たちと一緒に過ごしたいですか?

一人ひとりを思い浮かべて、自分自身に問いかけてみましょう。

第一の質問はこうです。

仕事のためには、どんなつながりを必要としているか? 同僚やビジネスパートナーとのつながりは、ときには仕事の一部です。次に、第二の質問はこうです。目指すワークスタイルの実現を助けてくれるのは、どんなつながりだろう? こうしたつながりは、新しい(そして、もっと良い)仕事や、貴重な情報や考え方を得る機会、見込み客のリストや役立つ助言といった、ときめく未来をもたらすのを助けてくれます。

最後に、第三の質問はこうです。どんなつながりにときめきを感じるか? たとえば、その人のことを考えると、思わず笑顔になるか? その人に会えるのがうれしいか? 相手とのつながりが有意義だから、ときめきを感じることもあるでしょう。また、一緒にいたり、助けあったり、教えてあげるのが楽しく感じられるという相手もいるでしょう。

交差した手のひら
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「会いましょう」と誘われても断ってよい

これらの3つの問いかけへの答えがイエスにならなければ、その人をフォローするのをやめて、ソーシャルメディアの人脈リストから外しましょう。多くのソーシャルメディアでは、相手に知られずにブロックしたり、削除したりすることが可能です。

そして、今後は、人脈づくりに際してはもっと注意深くなりましょう。私も以前は、リンクトインやフェイスブックで友達リクエストをもらうと、知り合いの輪が広がるぞと単純に喜んで、イエスを連発していました。けれど、じつは自分は本物の人脈をつくっているのではなく、浅く広い人間関係を拡大しているだけなのだと悟りました。

また、実際に会いましょうと誘われた場合も、必ずしも応じる必要はありませんし、地域のネットワークイベントにもれなく参加する必要もないのです。厳しく聞こえるかもしれませんが、本当に重要なつながりを大切にして、それらに時間を割くためには、こうした姿勢が欠かせません。

ふだんからやりとりしている相手は30人ほど

イギリスに本社を置くエネルギー企業のマーケティング部で働くトニーは、つい先日、この7年間で3度目の昇進を祝いました。エネルギー企業の営業とマーケティングの分野で活躍する彼は、順調なキャリアを歩むために、さぞかしすばらしい人脈を築き上げたのだろうと、みなさんは思うでしょう。

勤務先の企業で大きな組織改編があって直属の上司が退職させられたとき、近いうちに自分も同じ運命をたどるのかもしれないと、トニーは覚悟しました。そこで、広い人脈に頼るのではなく、すでに質の高い関係を築いていた4人に相談を持ちかけました。すると、たちまち見込みのありそうな求人情報が4件も得られました。「重要なのは、人脈の広さではありませんでした。ふだんから、電話でやりとりしている相手は30人ほどだけです。人数は少ないですが、質の高い人脈なのです」とトニーは言います。

ネットワークの大きさが限られているとき、適切な人脈が築けているかどうかが非常に重要です。研究によれば、質の高い人脈とは、たとえば厳しい締め切りや、大きな失敗、あるいはトニーの例のようにキャリアが脅かされたとき、たがいに相手を本気で心配する、そういう関係です。本心を伝えあい、相手から学び、逆境にも対抗できる人間関係なのです。

私の師であるジェーンは、質の高い人脈を研究する専門家として名高いばかりでなく、それをどのようにして築くのか、身をもって示してくれました。ミシガン大学で教えていた彼女は、同僚との質の高いつながりが、心身の健康や勉学や創造力など、多くの前向きな成果につながることを示してくれました。

ハートと人の絵
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質の高い人脈を築く方法①:相手としっかり向き合う

質の高い人脈を築くには、第一に、相手としっかり向き合わなければいけません。友人のフェイスブックの投稿に「いいね!」したり、リンクトインでの昇進の公表に「コングラチュレーション!」ボタンを押したりするのは、簡単ですが、どう考えてもなんの意味もありません。

「最近、どうですか?」と尋ねるときには、あまり芳しくない近況報告を5分間聴く可能性も覚悟して口を開きましょう。そして、逆に、尋ねられたときには、「元気です」と表面だけの返事をしないように。

