18年にわたって、連続増収を更新する武蔵野。ここで新人賞を受賞した女性社員3人は、何がほかの社員と大きく違っていたのでしょうか。目標達成のために、こだわり抜いたポイントとは――。

※本稿は、小山 昇『社長、採用と即戦力の育成はこうしなさい!』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

新人賞を受賞した「3人の逸材」の共通点

わが社は、新卒も中途もチャンスは平等に与え、結果で区別する会社です。

小山 昇『社長、採用と即戦力の育成はこうしなさい!』(プレジデント社)
小山 昇『社長、採用と即戦力の育成はこうしなさい!』(プレジデント社)

したがって、新人でも頑張ればすぐに課長になれるし、ベテランでも頑張らなければ一般社員に更迭されます。

マーケティング事業部の日高歩美(2017年入社)、ライフケア事業部の齋藤由莉佳(2018年入社)、メリーメイド事業部の深井玲那(2019年入社)の3人は、入社1年目に新人賞(新卒社員、中途入社社員の中で優秀な成績をおさめた新人に与える賞)を受賞しています。

齋藤由莉佳は入社2年目で部長代理に、深井玲那は1年で課長に昇進した逸材です。新人賞を受賞したこの3人には、大きく「2つ」の共通点があります。

【新人賞を受賞した社員の共通点】
①数字の意識が高い
②周囲を巻き込む力がある

①数字の意識が高い

やみくもに仕事をしても、結果を挙げることはできません。結果を残すためには、「目標」とする数字を持つことが大切です。目標とする数字が決まれば、「その数字を達成するために、何をすべきか」「やらなければいけないことと、やめるべきことは何か」が明らかになります。

日高歩美は入社時メリーメイド事業部で、「1年間の売上目標から逆算して月の目標を決め、それを実行する」ことに腐心したと話しています。

「数字の目標をつくってその数字を常に追いかけていました、もちろん、目標を達成しない月もありました。達成しなかったときは、来月は、こういうふうにしてみよう」とやり方を変え、軌道修正をする。挫折しそうになったこともありますが、それでも『必ず目標は達成できる』の思いを持ってコツコツやっていきました。その結果として、『新人賞』をいただけたのではないでしょうか。目標と現実の差を見据え、改善を続けたことで、数字から逆算して考える習慣が身についたように思います」(日高歩美)

ライバルの数字も毎日チェック

齋藤由莉佳も入社時メリーメイド事業部で、「自分が新人賞をいただけたのは、数字を意識した結果」と自己分析しています。

グラフ
写真=iStock.com/Yok_Piyapong
※写真はイメージです

「新人賞につながった理由を自分なりに考えてみると、『誰よりも数字に対するこだわりが強かった』ことだと思います。自分の数字とライバル(同じ事業部の先輩社員)の数字を毎日チェックして、『ライバルに差をつけるにはどうしたらいいか』『自分に足りないものは何か』を考えながら仕事をしていました」(齋藤由莉佳)

日高歩美は、前年度までの記録(新人賞を受賞した社員の数字)を塗り替えて、新人賞を受賞しました。その日高の数字を上回り、新人賞を獲得したのが、齋藤由莉佳です。

先輩が、新人時代の自分の数字を上回るように指導する

齋藤由莉佳の数字は、「この先、抜ける新人はいないのでは」と思えるほどの好成績でした。ところが、その記録もわずか1年で抜かれてしまいます。深井玲那が齋藤の数字を上回った。深井は、「大きな目標を小さな目標に細かく落とし込んでいった」と話しています。「齋藤さんの数字を超えるために、1カ月でどれくらいの売上が必要かを計算し、週割りにして、さらに日割にして、どんどん数字を小さくしながらクリアしていきました。目標を達成できないときは、先輩にアドバイスをもらうこともありました」(深井玲那)

悩む深井にアドバイスを与えていたのが、深井が目標とする齋藤由莉佳でした。じつは、「齋藤由莉佳が新人賞を獲れるようにアドバイスしたのは、日高歩美」で、深井玲那が新人賞を獲れるようにアドバイスしたのは、齋藤由莉佳」です。

つまりこの3人には、「日高歩美→齋藤由莉佳→深井玲那」という先輩後輩の関係が成立しています。日高も齋藤も、「自分の数字を上回るための方法を後輩に教えていた」ことになります。

「自分の記録は超えられたくない」「自分が一番でいたい」と思う人が多い中で、日高も齋藤も、「後輩に、自分を超えてほしい」と願った。その理由を齋藤は次のように話しています。

「深井さんには、私の月ごとの数字を開示して、『ライバルの数字だけではなく、私の数字を毎回超えるように』と指示させていただきました。高い目標を設定したほうが、その後の成長につながるからです。私自身、日高さんの数字を目標にしたから、上を目指す気持ちになれたのは間違いありません(齋藤由莉佳)。

②周囲を巻き込む力がある

新人賞の評価は、個人の成績のみならず、所属する部門の成績とも連動しています。したがって、周囲の協力が不可欠です。周囲の協力を得るために大切なのは、次の「2つ」です。

リーダーシップ
写真=iStock.com/peshkov
※写真はイメージです
1「新人賞を獲りたい」と公言する

「新人賞を獲りたい」と前向きな姿勢を見せなければ周囲は協力しません。新人賞を獲ろうと頑張っている新人と、そうでない新人がいたら、周囲は間違いなく、「頑張っている新人」を応援します。

2パート・アルバイトを大切にする

全従業員のおよそ3分の2は、パート・アルバイト・派遣社員(非正規雇用のスタッフ)です。支店・部門の成績を上げるには、パート・アルバイトの力が欠かせません。そのためには、「社員が上、パート・アルバイトは下」の上下意識をあらため、パート・アルバイトを尊重する姿勢が大切です。

深井玲那は、「パートさんと笑顔で接することを心がけていた」と話しています。

「齋藤さんから『パートさん、アルバイトさんは、私たちより長く仕事をしている先輩で、先輩の言うことを必ず聞くように』と教えていただきました。ですから、日々の人間関係の中で、パートさん、アルバイトさんに協力してもらえる態勢をつくることを常に意識していました。感謝の気持ちを忘れず、笑顔で接することを心がけました。齋藤さんも、日高さんも、私と同じ『ケア事業部メリーメイド立川』出身です。パートさんから『深井さんも、新人賞を狙っているんでしょ(笑)』と声をかえていただけたので、協力してもらいやすい環境だったと思います。新人賞を狙うのは、立川の伝統みたいな感じになっていますね(笑)」(深井玲那)