防寒対策に気を取られて、ついないがしろになりがちなのがコートの装い。着太りしない方法は? 地味に見えないためには? そしてスカートとの丈バランスは……? キャリア女性のための、冬の主役「コート」の選び方から着こなしテクを、イメージングディレクターの高橋みどりさんに教わりました。
コート
写真=iStock.com/Artem Ermilov
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管理職の装いにおいて大切なこと

「ビジネスでの装いはその人のポジションにふさわしいのはもちろん、その日の仕事内容に合わせて考えるべき」と語るのは、イメージングディレクターの高橋みどりさん。「誰と、どこに、どんな目的で仕事をするのかが重要です。たとえば大切なプレゼンなら正統派のきちんとスタイル、レセプションなら女性らしく華やかに……など、シーン別での装いを意識しましょう。私も若い頃は好きなものを着ていましたが、ニューヨークで仕事をしていた際に、“その日の仕事内容に合わせた装いをする”ことの重要性を身を持って知りました」

たしかに同じ役職についていても、職種はもちろん、その日のスケジュールや進行しているプロジェクトで日々の目的は違ってくる。そのことを自覚し、役職、職種、目的にふさわしい着こなしをすることが、女性リーダーのファッションでは大切にしたい。

管理職がファッションにかけるべき予算の基準は?

女性リーダーの中には、初対面の取引先から「どちらが上司?」などと言われてしまった経験を持つ人も少なからずいるよう。では、部下と一線を画した装いには何が必要なのだろうか。

「ファッションにかける予算を月収の2割ほどを基準としてみましょう。たとえば年収が600万円の人は、月収が50万円ほどと考えると、スーツは2割ほど、つまりこの場合10万円ほどが予算。インナーはさらにその2~2.5割の2万円台に、バッグや靴などの小物は5割前後の5万円ほどというように計算します。そうすると、ポジションが上がるとそれに比例して年収も上がっていきますから、装いの明確な基準が自然と身に付きます」

働く女性のファッション予算の考え方
・スーツ=月収の2割
・インナー=スーツ予算の2~2.5割
・バッグ、靴、小物=スーツ予算の5割

仕立てがいいほどいい、高価なものほどいいのではなく、ビジネスでは身の丈に合っている装いができるかどうかもセンスのうち。20年ほど前に高橋さんがセレクトショップの立ち上げに関わった際の、綿密なマーケティングにより弾きだされたこの基準は広く知られることとなり、働く女性の仕事服を確実にレベルアップさせている。

コートが素敵であることの重要性

これから本格的な冬に向かうが、とくに悩ましいのがコート選び。「欲しいコートが見つからない」ことを理由に、働く女性の多くが、ビジネスシーンにおいてのコート選びに関して少々消極的な印象がある。その傾向は、編集部が実施した500人アンケートや座談会でも感じられた。

通勤コートの悩みベスト5
1位 ビジネス中心に考えると似たようなデザインしかない
1位 防寒重視だとビジネスライクでなくなる
1位 軽くて暖かいコートが見つからない
4位 周囲の人と似たコートになってしまう
5位 色の選択肢がない

「とくに気に入っていないけれど寒いから仕方なく着ている」「とりあえず黒で主張がないものを選んでいる」という人も読者の中には多かった。けれど高橋さんはこう言い切る。

「コートは、時に身に付ける人のステータスやセンスが決められてしまうことすらある主役級のアイテム。海外の例などを見てみると明らかですが、レストランやホテルなどでコートを預けた際にコートが素敵だと、それだけでいい席に通してもらえたり、特別扱いを受けたりすることもあります」

着ている時にはもちろん、脱いだ時にも効力を発揮するコートの存在。仕事用だからとりあえず、と当たり障りのないデザインを選んでいる人と、見え方にこだわって選んでいる人との間には大きな差がつくのは間違いなさそうだ。

着こなし実例1:ダークカラーの装いは女性らしさを意識

今回PW編集部では、キャリア女性から人気の高いブランド「ポール・スチュアート」とコラボした「理想のお仕事ダウンコート」を製作。そのダウンコートを使って、高橋みどりさんにコートの着こなし方をレクチャーしてもらった。

たとえば黒のノーカラージャケットに、ダークブルーのボウブラウスワンピースを合わせた装いには、黒のコートを羽織ると女性らしく知的な雰囲気になるという。

「このコートは襟が自然と美しく立つので、顔まわりが決まりやすくてとてもアレンジしやすいのが特徴。袖をまくると軽やかさも出ますし、小柄な人が羽織った時にもバランスが良く見え、スタイリッシュに決まりますよ」

黒のノーカラージャケット
撮影=ササキヨシヒロ

濃紺のバッグを組み合わせれば、ダークカラーの装いもやわらかな印象に。ちなみにバッグのサイズは身長の5分の1ほどがベストバランスだそう。

着こなし実例2:コートとボトムの丈問題と着太り問題を解消!

