「読む気になれない」書類で即不採用に
採用担当者は日々、多くの応募書類に目を通しています。人気の求人ともなれば、その数は何百~何千に達することも。そのため、一目見ただけで「読む気になれない」と、即不採用にするケースは結構あるものです。
では、一目見て落とされる応募書類とはどんなものなのでしょうか。
ポイントは大きく2つ。「ビジネスマナーがおろそかにされている」「読み手への配慮がない(読みにくい・わかりにくい)」です。こうした書類は、「仕事もいいかげん」「ビジネスシーンでも気配りができない」という懸念を抱かれてしまうのです。
例えば「履歴書の体裁が統一されていない」「誤字・脱字・入力時の誤変換」「空欄が目立つ」などは、多くの人が「当然のマナー。ちゃんと気をつけている」と思うのではないでしょうか。
ところが、本人が気付かないうちにマイナス印象を与えてしまっていることもあります。具体例をご紹介しましょう。
NG①フォントや位置がバラバラ
履歴書や職務経歴書は、転職サイトなどからダウンロードした見本フォーマットを使って作成する人も多いと思います。すると、フォーマットの記入例を流用する部分と、自身で入力した部分が混在することになるせいか、フォント(明朝・ゴシックなど)や文字サイズがバラバラな書類をよく見かけます。行の頭出しの位置がそろっていないことも。
また、これまで所属した企業名を記載するのに「株式会社」だったり「(株)」だったり、数値の表記が漢数字だったり算用数字だったりと、表記が統一されていないこともあります。
採用担当者は多くの応募書類を次々と読んでいますので、整然と作成された文書の中にこうした文書が混じっていると、一目で違和感に気付きます。そして「ツメが甘い人」「いいかげんな人」という印象を持たれてしまうのです。特に、お客様に提出する文書や資料を作成する職種の採用であれば、すぐに不採用となる可能性大です。
NG②「相手が知らないワード」なのに説明なし
これは特に、異業界の企業に応募する際に注意しておきたいポイントです。
業界特有の専門用語をそのまま職務経歴書に記載しても、相手は理解できません。会社独自の部署名・職種名だと、どんな業務をしている部署・職種なのかわからないこともあります。
「読み手の立場で考えられない人」というマイナス印象を与えてしまいますので、一般的なワードに言い換えて記載するか、( )や※などで説明を付記しましょう。
同様に、これまでの所属企業が一般に知られていない中小企業などである場合、「業種」「社員数」「売上高」「上場/非上場」などの情報を添えておいてください。
NG③長い職務経歴を時系列で羅列
大多数の人は、職務経歴書を作成する際、1社目から「時系列」で記載すると思います。1行目は新卒で入社した会社、次に転職した会社……と、経歴の新しいものが下の方に記載されます。
しかし、30代以上ともなると――特に異動歴や転職歴がある人は、1社目の最初の配属部署での仕事と直近の仕事は大きく異なっているケースが多いのではないでしょうか。そして、応募する採用ポジションは、直近の仕事に近いケースが多いかと思います。
社会人1年目の経歴から時系列で記すと、採用担当者は冒頭を読んだ段階で、求める人材像とマッチしない印象を抱いてしまいます。あるいは、「自分を伝えようとする意識がなく、意欲が低い」と判断するかもしれません。
年齢が高い人ほど、「直近」の経歴から書き始めることをおすすめします。
NG④履歴書の「希望」欄で一方的な主張
一般的な履歴書フォーマットには「本人希望記入欄」が設けられています。その欄に「年収○○万円以上希望」「フルリモートワーク希望」などと記載している人もよく見かけます。
しかし、お話を聞いてみると、それが絶対条件というわけではないケースが多数。絶対条件でないならば、履歴書には記載せず、面接の場で話し合うべきでしょう。
「その条件は受け入れられない」「自己主張が強そうで、うちの社風になじめそうにない」などと捉えられ、不利になってしまいます。
「相手が気にしそうなこと」を先回りして書く