ジェーンに初めて「最近、どうですか?」と尋ねられたときのことを、今でもよく覚えています。ただの社交辞令だと思った私は、すかさず「元気です」と答えました。そのときの彼女の反応はといえば、私の両目をしっかり見つめて、「そうじゃなくて、本当に、最近どうしているかを聞いているのですよ」と、さらにはっきりした口調で尋ねたのです。

私の最初の答えでは本物の人間関係を築けないと判断したので、わざわざくり返して尋ねたのです。彼女は、私の人生に何が起きているかを、本気で知ろうとしていました。そして、私は、尊敬する重要人物に心のうちを話すなんて畏れ多い、という気後れをようやく乗り越えたのです。彼女は高名な学者でした(そして、私は学生でした)が、それでも本物のつながりを求めていたのです。

質の高い人脈を築く方法②:相手の心を開く

第二に、相手が最大限に力を発揮するのを助けましょう。あなたが助けたいと思っているのがわかれば、相手は心を開きます。良き指導者となることは、これを実現する強力な方法ですが、方法は他にもあります。助けが必要な同僚に手を貸したり、相手の話をじっくり聴いたりすることは、もっと気軽に他人を手助けする方法です。プロジェクトに前向きな意見を述べたり、アイデアに賛成したりして、いわば、弦楽器の音を響かせる共鳴板のような働きをすることによって、私たちは他人の人生に大きな変化をもたらせるのです。

ジェーンは指導者として稀にしか見られない方法で、教え子たちの成長を献身的に支えました。その結果は、彼女の教室から、数多くの著名な専門家が育ったことに如実に示されています。

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質の高い人脈を築く方法③:自分の心を開く

第三に、心を開いて、相手を信頼しましょう。自分の弱点を隠さず、失敗を語り、欠点に正直になりましょう。壁をつくらず、自分もまた成長の余地があることを示しましょう。

それは、自分の立場を不安に思ってばかりでは難しいことです。もし、あなたが指導的な立場にあるのなら、周囲の人々から持ち上げられて、弱みを見せるのはいっそう難しいでしょう。ですが、才能にあふれたすばらしい人物でも、たくさんの失敗をするものです。あなたと同じく! 完璧な人間のふりをするのはやめましょう。そうすれば、意義のある絆を結ぶための第一歩を踏み出せます。

信頼を築くための、もうひとつの方法は、完全に任せてしまうことです。いったんだれかに仕事を頼んだら、頻繁に進捗確認をしたり、アイデアを無視したりしないことです。

博士課程に進んだばかりの私に、ジェーンは研究プロジェクトの重要な部分を任せてくれました。そして、私が失敗すると、昔は自分だって失敗をくり返したし、それも研究のうちなのだと言ってくれたのです。

質の高い人脈を築く方法④:遊び心を忘れない

第四に、遊び心を忘れずに。ときにはばかな真似をする余裕を与えるとともに、考えを深め、創造力に火をつけるきっかけともなります。チームや、会社を挙げて成果を祝うイベントは楽しいものですが、一般には、もっと自然で自発的なイベントのほうが、心がこもっているものですし、やらされている感も生じません。

近藤麻理恵、スコット・ソネンシェイン『Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる』(河出書房新社)
近藤麻理恵、スコット・ソネンシェイン『Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる』(河出書房新社)

現役時代のジェーンは、世界的に著名な学者たちも巻き込んで、数多くのイベントを開催しました。とかく大学教授というものは、かなり内向的で、生真面目、しかも 辛辣しんらつなところがあります。それでも彼女は、彼らの遊び心を刺激する仕掛けを忘れませんでした。

彼女のお得意の一つは、会議の場でイベントのテーマを象徴するアイテムを渡して、楽しい雰囲気をつくる、という仕掛けでした――たとえば、専門分野での成長をテーマにした会議では、植物の種を配る、というように。

指導にも、助言にも、他の種類の手助けにも、頼まれたことにすべてイエスと答えるのではなく、本物の人間関係を築くことがとても重要です。表面的な依頼にノーと答えるのはなんの問題もありませんし、あなたが心から大切に思っている人のために人脈を利用するのは、与えられて当然の利益です。質の高い絆を結んだ人脈を築いて、大きくてもうわべだけではなく、小さくても本物のときめきをくれる人間関係を育てましょう。