経費精算や確定申告など、面倒なお金の作業に追われる時期です。そろそろやらなきゃと思いながら、ついあと回しにしがち。いつまでもToDoリストに残っているのを見ては、ため息をついている人も少なくないのではないでしょうか。そんな気の進まない仕事をさっさと片づけるコツを、精神科医の井上智介先生に教えてもらいました――。
経費を計算する女性の手元
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動き出せない人の3パターン

ToDoリストにあるけれど、どうしても残ってしまう、いわゆる面倒な仕事は誰にでもあるものだと思います。

そもそも、その仕事が面倒なのは、やらなければならない「ミッション」になっているから。個人が組織に対して果たすべき使命といった意味合いが強く、「やらなきゃいけない」という義務感が強くてなかなか取り掛かれない。考えを巡らせすぎて、動けなくなってしまうのです。動けなくなる人に多いのが次の3つのパターンです。

(1)試行錯誤することがいいことだと思っている

ああでもない、こうでもないと考えているけれど、時間ばかり過ぎて、目の前のことは手つかずというパターン。

(2)効率的に終わらせることを求めすぎている

面倒くさいからこそ効率的にやりたいと、いろいろな情報やツールを集めて、結局、何も進んでいないというパターン。

(3)失敗したくないという思いが強すぎる

最初からつまずきたくない、スムーズに終わらせたいという思いが強すぎて、なかなか取り掛かれないパターン。

気の進まない仕事に取り掛かるときは、まずこの3つの考えを捨てること。そして、そういった「ミッション」を、だましだまし、少しずつでもやりたいなという「パッション」に変えていく必要があります。

パッションと聞くと、どこか前向きなイメージがありますが、ここでいうパッションとは、「やりたい」というより、「ほおっておくのが気持ち悪い」というイメージ。ある意味、自分でほうっておけないほどの“気持ち悪さ”をつくることが重要になってきます。

ToDoリストに「経費精算」と書いてはいけない

もともと人間の脳は、スペースを有効活用するために、情報をひとくくりにして、まとめて保管しています。たとえばToDoリストに「経費精算」とあったとしたら、これがひとくくりのまとめです。

しかし、その中には、

□ 領収書を集める
□ 領収書の金額を精算書に入力する
□ 精算書を上司に渡して承認を得る
□ 経理に精算書を渡す

……など、こまかい作業がたくさん詰まっています。

これらをまとめて「経費精算」とすることは、脳にとってはメリットがありますが、めんどうくささは増えます。仕事が重く面倒に見えてしまうのです。

ToDoリストを書き出す手元
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「領収書2枚分を入力する」からスタート

この面倒くささを少しでも減らして手をつけやすくするには、とにかく細分化すること。すぐできる行動に細かく分けて、ToDoリストに落とし込んでいくのが正解です。

ですから「領収書の金額を精算書に入力する」なら、「2枚分入力する」あるいは「3月分を入力する」など細かく区切る。一つひとつクリアしている、進んでいる感覚をつくったうえで、中途半端なまま終わる気持ち悪さ、早くやらなくては嫌だという感覚を持てるしくみをつくるわけです。

優先順位を決める前に少しだけ始める

そもそも、このToDoリストに残ったままになっている気の進まない仕事というのは、優先順位の低いもの。まだやらなくてもいいやという内容のものがほとんどです。逆に言うと、優先順位を決めているから、どんどん後回しになって残っているわけです。ですから、こういう面倒くさいことほど、優先順位をつける前にやってしまう。仕事が始まると当然、締め切りのある仕事から先にしたくなりますから、その日の仕事の優先順位を決める前、朝いちばんにやることをおすすめします。

「朝いちばん、20分やる」と決めておけば、細分化したタスクが一つか二つ、消えるでしょう。20分では終わらないから、気持ち悪さも残る。他の業務に移ってからも気になるほど気持ち悪さが高まり、「早く終わらせたい」と思えればしめたものです。それにたとえ、領収書を2枚しか入力しなくても、それでも実質2枚は減るわけですから進んでいます。それを御の字という感じでやっていくことが、だましだましやっていく方法なのです。

仕事ができる人ほど、後回しにしがち

実は優先順位をつけるのがうまい人ほど、こうしためんどうな仕事が進まない傾向があります。重要な仕事に時間を注いでいるからこそ、そうではない仕事に手が回らないわけです。だから仕事ができる人ほど、優先順位をつける前にやってほしい。細分化してできるところからやっていくだけですので、始めてみると意外に早く終わりますよ。どんなに仕事で成果を上げていても、経費精算などの面倒な作業を後回しにすることで、経理部に迷惑をかけたり、だらしない印象を与えたりしてしまうことは、大きな損になります。とにかく「朝いちばんに20分だけ」手をつけてみることをおすすめします。

ルーズな人には期限をつける

気の進まない仕事は誰にでもありますが、部下や同僚が依頼した仕事を進めてくれないせいで、こちらが困ることもあります。その場合の対策として有効なのが「期限を決める」こと。

たとえば、いつも締め切りに遅れる人には「○月○日まで」と伝えて、それが守れなかったら、こちらの意向で進めるなど、何かしら条件をつけておくのがよいでしょう。それで相手が不利益を受けても、反論する資格はないという約束のもとで行うのは、ルーズな人に対するよくある手法です。

またギリギリにならないと、おしりに火がつかないという人もいます。そういう人は段階的に締め切りを分けたほうがよいでしょう。ギリギリ最後に全部もってこられるよりは、細かく見せてもらったほうが、修正も早くできて、お互いにメリットも多いので、そういう指示の出し方をするのもありでしょうね。