安田 愛麻/慶應義塾大学総合政策学部3年生
鈴木 かのん/桜美林大学ビジネスマネジメント学群3年生
國武 那汰莉/立教大学文学部3年生
鈴木 俊太朗/慶應義塾大学法学部4年生
矢追 耕太郎/早稲田大学政治経済学部3年生
土井 大紀/立教大学文学部2年生
青野 弘基/専修大学経営学部2年生
森 慧太郎/青山学院大学地球社会共生学部4年生
山田 智子(仮名)
コロナ禍での開催に冷めた目線
【原田】東京五輪が間近に迫ってきましたが、世論調査によると開催反対の声も多いようです。朝日新聞の5月の調査では国民の8割が、6月の読売新聞の調査では5割弱が中止を望むと答えました。そこで若者の意見を知りたいんですが、皆さんは開催についてどう思っていますか?
【國武】私は五輪そのものには興味がありますが、コロナ禍でやるのは反対です。パンデミック中に開催して感染が広がるのはよくないし、来日した人がウイルスを持ち帰ったりしたら日本のイメージが悪くなっちゃいそう。そもそも皆ワクチンを打てていない状態なのに、どうやって感染を防ぐのか、具体的な説明もないですよね。それに、お祝いムードじゃない中で開催されたら、盛り上がるより冷めた目で見てしまいそうな気がします。
【森】スポーツは大好きですが、今回の五輪はやるべきじゃないと思います。僕は五輪と言えば4年に一度のお祭りというイメージなんですが、コロナ禍で無理に開催したらお祭りにならないし、今は平和じゃないから平和の祭典にもならない。開催されても、僕はきっとこれまでの五輪とは別モノとして捉えちゃいますね。コロナが終わってから、しっかりお祭りとしてやってくれたほうがいい。今のままじゃ選手だけの五輪になってしまう気がします。
【鈴木かのん】私も反対です。もともとスポーツ観戦に興味がないので、五輪にもあまり関心がありませんでした。でも、最近は開催するかどうかかなり議論されているので、それで少しずつ興味を持ち始めています。
そもそもスポーツに興味がない
【山田】スポーツ観戦には私も興味ないです。開催に関しては、五輪に伴って他のイベントとかも盛り上がるならやりたいですけど、無観客でただテレビで観戦するだけだったらやっても意味がない気がします。お店が開いて、皆で楽しく応援できるなら興味が持てるかも。
【矢追】僕もスポーツ観戦に興味がないので、観客がいる、いないに関わらず東京五輪には全然関心が持てないです。でも、コロナ禍でやるのは反対。外国の人がたくさん来るわけですよね。ラグビーW杯の時は、電車の中で大声で騒いでいる外国人をたくさん見かけました。今回もルールを守る人ばかりじゃないだろうから、感染拡大が怖いです。
【鈴木俊太朗】僕もスポーツや五輪にはあまり関心がないです。だから、普段なら開催してもしなくてもどっちでもいいんですが、今は感染拡大のリスクがあるから反対です。この時期に五輪に人手やお金をかけるのもおかしい。開催されたら医療従事者が会場に行かなきゃいけないですよね。その時間でもっとワクチンを打てるかもしれないのに。五輪を中止すれば、人もお金も時間も、もっと感染拡大防止に使えるんじゃないかと思います。
「開催してほしい」は9人中1人だけ
【土井】僕は開催してほしいです。ずっとスポーツをやってきたので選手の思いにはすごく共感しますし、東京五輪も楽しみで、実際にバスケットとバレーの観戦チケットを持っています。アスリート目線で見ると、4年に一度ってえげつなく少ないチャンスなんですよ。選手自身が自分の判断で出場を辞退するならいいですが、出場したい選手がいることを考えたら、その人の人生の証しとしても開催されるべきだと思います。もちろんコロナは心配なので、無観客開催が一番現実的でいいのかなと。
【安田】私も開催には否定的ではないです。でも、そもそもスポーツ観戦にあまり興味がないこともあって、五輪はリアルイベントというよりも携帯やテレビで見るものって感じ。だから無観客でやっても、中継さえしてくれたらそれなりに盛り上がる気がします。そうすれば感染者も増えなくていいのかなと思いました。
【原田】お金の面で言うと、開催するよりも中止するほうが、キャンセル料などでコストがかかるとも言われています。それについてはどう思いますか?
