秋篠宮家の長女眞子さまの婚約者・小室圭さんが9月27日にアメリカから帰国した。連日のように、お二人の結婚に関する報道が続いているが、海外のメディアではどのように取り上げられているのか。ジャーナリストの大門小百合さんがリポートする――。
成田空港に到着した小室圭さん。9月27日撮影
写真=時事通信フォト
成田空港に到着した小室圭さん。9月27日撮影

「一時金を拒否してアメリカに渡る」プリンセス

秋篠宮家の眞子さまと小室圭さんが、近く結婚することが明らかになった。眞子様は結婚後渡米し、小室さんと同居するということである。

9月初めにこのニュースが出てから、眞子さまの結婚関連の一連のニュースを報道したのは、日本の報道機関や週刊誌だけではない。同じく王室を持つイギリスのメディアをはじめとした海外のメディアでも話題になった。

「日本のプリンセス眞子は、結婚に伴う国からの一時金を拒否し、アメリカに渡る予定(Japan’s Princess Mako refuses £1m state wedding payment and plans US move)」と報じたのは、イギリスのタイムズ紙だ。他のメディアも、「なぜ、日本のプリンセスは、1億4000万円の一時金を辞退するのか」などの解説記事や「ヘンリー王子とメーガン妃のように、日本のプリンセス眞子も何百万ドルの大金と皇族の称号を愛のために投げうった(Like Harry and Meghan Markle: Japanese princess Mako gave up millions and her royal title for love )」というロマンチックな見出しの記事を出したカナダのウェブメディアもあった。

海外のメディアでも、ここに至った経緯、小室さんのお母さんと元恋人をめぐるトラブル、そして、皇族の女性は結婚したら皇室から離れなければならないという皇室のしくみまで丁寧に報道されていた。今や眞子さまは日本の皇室で一番有名な人だといっても、過言ではないだろう。

相変わらず「隔離された」日本の皇室

その中で気になった言葉がある。アメリカのFox News が、「Unlike royalty in Britain and other European countries, the emperor and his family tend to be cloistered, although they travel abroad and appear at cultural events.(イギリスや他国の王室と違い、天皇と彼の家族は、文化的なイベントで海外に行くこともあるが、世間から隔離されている」と報じた。

この「cloistered」という言葉、実は皇室報道で以前にも使われていたことがある。イギリスのインデペンデント紙が、雅子皇后が皇太子妃だった頃の心労に触れ、日本の皇室をcloistered palace, which is run by ultra-conservative bureaucrats(超保守的な官僚によって運営され世間から隔離された皇室)と表現したのを思い出した。あれから何年たっただろう。しかし、海外のメディアから見たら、世間から閉ざされている皇室の本質はほとんど変わっていないということだろう。

日本に滞在するトルコ人の女性記者、イルギン・ヨルルマズさんも、「ヨーロッパや中東の多くの読者は、眞子さまの話を『古くからの伝統があそこまで若い女性の人生を決定づけてしまう』かわいそうなプリンセスの話ととらえている」と言う。そして、先進国であるにもかかわらず、女性天皇についての議論も含め、国全体として女性が活躍できるような議論が遅々として進まない日本の現状に驚いていると話してくれた。

かごの中の鳥 かごの扉は開いている
写真=iStock.com/francescoch
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ヘンリー王子とメーガン妃が王室を離れた「本当の理由」

さて、今回の報道の中には、「皇室のメンバーが皇室を離れてアメリカ行きを目指す」ということから、イギリス王室のヘンリー王子とメーガン妃と比較したものもあった。

今年3月、王室離脱後初となるテレビのインタビューに答えたヘンリー王子とメーガン妃。アメリカの著名な司会者オプラ・ウィンフリーさんによる夫妻のインタビューでの最大の衝撃は、メーガン妃が長男アーチー君を妊娠中に、王室内で「肌の色がどれだけ濃いのかという懸念、やりとりがあった」と暴露したことだった。

このインタビューによって、2人の王室離脱の理由は、王室の中での人種差別発言をはじめ、メーガン妃に対するさまざまな嫌がらせによるものではないかとされるようになった。また、彼らのことを報道し続けるメディアから隠れたかったのではないかとも言われているが、アメリカに来てからの2人は、メディアを避けるどころか、積極的に取材などに応じている。その点については不可解だとも言われていた。

ダイアナ妃と同じ目に遭わせたくない

昨年8月、ヘンリー王子とメーガン妃について書かれた『Finding Freedom(タイトル仮訳:自由を探して)』という本のペーパーバック版が最近出版されたが、今回のペーパーバック版発売にあたり、著者の1人であるオミッド・スコビーさんが、2人がイギリス王室を離れた理由についてテレビのインタビューに答えている。

2人と親しく、強力な支援者といわれているスコビーさんは、ヘンリー王子とメーガン妃は完全にメディアや公共の場から姿を消したかったわけではないと言う。「2人は、自分たちで何をプライベートにするか、何を世界の人たちとシェアするのかを決めたかっただけ」だというのだ。

ヘンリー王子もウィンフリーさんとのテレビインタビューで、「王室を離脱したかった理由は2つある。サポートが得られなかったことと理解が得られなかったことだ」と答えている。また、その数日前には、別のテレビ番組に出演し、「毒のあるメディアが自分と自分の家族のメンタルヘルスを壊すことから守りたかった」と語っている。

