仕事がバリバリできるわけでもないのに部下から慕われる上司は何が違うのか。組織改革のコンサルティングを手掛ける岡田充弘さんは「このタイプの上司の周りでは『辞める』と言っていた部下がとどまった、いつの間にかクレームが解決してしまった、といった珍現象がよく起きます」という――。
手を重ね合わせチームワークのイメージ
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なぜか部下に慕われる上司

世の中には「仕事ができるのに人がついてこない上司」がいる一方で、「仕事はそこまでできないけれど、なぜかこの人のためならと思われる上司」がいます。

私は謎解きゲーム会社の経営をするかたわら、人・組織のDX支援を行っているため、普段から経営者やビジネスパーソンに出会う機会が多いのですが、実際両タイプの上司と接することで分かったそれぞれの特徴があります。

仕事ができるのに人がついてこない上司

このタイプの上司は説明不足で、結果だけで良しあしを厳しく判断します。もちろん部下に手取り足取り教えるなんてことはしません。エンジニアや研究職など、昔ながらの職人かたぎな職業でこういった人が時折見られます。良く言えばプロ意識が高いのかもしれませんが、こういったタイプの上司は「仕事は見て学べ」という考えが根底にあり、部下の成長を待てずに「自分でやった方が早い」という思考になりがちです。

もちろん全て間違いだとは思わないのですが、今の時代の部下からすると少しせっかちに映ることでしょう。

また、そういったスタイルを続けていると、上司自身が疲弊してきますし、自分の器量・体力以上に事業を大きくすることが難しくなってきます。

実のところ、かつての私はこのタイプの上司だったと思います。間違いがあれば切れ味鋭く指摘して即直させることが正しいと信じていました。「できない理由」に耳を貸さず理詰めでつぶしていくこともしました。目標達成や勝利へ意識が強すぎたのかもしれません。人との価値観の違いや仕事上の想定外を許せるほど、心の余裕や経験がなかったこともあるでしょう。結果として、仕事上の修羅場や社員の離反を生むことになり、そのことが考え方やリーダーシップのあり方を改めるきっかけとなりました。

無理に上司らしく振る舞おうとしなくていい

繰り返しますが、私は仕事ができて人がついてこない上司はすべて間違いというわけではないと思っています。実際に企業では、部下無し管理職がスペシャリストとしてその他の管理職と同等に扱われる複線型人事のような動きも出てきています。

【図表1】仕事ができるのに人がついてこない上司
図表=筆者作成

では、そういったタイプの上司がどうすればいいかと言うと、「部下を率いる」という気持ちをいったん抑えて、相手の性格や特徴を観察しながら部下一人ひとりと丁寧に付き合っていくのです。無理に従えようとしたり、上司らしく振る舞おうとしなくていいのです。

というのも、上司個人としては仕事ができるので、普段の背中や行動で見せていけば、周りは影響を受けて勝手に学んでいくからです。そうこうしているうちに自然と人が集まっていた、こういう状況がこのタイプの上司の理想なのではないでしょうか。

仕事はさほどでなくても、この人のためならと思われる上司

「仕事はできるけど人がついてこない上司」とは反対に、「仕事はそこまでできるわけではないけど、なぜかこの人のためならと思われる上司」っていますよね。

そういう上司のまわりではなぜか、

・辞めると言っていた部下が会社にとどまる
・いつの間にかクレームが解決してしまう
・難易度の高い案件をあっさり受注してしまう
・目立たなかったダークホース人材がよく育つ

といった不思議現象が起こります。

理由は当の本人もよく分かっていなかったりします。自分はなんて運がいいんだと。また、その人のまわりは、いつも明るく柔らかな雰囲気に包まれています。

オフィスで笑顔で話している人たち
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決して目標に対してマッチョなタイプではなく、人を押しのけてまでバリバリ結果を出すタイプでもありません。まわりの人みんなが好循環であるかが大切なのです。

そんな調子なので、仕事をすれば結果として自分一人がやれること以上の成果をチームとして残すことができます。世の中でハラスメントやブラック企業の問題が指摘される中で、時代が求めているのはこちらの上司像かもしれません。

この人のためならと思われる上司は結局コレをやっている

「この人のためなら!」と思われる上司になるには、一体どのような要素が必要でしょうか。人がついてくる力なんて、先天的なものなんじゃないかと思われた方もいるかもしれませんが、普段ちょっとしたことに気をつけるだけで、部下との付き合い方は随分と変わります。私が見てきた「人がついてくる上司の4つの特徴」をご紹介します。

【図表2】仕事はさほどでなくても、この人のためならと思われる上司
図表=筆者作成
1.主役は上司である自分ではなく、部下だと心得ている

人がついてくる上司は、部下の手柄を取りません。部下を主役だと思っているからです。問題が起こった時にあえて答えを示さないことがあります。部下に自ら考え、自立してほしいと願っています。

2.スキルや専門知識はそこまで無いが、先読みに優れている

部下が持つスキルや専門知識と比べて、上司が持つスキルや知識の方が不足しているということはよくあります。しかし人がついてくる上司は、知識が不足していても、これから起こる良いこと・悪いことを先読みする力があります。そのため、優れた部下たちを正しい方向へ導くことができるのです。

3.聞き上手で、部下が気づいていない可能性を引き出せる

人がついてくる上司は聞き上手です。自慢話なんてもってのほか。部下のことをもっともっと知りたがっています。部下に気づきやチャンスを与えることで、自分でも気づいていない可能性を引き出すことに喜びを感じます。

4.さりげないフォローに優れ、最後は責任を取ってくれる

「人がついてくる上司」は、部下の自主性を重んじながらも、ここぞという時はさりげなくフォローをします。問題が生じた場合には、自己解決を促しつつも、最後の最後には責任を取ってくれる度量を備えています。だから部下は安心してその人の下で何度でも挑戦できるのです。

「人がついてこない上司」「人がついてくる上司」について紹介してきましたが、これからあなたが目指すスタイルの参考になりましたでしょうか。性格に合わせてどちらか決めてもいいですし、成長段階に応じてスタイルが変わってもいいと思っています。