お金が貯まらない人にはどんな問題があるのだろうか。片づけアドバイザーの石阪京子さんは「まずは財産にまつわる紙をあぶり出し、現状を把握することです。現状を把握すれば、危機意識が芽生えて、将来を見据えた対策が取れます。紙片づけは、お金の管理に直結しているのです」という――。

※本稿は、石阪京子『人生が変わる紙片づけ!』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

片づけで一番大切なことはモノの総量を把握すること

私の、家全体の片づけメソッドは、まず、家をざっくり大きく、「パブリックなスペース」と「プライベートなスペース」に分け、パブリックなスペースには基本的には個人のモノは置きません。そして、プライベートなスペースは、使う人で割って個人のモノを置いていきます。

使う人ごとに分けた場所は、就寝スペースを確保したら、モノは収納スペースの7割程度に収まるようにするのが、リバウンドしないコツです。

でも、片づけが苦手な方は、細かいことに気がつき心配りが丁寧で細やかな人が多いゆえに、紙袋を大きなものから小さなものまで揃えていたり、季節ごとに便箋や切手を用意していたりします。

ざっくり大きく分けて、その中にモノを収めることよりも、モノを捨てずに残すことを優先し、収まりきらなかったモノのために、また収納ケースを買ったり、別の部屋にモノを移動させたりしてしまいます。すると、「モノの総量」を把握できなくなり、いつまでも片づけが終わらないという傾向にあります。

モノの片づけをする時は、あちこちに分散しているモノを1カ所に集め、総量を把握することが一番大事。そして、そこから、今必要なモノだけを選び出し、「枠=収納スペース」に収まる量に絞っていきます。

木製の額縁
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片づけができると、お金の管理もできるようになる

実はこのやり方は、お金や財産の管理も同じなのです。

でも、お金は目には見えません。銀行に預けている預金、様々な保険、積み立てのお金、株式や不動産などの財産……。そして、車の維持費や生活費、ローン……。日々いろんな出入りがありますが、これらを目に見えるお札に換え、実際にいくら持っていて、毎日いくら出ていっているのかを数えることはなかなかできません。

目で見えるモノも把握できない部屋に住んでいると、目に見えないお金や財産を管理するのはさらに難しくなると思います。ましてや、お金の書類も整理されていなければ、今、家計がどういう状態なのかを把握するのも難しいでしょう。

しかし、目で見て確認できるモノの片づけができるようになれば、だんだんとお金の管理もできるようになっていきます。

散らかっていることが原因で詐欺にあってしまった…

片づけレッスンで出会ったFさんの家は大変散らかっていました。

Fさんが片づけをしようと一念発起されたきっかけは、詐欺にあわれたことでした。Fさんは私と出会う少し前に、なんとなくお金の不安があったので、長年の友人Gさんに誘われて、マルチビジネスの話を聞きに行かれたそうです。

Gさんによると最近知り合った方がすごくお金に詳しい人で信頼できるとのことだったので、Gさんの言うことだからと信じたそう。

高額なサプリメント60万円分を買って、その口数ごとに配当がもらえるという話だったのですが、しばらくしてその会社は摘発されました。

Fさんは、「自分の頭でしっかり考えて、調べていたら、詐欺にはあわなかったと思います」と悔やみ、モノの片づけを終えた後に、紙片づけもされて、ご自身の財産をきっちりと把握されました。

そして、家計管理を見直し、積立NISAなどの投資の勉強もするようになると、お金に対する漠然とした不安も消えてなくなったとのこと。

このように、モノを片づけて収納枠の中で管理することができるようになると、見えないお金の枠(予算)も意識できるようになり、苦手だったお金の管理をちゃんとできるようになる方がとても多いのです。

少年の部屋
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片づけレッスンに来られる生徒のみなさんは、どなたも、本当に真面目で優しく、心細やかな方ばかりです。