【鈴木俊太朗】そもそも開催と中止のどちらがよりコストがかかるのか、その情報が僕たちに提示されていない気がします。そこがしっかり議論されていると思えないので、その点も含めてやっぱり開催には賛成できないですね。
日本人選手が活躍しても成功には終わらない
【青野】日本では、5月に飛び込みのW杯が開催されましたよね。海外から200人以上の選手が来たと思うんですけど、ホテルに缶詰状態で食事も思うようなものがとれなくて、選手たちから不満が出たっていうニュースを見ました。今の状態で五輪をやってもきっと同じような不満が出るだろうし、僕たちの感染への不安も大きくなるだろうから、絶対に成功には終わらないと思います。だから、自分としては最近は否定的な気持ちが強いです。五輪は日本のよさを発信する機会のはずなのに、こんな状態じゃ嫌いになって帰る人が多いんじゃないかな。
【原田】皆さんの答えはちょっと予想外で驚きました。積極的賛成派は土井くんだけで、ほとんどの人は反対だと。スポーツや五輪自体に興味がない人も多いようですが、それが今の若者の傾向なのかな。アスリートの多くは若くて皆さんと同世代だから、共感度や期待値もそれだけ高いのかと思っていました。土井くんは皆さんの「反対」という意見を聞いてどう思いますか?
なぜ五輪のイメージが悪いのか
【土井】率直に言って残念です。何でこんなに五輪のイメージが悪いんだろう。本来はスポーツの祭典なのに、背景に経済とか政治とかが見えてきちゃうからかな。だからネガティブな印象が強いのかなと思います。僕としては五輪=アスリート主体っていう気持ちが強いので、まず選手の「出たい」という思いを大事にしたいです。
【國武】確かに、選手にとっては一生に一度の機会かもしれないから、それがなくなってしまうのはすごくかわいそうだなと思います。それでも、五輪はコロナが終わってからにしてほしい。感染して亡くなってしまう人もいるので、選手には今は我慢していただけたら。私としては「選手がかわいそう」より「コロナ怖い」っていう気持ちのほうが勝っています。
【鈴木かのん】自分も含めて周りは「五輪反対」という声ばかりだったので、土井くんの意見を聞いて初めて選手の方々の思いを知りました。でも、かわいそうだなとは思うけど、もし選手が感染して万が一にでも亡くなったりしたら……。次の五輪を待てば出られる可能性があったかもしれないのに、それすらなくなってしまいますよね。無観客でも選手や記者が集まるから感染のリスクはあるし、ワクチンを打ったから大丈夫とも言い切れない。選手の方々の健康や今後を考えると、やめたほうがいいっていう気持ちは変わらないです。
【矢追】僕も同じです。選手にとっては一生に一度の機会かもしれないからかわいそうだとは思いますが、開催したことで感染が広がって誰かが亡くなったりしたら、「五輪のせいで亡くなった」ってことになる。それじゃいくら選手が活躍しても気持ちよく終われない。今回は自粛すべきだと思います。
政治の暴走を感じる
【原田】やはり若者の間では反対という声が多そうですね。朝日新聞の5月の世論調査では、国民の8割が反対していました。実は8割って、政権支持率でもマーケティング調査でもめったに出てこない、すごい規模の数字なんですよ。読売だと5割弱なので新聞社によって調査結果に違いがあるのだけれど、いずれにせよ政治家たちはずっと「絶対開催する」と言い続けている。こうした政治の世界に対してはどう思いますか?
【國武】結局、お金のための五輪なのかなって。私たちを勇気づけるためじゃなくて、キャンセル料やコストなんかが心配だからやるんだろうって思っちゃいます。
【土井】僕は賛成派ですが、それでも反対の声が多いのに強行開催するのはおかしいと思います。国会は民意の代表であるべきなのに、政治が暴走していると感じますね。多くの人が望む形になるのがいちばんだと思います。
なぜ開催するのか、きちんと説明してほしい
【森】開催するかしないか、観客を入れるか入れないかって、もうずっとニュースでやっていますよね。それは政府が議論しているからなんだろうけど、正直、どこに向かって議論しているのかが僕たちにはよくわからない。お互いが意見を持っているのに、それが通じ合わないままここまで来ている印象です。開催するならするで、明確な理由をきちんと提示してほしい。そうすれば僕たちの意見も変わるかもしれないのに。
【安田】中止した時の違約金や選手の気持ちを考えると、議員の人たちも板挟みだと思うので、正直かわいそうだなって気がします。でも、もう現実的に考えてやるしかない状況まで来ちゃってる。それだったらそれで受け入れるから、万が一の時にどう対処するのかだけはっきり説明してほしい。最低限そこだけやってくれればいいかなって思います。
不信感はぬぐえない
【原田】でも、お金がかかるかもしれないとはいえ、中止や延期を決定するタイミングはこれまでにいくつもありましたよね。
【安田】そう考えると、開催するしないを判断する時期が遅いですよね。そこに対しては不信感があるかな。
【原田】若者たちも、今回の五輪には政治やお金の問題を感じているようですね。コロナ禍に加えてそうした思いもあって、反対派が多くなっているのかなと思いました。もともとスポーツや五輪に興味がない人もいるけれど、興味がある人も「国民の声が届いていない」「説明がきちんとされていない」と感じている。ただ、事態はもう開催前提で進んでいるようです。では実際に五輪が開催されたら、若者たちはその期間をどう過ごすつもりなのか。次回は、その点について聞いていきたいと思います。