※本稿は、Joe『私を振り回してくるあの人から自分を守る本』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。
「威圧感」で心地よい距離感を保つ
今回は、普段からできる、威圧「感」のまとい方の具体的戦術をご紹介していきます。
ここで言う「威圧感」は、他者を脅したり、喧嘩を売ったりする「威圧という行為」のことではありません。
日常的な人間関係の中で、あなたと一体化するほど近づいてくる相手を押し返したり、支配するほど癒着してくる相手を引き剥がしたりして、あくまでも「単独者」同士、心地よい距離感を維持していくために普段からまとう、威圧「感」という名のオーラなのです。
気づかれないくらいの「ほどよい威圧感」を
したがって、この、日常的にオーラとしてまとう、威圧「感」というものは、なるべく相手に対して露骨ではなく、また、なるべくあからさまではない、「ばれない威圧感」であるほど好ましい。可能な限り、相手がそれに気づかないまま、実はあなたから上手く押し返されている、そういう、ばれない威圧「感」がまとえれば、あなたの「優しさ」との合わせ技によって、争いごとに発展させることなく、相手との間に、心地よい、継続的な「平和な関係」を作っていくことができるのです。
そこで、日常の様々な人間関係において使える、「相手にばれない威圧感のまとい方」の具体的なテクニックをご紹介していきます。身につけておくと、他者から振り回される機会は激減すると思われますので、ご自身が使いやすいと思うものから状況に合わせて使ってみてください。
1.真剣に聞いているフリ作戦
まずは、人の話を聞く際の基本的な態度からいきましょう。
「真剣に聞いている」という建前を使うと、相手にばれずに、威圧「感」をまとうことができます。
ポイントは次の3つです。①口は閉じ、②目つきは鋭く、③小さくうなずきながら、真剣な表情で相手の話に耳を傾ける。想像してみると「怖い表情」が浮かぶと思いますが、あなたが相手を威圧しているとはみられません。
確かに相手は、あなたからの威圧感を感じ、話しづらくなるかもしれませんが、それはそもそも、あなたがその人の話を真剣に聞いてるからこその、その雰囲気(という建前)なので、相手はあなたの威圧感に圧倒されても、その姿勢を止めろとは言えないのです。
なぜなら、それを言ったら、あなたは「え? 真剣に聞くのがダメってこと?」となってしまうから。
そのように仕向けるコツは、③の「小さくうなずく」で「ちゃんと話を聞いていますよ」というサインを送ることです。そうすることで、全体の印象として、「真剣に耳を傾けるあまり、威圧的な表情と雰囲気になってしまっているだけの人」という印象になるので、相手はあなたを責めることができないのです。
うなずく合間に表情の変化を入れてみよう
応用編として、うなずく合間に「ん?」という顔を入れるのもいいでしょう。よりリアルに「真剣に聞いてる」風が演出されます。
こういう態度で話を聞かれると、相手は、気軽に話しかけにくくなるのです。
そうすると相手は、たとえば、自分の話を聞かせたいだけだった場合は早々に切り上げ、面倒なことを押し付けようとしていた場合は「ま、いいか……」と引き下がる、という具合に諦めざるをえなくなります。
そうなったらあなたは、多くを語らず、口を閉じたままニコッと微笑んで立ち去ればいいのです。相手は「威圧されていたわけではないよな……」と頭では思いながら、心の底では威圧感を感じます。
このように、相手の反感を招くことなく、何となく相手をやりづらい気持ちにさせて勝手に引かせてしまう。それが、この「真剣に聞いている」風に耳を傾ける術の効能です。
2.声ではなく「目」で応答作戦
たとえば、難しい顔をしながら集中しているときに、ふと誰かに呼びかけられた場合、そこで「はいはい?」などと声を出して俊敏に反応すると、それまで漂っていた威圧「感」が消えてしまうかもしれませんね。
