モラハラ対策カウンセラーのJoeさんは、「他者に振り回される人ほど、自分の心を開け放ちすぎている」と断言。人に優しく、いつもニコニコし、口数の多い人ほど、気づけば他人のペースに巻き込まれてしまうのです。他者のマウントから身を守るために何ができるでしょうか——。

※本稿は、Joe『私を振り回してくるあの人から自分を守る本』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。

アジアのビジネスウーマン
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付け入る隙を見せないためには

振り回されない人になるベースは、「相手より一段上にいる」という意識です。

あなたが何か入ったボウルをもって、相手と向き合っていると想像してください。相手より一つ下がると、相手に見下されてボウルの中身も丸見えになります。でも、相手より一つ上がると、相手はあなたを見上げることになり、しかもボウルの中身も見えなくなりますね。

したがって、「相手より一段上にいる」意識をもつというのは、相手から見えない「影の部分」を演出するということ。これは「防御のための威圧感」のベースとなる意識なのです。

すると、まさに防御といったとおり、自分の心に「バリア」のようなものが作られ、相手は土足で踏み込んでこられなくなります。

一段上から優しさを見せると「尊重」されるようになる

それだけではありません。

「相手より一段上にいる」意識をもって「影の部分」を演出した状態で、「優しさ」を差し出すと、相手はあなたを尊重するようになるのです。

心のままに付き合える相手ならばいいのですが、とくに自分を振り回す相手に対して、心を開け放った状態で接すると、相手は容赦なくあなたの心に入り込んできてマウントをとります。振り回しにかかるのです。

赤ちゃんのかわいさの元は、すべてを開け広げた包み隠さぬ無邪気さですよね。それは、あくまでも、未熟で保護を必要とする赤ちゃんだから、有効なだけです。いい大人がすべてを見せて愛されようとするのは、人間関係の戦略として、相当に厳しいと言わざるを得ません。

というわけで、「相手より一段上にいる」意識が基礎中の基礎。その意識を作るために、普段から、次のルールを実践してみてください。

「ニコニコ」ではなく「ニヤニヤ」する

「ニコニコ」というと、いいことのように思えるでしょうが、自分を振り回す人がいる環境では、付け入る隙を相手に与える表情と心得ておいてください。

なぜなら、「ニコニコ」とは、「敵意はありません」「親しくしてください」「受け入れてください」「褒めてください」などと相手に媚び、下から近づこうとしている印象や、共感を示して相手とつながろうとしている印象を与えるからです。

媚びにせよ共感にせよ、そんなあなたを受け入れるかどうかは、相手次第ですから、相手が「主」、自分が「従」という主従関係になっても不思議はありません。

相手はあなたのことを「振り回していい人」と捉え、実際に振り回そうとするでしょう。そして「ニコニコ」しているあなたは、自分を振り回そうとする相手のエネルギーに抗えず、いいように振り回される。人間関係の主導権を失ってしまうわけです。

では、「ニコニコ」に取って代わるべき「ニヤニヤ」とは、どんな表情でしょうか。

今、説明してきた「ニコニコ」を「弱者の微笑み」「相手に見てもらう者の微笑み」と呼ぶならば、「ニヤニヤ」は「強者の微笑み」「自分が見ている者の微笑み」です。

誰に見られるためでもない、人なんて気にせず、何が起きても動じない、余裕の表情だと思ってください。

オフィスカジュアルスタイルの女性が微笑む
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「ニヤニヤ」は主体性のある微笑み

自分が人や物事を見ている(あるいは思い浮かべている)。その自分自身のなかで何か愉快なことやおもしろいことがあって、ひとりで笑みを浮かべている。主体性のある微笑み、といってもいいかもしれません。

何が楽しいのかは傍からはわからないかもしれないけれど、「なんだか、いつも楽しそうな人」「自分の世界がある人」。そんな感じが出るのが「ニヤニヤ」です。

だからニヤニヤする人は、感情が丸見えでない、影の部分がある「単独者」としてその場に存在できるのです。

ポイントは「主体性」を意識すること

ここまで読んで、「ニヤニヤ」という表情の作り方がわからない、あるいは「ニヤニヤ」するなんて嫌だ、と思った人もいるかもしれません。

Joe『私を振り回してくるあの人から自分を守る本』(WAVE出版)
Joe『私を振り回してくるあの人から自分を守る本』(WAVE出版)

結論からいうと、ここでもっとも重要なのは「ニヤニヤする」という意識「自分は今、ニヤニヤしてるんだ」という感覚です。逆にいうと、「私はニコニコしているのではない!」と自分で感じられていることが、このメソッドの重要ポイントです。

なので、実際の表情自体は「ニコニコ」とあまり変わりません。

「主体性のある微笑み」という意識――「誰に見られるためでもなく、自分のなかで何か愉快なことやおもしろいことがあるから、ひとりで笑みを浮かべているだけのことだ」ということを「意識」する。

すると、それほど大きく「ニヤニヤ」しているわけでなくても、あなたがまとう雰囲気自体が「強者の微笑み」になるのです。誰もあなたの心に土足で踏み込むことはできなくなり、人間関係の主導権も取り戻すことができます。

このように意識、感覚がもっとも重要なのですが、振る舞いのコツを挙げるとしたら、目線は真っ直ぐか、それ以上にすること。下を向いて上目遣いにニヤニヤすると、嫌な感じになる場合があります。

「目線は真っ直ぐか、それ以上」と心がけると背筋も伸び、いっそう意識から強者になれるでしょう。

また、ニヤニヤは必ずしも大きく笑う必要はありません。まずは歯を見せない「ニヒルな微笑み」から始めてみましょう。

レッドカーペットを歩くスターは「ニヤニヤ」のプロ

変わった戦術だと思ったかもしれませんが、実のところ、「ニヤニヤ」は万能といってもいいくらい効果の高い戦術です。

「ニヤニヤ」していると、それだけで周りの目には「堂々とした個性のある人」に映り、決して哀れに思われることもありません。それどころか、そんなあなたに魅力を感じ、憧れる人も少なからず現れるでしょう。

最初は意識が必要かもしれません。でも、このように効果は絶大ですから、まず、やってみてください。「人前でニヤニヤしてもいいんだ」と思えれば、その思考も自信につながり、心を強くしてくれます。

「ニヤニヤ」がイメージしづらい人は、各国の映画祭などでレッドカーペットを堂々と歩く俳優たちを見てみてください。彼らは基本的に「ニヤニヤ」しています。「ニコニコ」はしません。自分に「自信」のある人は、自然と「ニヤニヤ」になるものです。

この認識をもった上で、練習をしてみましょう。

芸能人でも映画の主人公でも誰でもいいので、とにかく心に余裕のありそうな人がいつも浮かべている不敵な笑み。周囲にまったく媚びておらず、ただ自信や尊厳を感じさせる微笑み。まさしく「強者の微笑み」を、テレビや映画で目にする人たちからインストールして振る舞っていると、その人たちの心の余裕が、あなたの心にもコピーされていくはずです。