裁量権を得たことで、人生のバランスが取りやすくなった
重圧を乗り越えるとその先は充実
私が勤務する会社も業界全体も男性が多く、勤務する会社の女性管理職は私より上の層は800人中2人しかいません。そんな状況で2021年4月、入社17年目、40歳を迎えたときに課長に昇進しました。
2人の子どもの産休・育休を経て、年齢と経験値のバランスがちょうど良いと感じた頃。上司の推薦で管理職の試験を受けたのです。
管理職になって最初に大変だと思ったのは仕事量です。物理的な仕事量が増加したわけではないのですが、自分の業務に加えて、これまで同僚や後輩だったメンバーのマネジメントをすることになりました。部下を育成すること、指示を明確にすることなど、多くの責任をズッシリ感じました。
同僚や後輩だったときは「ちょっとこれお願い」と気軽に頼めていたことも、上司になると「今彼女の負荷を考えると……」と考えてしまい、自分で抱えてしまうこともありました。また、言葉で的確な指示を出せずに部下を迷わせてしまい、自分が欲しいと思ったものがあがってこなかったことも。自分の未熟さを感じつつも、そこに向き合うことが自分自身の大きな成長の機会にもなり、徐々に信じて任せていくことも覚えましたね。
管理職になった当時が一番大変でしたが、慣れてくれば仕事の質も、おもしろさも格段にアップします。
たとえば社外に対しては、以前は決定する能力があってもその権限がなく、社にいったん持ち帰って……と二度手間でした。裁量権を得てからはすべてを気持ちよくその場で決められるようになりました。社内でも、部下が「こうしたいんですけど」と言ってきてくれたときに「いいよ、やってみよう」とその場で返して応援してあげられるようになりました。
さらに、給料や時間の使い方、やりがい、プライベート、そのすべてのバランスが自分で取りやすくなっていきました。同じ業界のメーカーで管理職をしている夫も、私が管理職になってからは、「給料に見合うことを、しっかりやったほうがいい」と、全面的に応援態勢に。コロナ下での昇進だったこともあり、テレワークのおかげで仕事と家庭のバランスは格段に取りやすくなり、人生の幸福度は増しました。
これからの課題は、管理職としてのスキルアップです。部下の気持ちを酌んで応援しながらも、ぶれずに目標を達成していく強いチームづくりをしていきたいです。
月1出社のテレワークで理想のワーク・ライフ・バランスに
部下の事情を考え、テレワークでも円滑に
マネジャー候補として昇進したものの、当初は管理職への興味は特にありませんでした。特に抵抗感があったのは横並びだった同僚を人事評価しなくてはならないことでしたが、新プロジェクトの立ち上げに伴い抜てき。いきなり2つのチームをマネジメントすることになりました。
役員との会議に参加して会社の方針を直接聞けることは、管理職の醍醐味。会社の数字や経営戦略に興味が持てるようになり、自分自身の仕事の意義をより感じられるようになりました。
もともと女性が多い会社で、私が勤務する沖縄支社は社員の9割が女性。マネジャーも全員女性なので、女性への理解は非常にあります。さらに男性社員の育休取得100%を目指す、LGBTQの研修を年に数回行うなどしていて、ダイバーシティはかなり進んでいると思います。その分、男女も、育児中も関係なく自己啓発と結果を求められるので、チームで成果を出すことを念頭に日々まい進中です。
現在は、9人と3人のチームを率いているのですが、それぞれ、会社や仕事に求めるものが違い、全員のモチベーションをどう保つか、現状に悩んでいる人をどう啓発していくかを、いつも考えています。
上司として気をつけていることは、自分の人生の経験則や価値観だけで物事を見ないようにすること。女性が多い分、独身、育児中、妊娠中など、さまざまなライフステージの人が存在します。だからこそ、それぞれの困っていることや希望などを聞いて細やかにフォローするように心がけています。
コロナ下で現在出社は月に1度。テレワークになった頃は、部下のスラックが業務時間中にオフラインになっていたり、反応がなかったりして対応が大変でしたが、それぞれの事情を聞いていくうちに、緊急事態宣言で子どもが家にいるため離席せざるをえないとか、リビングに同居家族がいて夕方以降は仕事がしづらい、というような状況が見えてきました。一人ひとり対応を考えて改善していったおかげで、今はテレワークのほうがスムーズだと思えます。
個人的にも、以前は、時差があるアメリカとの会議で深夜まで会社に残っていましたが、食事休憩や自分の時間を調整しやすくなりました。現在は、理想のワーク・ライフ・バランスが実現できています。
今後は、会社の中に研修部門を立ち上げたいと提案していて、それに向けて動いています。