会社員として働きながら投資家としても成功するにはどうすればいいのか。サラリーマン投資家の荒木陽介さんは「時間、信用、情報、お金は密接につながっていることを意識することです」という――。

※本稿は、荒木陽介『「お金を生む時間」のつくり方』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

砂時計
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資産形成について考え行動する時間を意識的に増やす

サラリーマンの稼ぎの多くは、労働集約型です。労働時間内はまじめに会社のために働き、その対価として給与をもらう――。それがサラリーマンの基本的な在り方だと思います。

もちろん、本書のタイトルにある「お金を生む時間」には、そのような「労働の時間」も含まれています。しかし、そのような働き方だけを続けている限り、「サラリーマン投資家」への道はいつまで経っても開けてくることはありません。

サラリーマン投資家としての成功もつかむには、もうひとつの「お金を生む時間」である「投資の時間」――すなわち、資産形成について考え行動する時間――を意識的に増やしていく必要があります。そのために、まず私がおすすめしたいのが、日常的な「時間の使い方」の見直しです。

言うまでもなく、時間は有限の資源です。誰にとっても1日は同じ24時間。この限られた資源である時間の有効な活用方法――いわば「時間という資源の投資先」――を意識すること。それが、優れた投資家マインドを養うことにもつながるというわけです。

自分の時間を増やすには「信用」を築き他人の時間も活用する

私が実践している投資法では、「時間、信用、情報、お金は密接につながっている」という考え方がベースになっています。言い換えれば、上手な時間の使い方が信用を生み、その信用が人脈となって良質な情報(学び)をもたらし、お金に変わるというのが、基本的な考え方です。

お金に余裕ができれば、お金で時間を買うことも可能になります。このよい循環を生み出せたからこそ、3年という短期間で10億円もの資産をサラリーマンでありながら築くことができたのです。

なので、これからお話しするのは、上手な時間の使い方と言っても、単純な“時短術”ではなく、主に「信用を築くための効率的な時間の使い方」になります。

たとえば、会社の仕事では、周りの人から信用されるほど協力を得やすくなります。他人の協力というのは、いわば自分の時間に代わって他人の時間を使っている状態です。つまり、信用を築くことで、自分の時間が増えていくわけです。

その増えた時間で、さらに社内でも社外でも信用を築き、いろんな人脈や情報とつながれば、会社員としての仕事でも投資でも、さらに成果を上げられるようになるでしょう。要するに、時間と信用と情報があって初めてお金が生まれ、大きな資産も形成できるというわけです。

「副業」をがんばってもお金が増えない理由とは

その意味では、いわゆる副業は時間の捉え方を間違っていると思います。つまり、時間という貴重な原資を無駄づかいしているのです。副業で本業がおろそかになり、会社からの信用を損なう人が少なくありません。職場で浮いてしまい、本業の給与も増えないし、リカバリーも難しい。

やはり急がば回れで、目先のお金よりも職場の信用を第一に考えて自分の時間をうまく使っていくべきでしょう。そして、その信用をテコにして、サラリーマン投資家として投資を行っていく。それが本書でお伝えしたい、私の結論です。

とはいえ、サラリーマンとして働きながら、信用を損なわないように時短をするのは、相当難易度が高いと思う人のほうが多いかもしれません。

でも、信用というのは時間の長さではなく、やっている仕事や職場の人とのやりとりの濃密さによって育まれます。つまり、一定時間内にできることの中身をどう充実させるかを考えれば、結果的に信用を損なわない時短を実現できるとも言えるわけです。

もちろん、その前提として、スケジュール管理をきちんと行う必要があるのは言うまでもありません。でも、基本に立ち返れば、やるべきことは結構単純です。

女性、スケジュール帳
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タスクをスケジュール化する本当の意味とは

スケジュール管理の基本は、あるタスクをいつまでに片づけるかという「期限」や、いつやるかという「予定」を見える化することです。なので私は、やるべきことが決まると、それをまずスケジュール化します。

つまり、タスクをタスクリストのままにしないで、スケジュール帳に書き写して、自分がそれをやり切る時間に転換するわけです。

そうすると、この仕事は今週中には終わらないな、といったことが明確にわかるようになります。それが抜けられる森なのか、抜けられない森なのか、わからずに足を踏み入れると、日没までにここを抜けられるのかと、すごく不安になるでしょう。

