[テーマ1]コロナ禍も管理職になりやすいチャンスに?
【鈴木】4年前に介護施設の施設長になりました。施設長と言っても、経営会社の社員なので、中間管理職です。子どもが小学生になった時期だったので、仕事と育児のバランスが比較的取りやすいタイミング。育児や家事は、夫と実家に協力してもらいやっています。
【藤野】私は1人目の子どもの育休が明けてから営業課長になり、夫や実母と協力しながら出張などもこなしてきました。コロナ下での昇格だったこともあり、在宅ワークのおかげで、育児と仕事のバランスは取りやすくなっている気がします。
【原田】育児中や介護中で、在宅ワークになって助かったという人も多い気がします。私の部署は、仕事柄出社も多いのですが、現在、会議はほぼオンラインにしています。個々の働き方を尊重しやすいですよね。
【藤野】私も在宅ワークになってから通勤時間がなくなって、子どもを保育園に迎えに行くのに慌てて退勤しなくてよくなりました。時短勤務にする必要もなくなりましたね。
【原田】私の妻も管理職なのですが、コロナ禍による在宅ワークで明らかに働きやすくなったと言っています。
【安藤】まず通勤時間がなくなったのが大きいですよね。
【原田】本当にそうですね。コロナ後もこのまま、個々の環境に合わせた効率のよい働き方を推進できたらいいです。育児中の人でも管理職になりたい人は増えそうな気がします。
【藤野】ほかにも、私は管理職になってみてよかったことが本当に多くあると思っています。例えば、社内でも社外でも決定権があり、上の許可を待っている状態が減って仕事がしやすくなりましたね。
【鈴木】会社の進む方向や目的を俯瞰しながら働けるのは、やっぱり面白いですよね。また、部下たちが成長して、外部の人に褒められると本当にうれしいし、この仕事をやっていてよかったと感じます。
【原田】他人の才能を伸ばしていく能力がある人にとっては、管理職は新境地を開けるし、最高のやりがいになると思いますね。
【安藤】管理職になってから実感するのは、プレーヤーの延長線上ではなく、まったく別のことが求められるということ。プレーヤーでいたい人が無理をする必要はないとは思いますが、管理職になる経験は、チャンスがあるならつかんだほうがいいと個人的には思います。
[テーマ2]部下のやる気を伸ばし、成長させる喜びが持てる?
【鈴木】現在はヘルパーさんやパートさんを含めて20人程度の部下を見ています。価値観も生活環境も違い、現場での小さなトラブルは随時発生しますね。特に、施設長になりたての頃は大変でした。
【藤野】20人をまとめるのは大変そうですね。なりたての頃に、一番大変だったことは何ですか?
【鈴木】スタッフの本音を引き出すことですね。1on1で、スタッフの1人が「サンクスカードを送り合う企画をやりたい」と言うので、早速やってみたのですが、実はそんなにやりたくなかったというのが後でわかって。偽善的なサンクスカードの文化ができてしまいました。それからは、部下の言っていることの奥にある本音をどう拾うか考えるようになりました。それに、同僚だった人間が突然上司になると、最初はやっぱりお互い戸惑いますよね。
【藤野】すごくわかります。私は、現在部下は4人なので多くはないのですが、それでも、これまで隣にいた同僚の評価をし、モチベーションをあげていくことに、当初は苦労しました。私よりも先にマネジャーの試験に合格していた年上の男性社員より先に昇進してしまい、部下になった人から嫉妬やいら立ちを直接ぶつけられることもあって……。
【原田】私も最初に年上の部下ができたときは悩みました。どうやってけん引したらいいのかと。「飯をおごれば人がついてくるかも」と思って、たくさんおごったことも。
【安藤】(笑)うまくいきましたか?
【原田】いいえ、まったく(笑)。結局、こびるのはダメで、ぶれない信念を見せる、正直な姿を見せるほうが信頼につながることに気づきました。
【鈴木】管理職も部下も人間だから、お互い本音で話すって大事ですよね。
【原田】ええ、最後は結局、人間同士ですから。工夫したこともいろいろあります。例えば、反発する部下のことを、あえてみんなの前で褒めるようにしました。「君はものすごい自分の意思を持っている。そこを伸ばすといい!」と伝えたんです。そうしたら現場の空気が一変してよい状態になりましたね。今は、昔のようにネガティブなところをたたき直す時代じゃなくて、ポジティブなものを見つけて伸ばしていく時代だと思います。
【藤野】確かにジェネレーションギャップには、柔軟な対応が必要だなと常に意識しています。自分がいつも正しいわけじゃないという視点が管理職には大切ですよね。
【安藤】管理職になると、自分自身の評価よりも、チームとしての評価、アウトプットが重要になってくると思います。部下を信じて任せるけど、様子を見守り、時には他部署に部下のフォローをお願いしたりして、チームのモチベーションややる気が保てるようにする。結果、部下は結果を出し、私は仕事が楽になって(笑)、会社にも貢献できて、いいことずくめです。
[テーマ3]会社のダイバーシティ、進んでる? どうしたら進む?