なのでそういうときは、「声は発さず、目線だけで応答する」というのをやってみましょう。口は閉じたまま顔を上げて相手と目を合わせ、眉毛をキュッと上げてニコッとする。最後まで口は閉じたまま。ビッグスマイルではなく、あくまでも「ニコッ」です。
つまり、声ではなく目つきで「(何か用ですか?)」と問いかけるということです。こうするだけで、相手に対して「クールで魅力的な人」という印象を与えることができます。仮に本当のあなたが、実は暑苦しく落ち着きのない人であったとしても、その動きをすれば、誰でもその印象になります。この戦術は、誰かに呼びかけられたとき以外にも使えます。
たとえば、受け取るだけの書類(社内の回覧板など)や、不在中にかかってきた電話の伝言メモを誰かが持ってきてくれたとき。
声は発さず、口は閉じたまま顔を上げ、眉毛をキュッと上げて「ニコッ」――これは声ではなく目つきで伝える「(ありがとう)」になります。
この方法の最大のポイントは、ご覧のとおり、「声を発しない」ことです。
なぜ、これが効果的なのか。それは、無駄に声を発しない人からは、「自分の気持ちを分かって貰いたい」という過度な承認欲求が表現されず、「知的で主体性がある」=「自分をもっており、人の言いなりにならない単独者」という印象を与えるからです。
口数の多い人ほど「振り回され体質」に
人からの問いかけに、「はい、はい、ああ、そうですか、そうですか、はいはい、はい」などと無駄な音声を発してると、主体性も自信もないオドオドした印象を作り出し、人を振り回すタイプの人のセンサーに引っかかってしまいます。
おそらく、今まで振り回されてきた人の多くは、無意識のうちに、必要以上の音声を発してきているのではないでしょうか。
そうなっていると思われる人は、今後の言動を変える一手段として、時々こういう作戦を取り入れてみてください。
これをしていると、あなたの内面にも変化が起こります。声を出さずに目だけでコミュニケーションをとる、そんなへりくだりも媚びもしない姿勢で他者に接しているにもかかわらず、他者からはちゃんと好意的に受け入れられる自分、そんな自分の自己意識が、あなたの自信を作ります。
そしてその自信が、いっそう「主体性のある一個人」、つまり「単独者」としての存在感を作り出し、さらに振り回しにくいオーラが醸し出されるようになるわけです。
3.集中しているフリ作戦
何かに集中している人は「邪魔しちゃいけないかな」と感じさせられ、近寄りがたいものですね。その作用を活用するのが、この作戦です。
まず、職場だったら手元の書類、プライベートだったらスマートフォンなど、何でもいいので、とにかくそれらを見ながら、軽くため息をついたり、小さく首を傾げたり、少し舌打ちをしたりします。手元の書類の内容やメールのやり取りに対して怒っているかのような表情で。
こうするとあなたが醸し出す空気は威圧的になりますが、それだけだと、印象が悪くなりすぎるかもしれません。
「威圧感」と「優しさ」を瞬時に切り替える練習を
なので、その威圧的な表情から、ふと顔を上げ、相手と目が合ったら、一瞬ニコッと微笑みかけ、またすぐに目だけを手元に戻し、次第に表情も、元の「なかば怒っているような険しい顔」に戻す。こうすると、優しさと威圧感のバランスがとれ、「クールだが優しそうな人」という印象が作れます。人は一般に、このように「威圧感」と「優しさ」を、瞬時に切り分けられる人に知性を感じ、信頼する傾向にあります。
なので、普段から時々こういう、優しさと威圧感の滑らかな切り替えを、周りの人にちょこちょこ見せておくと、あなたは周りの人から、「『自分』というものがある、自立した人」という印象を持たれ、したがって「振り回しづらい人」という評価もされやすくなります。
そうなれば、今まであなたを振り回していた相手も、だんだんとあなたをその対象から外すしかなくなり、自ら距離をとるようになるでしょう。
難しい顔でスマートフォンを見つめたことは、誰にでもあると思いますので、そのときの自分を思い出しながら演じれば、それほど難しい作戦ではないはずです。