次は「膨張して見えないか?」がちょっぴり心配なグレージュのコートでレッスン!

「グレージュのコートを主役に、やさしいトーンでまとめました。胸元にはロングネックレスをプラスしてほっそりとした縦のラインを強調します」

コートを羽織る時に気になるのはボトムとの丈バランス。どうすべきか悩む人も多いだろう。「パンツのときはコートの丈との相性はあまり考えなくても様になりますが、スカートの時は大体コートと同じぐらいの丈がベスト。けれどロングスカートを合わせたい場合は、プリーツや揺れる素材のものをチョイスすれば、丈の違いは気にならなくなります」

グレージュのコート
撮影=ササキヨシヒロ

さらに、グレージュのように淡い色のコートは膨張して見えるという心配も。

「そんな時こそクローゼットに眠っているスカーフの出番! 顔まわりをパッと華やかにしつつ、メリハリが出るので膨張して見えるのを防いでくれます」

着こなし実例3:柄スカートでも統一感を出すには

地味になりがちなオフィススタイルの変化球に、と買ったはいいものの、活用しきれない柄スカートも高橋さんマジックでコートとのベストマッチングを実現。

「柄のスカートと合わせる時には、柄のうちの一色をコートとリンクさせるとうまくいきます。このコートは前のボタンを開けて着ても美しいシルエットをキープできるので、中にボウブラウスなどを合わせて胸元をアクセントにしてもいいですよ」

ちなみに淡い色のコートは汚れが目立ちやすくてなかなか手が出ない、という人もいるが、髙橋さんの見解はどうだろうか……。

「このコートのように柔らかで光沢のあるグレージュは、明るくはつらつと見えますし、女性だからこそ着こなせる色だとも思います。袖の内側はやや濃い色になっていて汚れが目立たない仕様になっていますので、“コートはつい暗めの色になってしまう”という人も、この機会にぜひトライしていただきたいですね」

グレージュ
撮影=ササキヨシヒロ

着こなし実例4:休日仕様にアレンジするなら小物がポイント!

「コラボコートをカジュアルに着こなしたい日は、首元にチェックのストールをプラスするのはどうでしょう? 小さめのバッグとグローブなどでさらに遊び心をプラスするのがコツです。また、ストールをファーにチェンジすると一気にエレガントな雰囲気に。バッグもメタリックカラーなどにシフトするだけで自由度が高まります。同じコートでも小物次第で印象は簡単に変えられるんですよ」

さらに高橋さんはベルトもチェンジすることを提案。「コートについている共布のベルトは位置も高く、全身バランスがよく見えるのでこのままでももちろん素敵なのですが、気分を変えるなら手持ちの革ベルトでウエストマークしてみるのもオススメ。メリハリがついてさらにスタイルアップして見えますし、着回し感が出て雰囲気がガラリと変わります」

一見シンプルできれいめのコラボコートだけれど、カジュアルアレンジの可能性も十分!

着こなし実例5:黒コートを華やかに着こなす方法

黒のコートは使い勝手がよく重宝する一方、どこか個性がなく地味に収まってしまうのが悩みの種という人も多い。

「ブラックメインの着こなしが寂しいと感じるときは、少量の差し色と柄でアクセントを意識してみましょう。たとえば赤のグローブとベルトをさし色にしつつ、グレンチェックのストールで同じ黒でも柄で変化をプラス。コートの美シルエットと存在感が際立ちます」

黒のコート
撮影=ササキヨシヒロ

シンプルでありながら洗練度が高く、なんといってもビジネスシーンにおいて管理職にふさわしい装いのコツの数々。今すぐマスターして、仕事もファッションもセンス良くこの冬を乗り切りましょう。

プレジデントウーマン編集部が高橋みどりさんを講師にお招きして開催したオンラインイベント「コートの着こなし方、コーディネート講座」は、こちらから

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