【安藤】私の会社では女性活躍の推進はかなり活発で、育休も2〜3年取ることができます。配偶者が海外赴任になった際の帯同休暇制度も充実していて、社内に保育園もあります。一方で、女性管理職を増やすという数値目標による無理な登用が本人を苦しめることもありますよね。
【原田】私の会社もダイバーシティや女性活躍推進は進んでいますが、まだ、数値目標に合わせようとしているところもありますね。形だけなんとかクリアしようとするのではなく、それぞれの特性がきちんと生かされるような、本当の意味でのダイバーシティ、男女平等が進んでいってほしいです。
【藤野】私の会社の体質は「ザ・昭和」な感じなので、育児中の人へのフォローはほぼありません。さすがに、出張のときは「この日大丈夫?」って、先にひとこと確認してほしいなと思いつつも、会社の中に女性の上司が増えない限りそこは改善しないだろうなとも思っています。
【鈴木】私も、施設ではトップでも、会社全体では中間管理職です。役員はほとんど男性で体質も古く「女性は上にあがりたいとは思っていない」と先入観を持たれているのをヒシヒシと感じます。
【原田】会社の古い体質を変えて、働きやすい環境をつくっていくことについては、妻にも「女性のほうから声をあげたほうがいい」と伝えています。ただ実際は、なかなか難しいようですね。
【藤野】進んでいる会社とそうでない会社との差が今はすごく開いていますね。
【原田】そうですね。そもそも会社中心の生き方がベストではないし、そういう時代でもない。育児中心の時期があってもいいし、多様な選択があることを会社がもっと認めていく必要があると思います。
【鈴木】私は、自分のキャリアパスに苦戦してきたので、女性の活躍の場が広がるといいなと思っているのですが、古い体質の会社を変えていくのはなかなか難しい。だから、役員にあがれるならあがって、次世代のために何かしたいという思いがあります。
【藤野】私も、今は周りの男性管理職との間に見えない壁を感じることもあるのですが、管理職になったほうがやりがいや働きやすさがアップするよさもあります。だからこそ、もっと女性管理職が増えて、働きやすい環境になるように、会社の風土を変えていきたい。そのために役員になって、自ら発言権を持つ必要があると思っています。
管理職を目指す人にやっておいてほしいこと
反面教師で理想の上司像をつくる
「『こうなりたくない上司像』をはっきりさせておく。自分がこれまで遭遇してきた嫌な上司を反面教師にすることで、管理職として成長できます」(原田さん)
「自分の裁量で決めて部下を動かしていく上司も、部下に任せて回していく上司もどちらも自分にとっては最高のお手本。悪い上司についたら自分が上司になったときの『べからず集』にインプット」(安藤さん)
コーチングや1 on 1を学んでおく
「現場で苦労するのはやはり、部下とのコミュニケーション。言葉の奥にある本音を引き出すコーチングやメンタリングの力を持っておくといいと思います」(鈴木さん)
「管理職になってみて、ヒアリング力が足りないなと感じている。1 on 1の聞く技術を身につけていると、管理職になったときに部下と向き合いやすいと思う」(藤野さん)
※参加者の名前はすべて仮名です。
こんな環境があったら女性管理職が増える&活躍できる
もっと取り入れてほしい制度や環境!
●60代女性、官公庁
「給与・福利厚生以外に、育児や家庭への配慮がもう少しあればなってもいいと思えるかも」
●40代女性、製造
「より多くの裁量や自由度があり、失敗を受け止める環境があれば」
●50代男性、商社
「管理職というより、スペシャリストという枠(ジョブ型に類似)の昇進コースがあればいい」
●40代女性、製造
「介護や育児の問題へのサポートがあればいいと思う。時間拘束をもう少し柔軟にすれば、短時間でも努力できることもあるので」
●50代女性、官公庁
変えてほしい悪習慣!
●60代男性、建設
「部下を含む社員の勤務評価が一握りの幹部・役員に左右されない制度があればと思った」
●50代男性、不動産
「上からの指示に無条件で従え……という企業風土がなくなれば」
●30代男性、製造
「非正規社員と正社員の比率が8対2なのでまずそこから変えないと根本的に無理そう」
●50代女性、金融
「売り上げ指標しかない人事評価の仕方」
●30代女性、会計・法律系専門サービス
会社で無駄な時間だと思うのは?
●40代男性、製造
「無意味な会議や報告書作成」
●40代女性、保険
「自分でコントロールできない『判断待ち』に拘束され、他の仕事に傾注できないとき」
●50代男性、公共サービス
「顧客との長電話」
●40代女性、製造
「成果に結びつかない会食」
●50代女性、コンサルティング