それと同じで、いま抱えているタスクが自分で対応できる範囲なのかどうかということが、スケジュール化することによって初めて見えてくるのです。

私は新入社員の頃からそうしていたのですが、スケジュール化せずに、タスクリストのまま仕事をしている人も少なくありません。よく不安にならないなと、人ごとながら心配になります。

時間は3つに色分けすればいい

そして、スケジュール管理の際に私が最も意識しているのは「スケジュール帳にきちっと余白をつくる」こと。余白というのは、スケジュール化されたタスク以外の部分ですから、会社員にとっては「自由時間」。それを「投資の時間」などに充てています。

私はこの自由時間(投資の時間)を得るために、スケジュール帳に記したタスクを重要度に応じて「色分け」しています。そうすることによって、自分がいまどれくらい余白を持てているかがひと目でわかります。

また、色分けをすると、タスクの優先順位をより明確に意識できて、期限までに自分がやり切れるかどうかの見通しもつけやすくなります。

単色のスケジュール帳だと、どうしても並列的な見え方になって、タスクリストと変わらない印象になります。すると、本当はいまやらなくてもいい作業を先にやってしまう、といった時間の無駄づかいが起きがちなのです。

さて、私の色分けの仕方を簡単に紹介しておきましょう。

①各タスクを「最大化、現状維持、最小化、廃止」という視点から4つに分類する
②それぞれの色を決める(私の場合は最大化=濃いオレンジ、現状維持=薄いオレンジ、最小化と廃止=灰色)
③スケジュール帳にタスクを書き込み、3色に塗り分ける。GoogleカレンダーやOutlookなら同色の濃淡でも見やすいが、手帳の場合は、3色ボールペンや蛍光ペンを使ってわかりやすく色分けする

電車の移動時間に読書をするのは生産性を下げる

「最大化、現状維持、最小化、廃止」という時間の捉え方は、会社の仕事のスケジュール管理だけでなく、投資活動も含む自分の行動全体の見直しにも役立ちます。

まず、最大化すべきは「資産が増える行動」で、評価につながる勤労のほか、資産の売買や運用成績の改善につながる行動などが該当します。それらを行う時間を私は「攻めの時間」と呼び、大切にしています。

一方で、「攻め」を充実させるには、「守り」も固めなくてはなりません。私は、現状維持したり最小化させたい時間のことを「守りの時間」と呼んでいます。

現状維持すべきは、人脈づくりや情報収集。ただし、新たな攻めの前、つまり、新たな資産形成を始める前には、これらが増える傾向があります。そして、最小化すべきはスケジュール管理や気分転換、移動などの時間です。

どちらでもない「攻めても守ってもない時間」は、廃止すべき時間です。ダラダラした時間や惰性で続けていることがあれば、どんどんやめていきます。

これらのうち、最小化と廃止の「灰色」の時間を減らせれば、その分だけやるべきことの「時短」が進むわけです。たとえば、最小化の中で私が特に意識しているのが移動の時間です。なぜならほぼ生産性ゼロだから。本を読んだり音楽を聞いたりして活用したいとも思いません。むしろ、移動との掛け合わせで行うと、生産性を下げると思っています。

時間を増やすためには出費を厭わない

六本木のオフィスビルに入っている取引先の担当になったのをきっかけに、わざわざ六本木に引っ越したくらいです。夕方に打ち合わせが終わるといったん自宅に戻り、家族と夕飯を共にする。

荒木陽介『「お金を生む時間」のつくり方』(朝日新聞出版)
荒木陽介『「お金を生む時間」のつくり方』(朝日新聞出版)

そのあと、会社に戻って残業するという日々を送っていました。どうせ夜遅くまで働くなら、家族と食事をしてからのほうが生産性は高いと考えたわけです。

また、会社から電車で35分の場所にある取引先には、自腹でタクシーで移動しています。2500円かかりますが、15分で着きます。

20分を2500円で買ってでも、その時間をほかの仕事に充てたいのです。タクシーなら乗り換えなどで歩く必要もないので、余裕で仕事の電話をかけられます。寝不足だったら仮眠して、頭をスッキリさせることもできるでしょう。

その移動が月に10回あったら、電車に比べて3時間20分の余白が生まれます。さらに、電車よりもタクシーの2時間30分の移動時間のほうが生産性は高いわけです。こういう時間の使い方の差は、きっと会社員としての成果の差につながるでしょう。