プレゼンや会議など、人前で話すとなると、どうしても緊張してしまう。しかし「緊張を生かせば、すごいパフォーマンスを発揮できる」と話すのは、トップ・プレゼン・コンサルタントの永井千佳さん。そのテクニックを教わった。
同僚と話をする自信のある女性プロフェッショナル
写真=iStock.com/alvarez
※写真はイメージです

緊張は脳のリミッターを外すスゴイ武器

人前で話すときに緊張してしまう人に、まずお伝えしたいのは「緊張してもいい」ということです。なぜなら、私たちは緊張しているときにこそ、能力を発揮できるからです。

人は「今から勝負!」と思うと交感神経が活性化し、アドレナリンが出て心臓がドキドキします。これは脳が無意識にリミッターを外し、能力以上のものを出そうとする合図。私たちの祖先も敵が現れたときに、この緊張があったからこそ、敵にうち勝ち、生き延びることができたのです。ですから緊張したら戦闘準備完了。能力を出すための準備が整ったと思ってOKです。プレゼンや会議でよい結果を出せる人は、こうした緊張をうまく生かしている人。生かすコツは、3つです。

緊張を生かす3つのコツ

マトリックスゾーンから自分のキャラを見極めて

プレゼンは自分らしく話すと緊張が和らぎ、ぐっと楽になります。この自分らしさを知る方法が「トッププレゼン・マトリックス」です。図のように4つのゾーンに分かれます。「信念型」は圧倒的人物感の持ち主。自分語りをすると強みが生きますが、哲学的で話がわかりにくくなりがちなので、メタファーで一般的な視点を取り入れるといいですね。「パッション型」は、記憶に残りやすいタイプ。興奮して早口になりがちなので、呼吸しながらゆっくりと話すとよいでしょう。

「ロジカル型」は冷静で頭脳明晰めいせき。理論的に話すのが得意ですが冷たい印象を与えがちなので、笑顔を3割増しに。「優等生型」は失敗が少なく安心して聞けますが、全員に配慮するので、何が言いたいかわからなくなるのが難点。単刀直入にテーマから入り根拠を示すと、伝わりやすくなります。

大切なことは、この4タイプのいずれなのかを把握し、自分のあるべき姿をそのまま生かすことです。別のキャラを演じると、ますます緊張してしまいます。いくら憧れていても、自分が優等生型なら、信念型の女性経営者のまねをしてもうまくいかないということです。

Case 1 憧れの女性経営者のまねをしてプレゼン。緊張のあまり頭が真っ白に!

3つのテクニックで空気をつくり流れを変える

男性の多い会議だと、女性は大きな声の男性に気おされて、なかなか発言できない、発言しても緊張して甲高い声で早口になってしまうという相談をよく受けます。当然ながら男性とは体格も違いますし、大きな声に大きな声で応戦しても勝ち目はありません。そこでおすすめしたいのは、空気をつくること。物事の流れは、空気で左右されるからです。何度も打ち合わせを重ねてつくった企画が、空気の流れが変わってひっくり返されたという経験のある人も多いのではないでしょうか。

空気をつくるテクニックとして使えるのが「コードチェンジ」「言葉を区切る」「手ぶりを使う」の3つです。コードチェンジとは「ですます」だけでなく、「である」や体言止めをまぜて、メリハリのある言葉遣いをすること。話し手の揺るぎない気持ちを伝え、品格を上げてくれます。話すうちにとちりそうになったら、言葉を区切りましょう。つなぎ言葉も駆使すれば、自分のリズムをつくることができます。また緊張すると、つい体が揺れてしまいますが、手ぶりを使い、ていねいに話せば、体が揺れず落ち着いた印象を与えられます。

Case 2 会議で発言を求められると甲高い声で早口になってしまう……

カメラを通すオンラインは3割増しの表現でOK

「オンラインで緊張して話せない」のは、カメラに向かって話すから。オンラインでの注意ポイントは、「目線」「抑揚」「低く落ち着いた声」の3点です。

まず目線について。資料を見ながら話すと、下を向いてしまうので、台本はメモ程度に箇条書きにしておき、たまにチェックしながら目線はカメラへ。参加者の画像は画面上部に持っていき、目線の合うところに並べるのがコツです。その際は、熱心に聞いてくれる人に目線を合わせて話すと、リズムがつかめます。あらかじめ誰かにそういう役になってくれるようにお願いしておくのも手です。

またオンラインは空気が読めず、表情が3割減に。黙っていると無表情になり、ネガティブな印象を与えがちに。そのため、オンラインのときはいつもより3割増しの表現を意識。ただし大声を出すのはNG。耳ざわりで一本調子に聞こえてしまいます。ポイントは大声ではなく“抑揚”です。言葉に息をまぜると、抑揚がついてオンラインでも感情を伝えやすくなります。そして低く落ち着いた声で話すこと。この3つを心がければ、オンラインプレゼンは成功間違いなしです。

Case 3 思う以上にアガっていた?反応がいまいちだったオンラインプレゼン