だからこそ、モノの片づけ、そして紙片づけで、暮らしの土台を整えて、金銭的な不安をなくし、安心できる生活を手に入れていただきたいといつも感じています。

紙片づけができなかったせいでお金を大損してしまった…

紙が片づいていないせいで、損をした方をこれまでたくさん見てきました。

ある方は、保険に入ったきり、ずっと見直さずにいたら、なぜか火災保険に二重で入っていました。今はできないかもしれませんが、その方の場合は、府民共済と普通の保険会社の両方に入ってしまっていたそうです。でも、本来、火災保険は一家に一つ。だから、火事になっても2カ所からはもらえません。幸い、火事になることはありませんでしたが、もらえないもののためにお金を払い続けていたなんて大損です。台風の時に壁が壊れて、火災保険の紙を探しているうちに3年たったという方もいました。

また、よくあるのは控除のやり忘れです。控除の紙がどこかに行ってしまって申請できない、そもそもそんなことを忘れていた、という方は多いです。

大事な紙を管理できていないのは、お金がぽたぽたと漏れていっているようなもの。紙をしまいこんで内容を把握せず、お金を失っているのです。

スマホ代金を滞納するとブラックリストに載ってしまう

そして、若い方に、声を大にしてお伝えしたいのが、スマホ代金は絶対に滞納しないこと!

紙が散らかっているせいで、督促状が来ても気づかず、「裁判になりますよ」という大事な紙が来ても気づかず、支払いを放置しているとブラックリストに載ります。

すると、クレジットカードが作れなくなったり住宅ローンが組めなくなることもあります。人生設計にかかわるので、きちんと管理しておかないと大変です。

だからこそ、紙片づけが大事。

入ってくる紙をルール通りに処理すれば、大事な紙を見失うことはありません。そして、財産にまつわる紙をあぶり出すことで、現状を把握できます。

現状を把握すれば、危機意識が芽生えて、将来を見据えた対策が取れます。

紙片づけは、お金の管理に直結しているのです。

「お金を貯めたい人は、まずは紙を片づけよう」という感じです。

LATE PAYMENTと書かれた金属
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紙の価値に気づくには一枚一枚向き合うことが必要

財産の管理能力を上げる「紙片づけ」とは、紙を丁寧に取っておくことではなく、一枚一枚と向き合って、必要な紙だけを残すことです。

Aさんは、書類をきっちり収納していたにもかかわらず、一枚一枚と向き合っていなかったがために、2000万円も損をしかけました。

彼女と一緒に家の中を片づけていた時のことです。生命保険会社から届く控除の書類が出てきました。でも、照らし合わせてみても、それに対応する証券がありません。

生命保険会社に確認するように伝えると、「いや、私そんなん入った覚えないわ。京子ちゃん、わからへん。私、こういうのめっちゃ苦手やねん。代わりに電話して」と言われ、「娘ですけど」と電話。だけど、やっぱり本人にしか話せないということなのでAさんに電話をかわりました。すると、みるみる顔色が変わっていって、「そうですか、わかりました」と、電話をお切りになりました。

そして、笑顔で「あったわ」。

なんと、彼女は、旦那様が亡くなった時に下りた生命保険の2000万円を使い果たしたと思っていたけど、そうではなかった。実は、保険会社の方に言われて、その生命保険を自分の名義に変えて、息子さんを受取人にしていたんです。彼女はそれをすっかり忘れていました。

石阪京子『人生が変わる紙片づけ!』(ダイヤモンド社)
石阪京子『人生が変わる紙片づけ!』(ダイヤモンド社)

彼女のように、書類はとりあえず置いておけばなんとかなると思って、中身を把握せずに放置していると、大損しかねません。

紙は、一枚一枚向き合わないと、その価値に気づけないのです。

けれども、それこそがスタートです。お金と向き合うスタート。

よくわからないからと目を背けているのではなく、向き合ってみてください。そうすれば、お金の出口と入口が見えるようになって、するべきことがわかってきます。