ここまで挙げたNG例は、一言でまとめると「読み手がどう思うかを想像できていない」ことが原因と言えます。ですから、ひととおり書類を作成したら、相手の目線で見直してみましょう。そして、「ここを気にするのではないか」と思ったポイントについては、説明を付記しておくことをおすすめします。
例えば、女性の場合、「配偶者:無 扶養家族数:1人」などと記載されていると、読み手は「シングルマザーかな?」「独身で親の面倒をみているのかな?」などと疑問を持つこともあります。あるいは、家族構成に小さなお子さんが含まれていると、「育児体制はどうなっているのだろう。仕事との両立は可能だろうか」などと思われるかもしれません。
こうしたプライベート事情は企業側からは聞きにくいため、疑問を解消するような説明を簡潔に添えておくと「気遣いができる人」というプラス印象につながる可能性があります。
このほか、「ブランク(離職期間)が長い」「転職回数が多い」といった場合も、相手が抱く不安を払拭できるよう、理由を書き添えておくといいでしょう。
数字はただ書けばいいわけではない
「一目で不採用」とまではいかないまでも、「ひととおり目を通したが、よくわからない」「つかみどころがない」という応募書類は早々に「不採用」と判断されてしまいます。
採用担当者が職務経歴書を読み終えたとき、「こんなことをしてきた人なんだ」だけで終わらず、「これができる人なんだ」「この経験・スキルを当社で生かしてくれそうだ」と思えるように書くことが大切です。つまり、所属部署・担当業務をただ羅列するだけでなく、成果・実績、そして成果を挙げられた理由や工夫なども記載しておくと伝わりやすくなります。
特に意識していただきたいのが「数字」の書き方です。
応募書類作成マニュアルなどには、よく「成果や実績はなるべく数字を記載する」と書かれています。これはそのとおりなのですが、「意味のない数字」を書く人も多いのです。
例えば、営業職であれば売り上げの数字を記載することが多いのですが、同じ商材を扱う企業でないかぎり、その数字の意味や価値は判断できません。中には、「年々下がっている売り上げの数字」を書いている人も。これではアピールにはなりませんよね。
成果の数字は「アピール材料」となる場合に記載しましょう。例えば「対前年比アップ」「支社内で上位」などです。そうすれば、「これをどのようにして達成したのかを聞きたい」と、面接へ進める可能性が高まります。
写真で不採用になることも
書類選考は通過できたものの、面接でピンチを招くこともあります。最近、企業に採用候補者をご紹介すると、面接後にこんなことを言われるケースが増えました。
「応募書類の写真と本人が違いすぎますよ!」
履歴書写真の“盛りすぎ”に注意
これは特に女性の応募者に多いケースです。「写真は本人より10歳は若く見える」「“盛りすぎ”なのではないか」――採用担当者からは、こんな声がよく寄せられます。そして、実はそれが理由で採用を見送られることも多いのです。
もちろん、ご本人のビジュアルが問題で不採用になるわけではありません。「自分を良く見せようとして偽るような人なのか」というネガティブな印象を持たれ、「一緒に働きたいと思えない」と、気持ちが冷めてしまうのです。
その写真を使ったご本人には「偽ろう」とか「盛ろう」という意識はないと思います。何年か前に撮影してSNSのプロフィールに掲載している写真をそのまま使っている、あるいは、インスタ用の写真をアプリで加工する習慣が付いているのでしょう。いずれにしても、自分はそれらの写真を見慣れているので、第三者が抱く印象とのギャップを認識していないのかもしれません。
こうした実情に、多くの女性は気付いていません。
応募書類に添える写真は、「面接で会ったときに大きなギャップを抱かせない」ことを意識して撮影しましょう。
また、「職務経歴の盛りすぎ」にも要注意です。例えば、サポート程度で少し携わったプロジェクトを、いかにもメインで担当したように書いてしまったりすると、面接で深く突っ込まれたときに言葉に詰まってしまいます。企業側は期待とのギャップを感じ、やはり採用を見送ることになります。
応募書類では、「面接でここを突っ込んで聞いてほしい」と思う強みを強調して書くようにしましょう。