進学先の話題に踏み込まれないためには
春は卒業・入学のシーズンですね。職場やママ友との間で、子どもの進学先について何かと話題に上ることが多い時期です。それぞれの関係性や価値観によるところもあり、一概には言えませんが、子どもの進学先をしつこく尋ねてくる同僚やママ友が悩みの種となっている人も多いようです。
例えば、家族が名門校に合格した場合でも、そのことで他人にマウントを取る(自分の優位性を示そうと自慢したり、相手をけなしたりすること)ために他人の合格先を聞いてくる人もいれば、逆に嫉妬されないように、角が立たないように他人と接したいと思う人もいます。家族の進学先については、できることならあまり踏み込んでほしくない話題のようです。
そこで、本稿では、子どもの進学先について話したくないときに「どこに決まった?」という質問をさらりとかわす究極のフレーズについて考えます。
毎日顔を合わせるからこそ穏便にすませたい
一般的に、進学先に限らずプライベートな話を振られて、答えたくないと感じるのは主にこの2つのタイプではないでしょうか。
1つ目は、自分の話をしたいから聞いてくるタイプです。自慢話をしたい、まさにマウントを取りたい人です。そして、「その学校は、こんなうわさがあるのよ」などと、教えたがり屋さんもここに含まれます。
2つ目は、好奇心から尋ねてくるうわさ好きタイプです。職場の人や友達の中に1人は、こうした情報通の人がいるのではないでしょうか。こうした人は、新しい話を仕入れては、事実かも確かめず拡散してしまいます。
このように、普段は話しかけてこないような人が寄ってきたときに、「自分の子どもと比較をしてきそう」「プライベートに踏み込んできそう」と違和感を覚えるのではないでしょうか。
特に、1つ目のタイプの場合は、子どもの学校=親としての価値と捉えて、自分の子どもの学校を自慢したい、優越感に浸りたいという感情を持っている傾向があります。こうなるとなるべく関わりたくないのが本音でしょう。
とはいえ、他人を変えることはできませんし、地域や職場で、毎日顏を合わせるとなると、波風立てず穏便にすませたいところです。
すり替え、封じ込め…質問の上手なかわし方
それでは、進学先の質問をかわすフレーズを見ていきましょう。
①話題の矛先をすり替える
相手に「どこに決まった?」と聞かれたら、まずは「まあ、入れるところに入ったって感じです」「おかげさまで縁があるところに入りました」と答えます。
その後に、「ようやく肩の荷が下りました。これからは私も好きなことやりますよ!」「しょせん、この程度の親なので」などと、話題の矛先を進学先から自分にすり替えてしまいます。こうすれば、それ以上詮索しにくくなります。
②謙遜をする
「○○さんのお子さんのように優秀じゃないから、お聞かせするほどのものじゃないわ」
といえば、それ以上踏み込んできません。こうして封じてから、
「それにしても○○さんのお子さん何年生になったの?進学先は決まった?」と
相手に話を振ってしばらく付き合えば満足するのではないでしょうか。
もちろんわが子は、学校に関係なく愛おしく他のお子さんと比較するつもりはないと思います。しかし相手にとっても自分の子どもが一番の関心事なのです。会話上手とは、相手に話を合わせること。防御したあとは、一歩譲って相手を立ててあげましょう。
③キッパリ断る
「ごめんね、子どものプライベートのことなので、親が言うのは控えているの」
「子どもが言ってほしくないって言っているので……」と、子どものことだから言いたくないと理由を伝えるのも一つの方法です。
ただこの場合、気をつけたいことがあります。それは発言と行動に一貫性を持たせること。一貫性がないと、「あの人には教えて、私には教えない」などしこりを残すことにもなりますし、当然、自分も他人の家族の進学先を詮索することは控えましょう。どうしようか迷ったときには、子どもに「あなたの進学先を教えてもいい?」と聞いてみるのもいいかもしれません。
そしてもし、嫉妬されないか心配な場合には、志望校に合格をしてもあまり浮かれすぎず、謙虚な態度を取っておきたいですね。
あるとき、引きこもりのお子さんがいる方から、「職場で受験の話題が出るたびに、何とも言えない気持ちになった」と聞いたことがあります。あまり気にしすぎてもぎくしゃくしますが、世間にはさまざまな事情や価値観をもった方がいることを頭の片隅に入れておくと、失態を未然に防ぐことができます。
切り返すときこそポジティブに
ビジネスコミュニケーションでは、切り返しやお断りなど、言いにくいことを言う場合こそ、ネガティブではなくポジティブな印象を与えるのがポイントです。
例えば、お客さまに話せない情報がある場合「申し訳ございませんが、その件についてはお答えできません」という否定的な表現ではなく、「あいにく、お答えいたしかねます」という肯定的な表現を選択すると感じがよくなります。
これと同じように、進学先を聞かれた時にも、「申し訳ないけど、教えられないわ」というネガティブな表現よりも「あいにくお答えいたしかねます!」とポジティブな表現のほうが悪い印象にはなりにくいものです。
そして大事なことは、切り返すときは、笑顔とやや強めの口調で「これ以上聞かないでほしい」と意志を伝えること。つい感じが悪くならないようにと気を使うあまり、「ええ、まあ……」と困った表情を見せたり、言い淀んでしまったりすると、相手に隙を与えてしまいます。「決してあなたが嫌いなわけじゃないの。ただ、この話題には答えたくないの」という気持ちを表情と話し方で伝えてください。
番外編…子どもの事情をチームで共有しておく
一方、こんな事例もあります。バリキャリのワーキングマザー、女性管理職のAさんは、思春期の息子の進路について悩み多き日々を送っていました。そのため、心身ともに疲労がたまり、仕事にも影響が出そうになりました。
そんな折、Aさんは息子から「ママは僕を信じてないの?」と問われハッとしました。この出来事をきっかけに子どもから精神的に自立をしようと吹っ切れたそうです。
そしてチームメンバーにも「受験シーズンの○月は家族優先になる。だけどその分、前倒しをして仕事はしっかりする」とプライベートの状況を打ち明けたところ、協力体制が整って非常に仕事がしやすい環境になったそうです。
その後、息子さんは1浪をして、見事第一志望の大学に合格、今では立派に社会人となりました。結果的にAさんは仕事もプライベートも一層充実した毎日を送っています。
Aさんのように仕事ができる女性ほど、仕事もプライベートも完璧を求めがちです。しかし、こうした子育ての悩みといった“ちょっとした自己開示”をすると、周りはホッとするかもしれません。それに特に女性の場合、リーダーが率先して、ある程度自己開示をしてくれたほうが、自分も育児や介護、健康面などプライベートなことを共有しやすく、仕事もうまく回りそうですね。
マウンティングや興味本位で進学先を聞いてくる人は論外ですが、職場では、進学先を教えるかどうかは別にして、プライベートの事情を知っておいてほしい人の範囲や、どこまでの内容を開示・共有するか、自分のスタンスをあらかじめ決めておくのもいいかもしれません。
普段からこうして備えておくと、突然、想定外の相手から「どこに決まったの?」と聞かれても慌てず、落ち着いて対応できます。子どもの進学先で気まずい雰囲気にならないように、職場の同僚、友人と良好な関係を保ち気持ちよく過ごしたいですね。