そして、王子が最も恐れていたのは、自分の妻が、母親のダイアナ妃と同じ目に遭うことだったという。1997年8月31日、ダイアナ妃がパパラッチに追いかけられ、自動車事故死したというニュースは世界中を駆け巡った。ヘンリー王子には、「あのままイギリスにいれば、『歴史が繰り返すのではないか』という恐怖」があったという。

もちろん、ヘンリー王子とメーガン妃のイギリス王室における状況と、眞子さまたちの状況は同じものではない。しかし、少なくとも、メディアの執拗しつような批判にさらされているという意味では、似たものを感じてしまう。

ヘンリー王子夫妻と何が違うのか

9月中旬、試しに「眞子さま」とネットで検索してみた。すると、小室さんをバッシングする週刊誌報道の見出しが、これでもかというほど目の前に飛び込んできた。

「小室圭さん母子、“たかり体質”の歴史 知人の厚意を踏みにじり絶縁した過去も」
「眞子さまの嫁姑問題が発生したら…専門家「圭さんは間違いなく母親側に」」
「眞子さま渡米直前に…小室さんの履歴書「虚偽記載」疑惑、就職にそれでも影響がないワケ」
「小室圭さん“緊急帰国”で警備はIOCバッハ会長級 結婚反対デモ強行の恐れも」
「小室圭氏が狙うのは眞子様の貯金1億円?一時金辞退しても「へっちゃら」、予定調和の会見&VIP待遇帰国に批判噴出」

週刊誌やスポーツ紙は見出しで売りたいというのもわからないでもない。しかし、そういう実情を差し引いても、ここまでネガティブな見出しが並ぶと、普通の人は、精神的に病んでしまうのではないだろうか。

まして、これらは、眞子さまが一時金を辞退すると発表した後の報道である。「じゃあ、どうすればいいの?」と言いたくもなるだろうが、お2人はそのお立場上、言い返すこともできない。仮にアメリカに逃げ出したいと思ったとしても、十分理解できる。

また、ハリー王子とメーガン妃とお2人との決定的な違いは、眞子さまと小室さんは、結婚したら皇室から離れることが決まっている点だ。ここまで若い2人をバッシングすることが、逆に眞子さまを完全に皇室から遠ざけることになりはしないだろうか。

皇室のアイドル化と「一億総“親戚のおばさん”化」

なぜこんなことになったのだろう。皇室のメンバーはアイドルでもなんでもないが、戦後、メディアの発達により、特にプリンセスはアイドルのように扱われてきた面があり、それがここまで眞子さまの結婚に関する話題が紛糾した要因の一つでもあると感じている。

以前、私は取材の一環として皇居に行ったことがあるが、敷地内には馬場があり、美智子上皇后さまの結婚式のパレードで使われた馬車なども展示されていた。うっとりするような結婚式のパレードの写真も飾られていた。まさにシンデレラのようなお姫様に国民がアイドルに対するかのような気持ちを持つのも無理はない。雅子皇后さまのご結婚の時も、日本列島は「雅子さまブーム」に覆われた。

皇室の経費は国費で賄われているが、だからといって、国民全員が親戚のおばさんのように、ああでもないこうでもないと、次から次へとこの結婚の善しあしを語る状況はいかがなものだろう。

巨額の手当を辞退した18歳のプリンセス

そんな状況を見ていると、今いらっしゃる未婚の皇室の方々、とりわけ、悠仁さまや愛子さまに縁談話が持ち上がろうものなら、メディアの報道がとんでもないことになるのではないだろうかと危惧しているのは私だけではないだろう。そして、まさに海外メディアが今年初めにこぞって報道した 日本の皇室の「お世継ぎ問題」を、さらに助長することになりはしないだろうか。

ちなみに世界の王室を見ると、国費から支給される手当を受け取らないことにしたのは、実は眞子さまだけではなかった。今年6月、高校を卒業したオランダの王位継承者アマリア王女が、18歳から支給される予定だった年間160万ユーロ(約2億1000万円)の手当を受け取らないことを表明した。オランダ王室では前代未聞のことである。

オランダでは18歳になる王女には手当を受け取る権利が与えられ、この手当は彼女が戴冠するまで支払われることになっている。しかし、アマリア王女は、「私はこの手当に見合うような行動をしておらず、特にコロナウイルスのパンデミックで、他の学生がもっと大変な思いをしている時に、そのような金額を受け取ることには違和感を覚えます」と言って手当の受け取りを拒否したそうだ。

王女は、大学に入学する前の今年秋から2022年春までの1年間、ギャップイヤーという休暇を取ることにし、この間、「世界を発見し」「20年後にはできないだろうことをする」つもりだという。もちろん、手当を受け取らないと決めた背景には、オランダ王室はヨーロッパでもっともお金のかかる君主制だと批判を浴びていたこともあると言われているが、それでも、このZ世代のお姫さまの選択にはたくましいものを感じる。

「専業主婦」が前提なのか

小室さんとニューヨークに行ったら、お金の面でも苦労すると言われている眞子さまだが、国際基督教大学を出られた立派な才女である。今までもお勤めされていたし、働こうと思えばニューヨークでも働けるはずだ。どうも日本の報道を見ていると、小室さんの給料に頼って生活する専業主婦になることが前提になっているように見えるのだが、21世紀の世界の王室が変わってきていることを考えると、日本の皇室を見る私たちの目もそろそろ変えたほうが良いのかもしれない。