営業コンサルタントの菊原智明さんは、「飛び込み営業が減少した今、アポイントの成否を握るのがメールです」と、メールの重要性を指摘します。開封されるかどうか、返信してもらえるかどうか、その明暗を分ける“メールの第一印象”は、どうすれば改善できるのでしょうか――。

※本稿は、菊原智明『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)の一部を抜粋したものです。

ノートパソコンで文書作成する女性の手元
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開封されずに消去されるメールの文面

働き方改革やコロナ禍に関係なく、最近は「飛び込み営業」をめっきり見かけなくなりました。

その代わりにどんどん増えているのが、メールでの面談依頼です。

私は自分のホームページにメールアドレスを公開しているため、毎日のように面談依頼のメールが届きます。実際にいくつかのメールに返信して面談を行っていますが、何しろ数が多いので、ほとんどのメールは開封せずに消去してしまいます。

もしかしたら、私に必要なサービスや商品かもしれませんが、なかなか開封して読む気にはなれないのです。なぜかというと、“数うちゃ当たる”の精神でメールを送っているからです。

よくある(ダメな)メールの例

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よろしくお願いいたします。

上に挙げたのはよくある(ダメな)メールの例ですが、このような内容でメールを送られても返信する気になりません。

一斉にメールを送るほうが効率は悪い

それだけではありません。私が消去するまでもなく、メールの件名によっては自動的に迷惑メールに振り分けられてしまうこともあります。

ですから、次のことに注意してメールを送る必要があります。

・あおるようなメールの件名にしない
・すぐに反応を求めようとしない
・送り主を明確にする など

リモート営業というと、どうしても「一斉にメールを送るほうが効率はいい」と考えがちになります。

しかし、リモート営業で結果を出すためには、“数うちゃ当たる”は通用しません。

ノートパソコンでメール受信トレイのチェック
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「見込み顧客リスト」をもとに一斉配信メールを送っても、お客様は見向きもしないからです。

運良くお客様に開封されたところで、メールの文章を見た瞬間「ああ、コピー&ペーストだな」とバレてしまいます。そうすればすぐに消去されますし、迷惑メールに登録されてしまうでしょう。

“数うちゃ当たる”といったやり方ではなく、お客様にピンポイントでアプローチするほうが結果は出ます。

思わず返信したくなるメールの文面

先日、私に届いたアポ取りメールの中で「これはやるな」と思い、返信した好例を紹介します。

そのメールには下記のような内容が書かれていました。冒頭の例とは大違いです。このような申し出であれば、私にとって必要だと思いますし、何より「時間をとって話がしたい」と思うものです。

リモート営業にはリモート営業の結果の出し方があります。正しい方法を選択すれば、やればやっただけの結果が出ますが、間違った方法を選択すれば、やればやるほどドツボにハマっていきます。

まさに“天国と地獄の分かれ道”になるのです。

私が思わず返信した好例

営業サポート・コンサルティング
社長様
株式会社○○の鈴木一郎と申します。
弊社は企業に研修を紹介している会社です。
貴社のホームページを拝見し、ご連絡させていただきました。
新型コロナウイルスの影響で営業スタッフが思うように訪問活動できない会社様が増えております。
そこで「訪問しないで売る」というキーワードで検索したところ、貴社のホームページにたどり着いたのです。
私どもとしましてはこのノウハウを困っている会社の方に紹介させていただきたいと思っております。
よろしければ一度お時間をとっていただけないでしょうか。
※所要時間は20~30分ほどを想定しております。
ぜひご検討のほど、よろしくお願いいたします。

確実にアポイントが取れるプランは?

冒頭の例と今回の例をまとめると、こんな感じになります。

プランA……デジタルツールを使い、一斉メールでアプローチする
プランB……新規客を調査して丁寧にメールを送る

プランAのステップ
①アプローチの文章を作成する
②見込み顧客リストをもとに一斉送信する

プランBのステップ
①ベースの文章を作成する
②ネットで検索をかけて必要と思われる会社をピックアップする
③その会社に合わせてベースの文章をアレンジする

「プランAがいい」と思い込み、お客様にアプローチしていたらどうでしょうか。どんなに頑張っても結果は出ませんし、「この会社は迷惑メールばかり送ってくる」という悪評を広めます。営業スタッフも会社もお客様も不幸になります。まさに“地獄”です。

一方、プランBではどうでしょうか。確実にアポイントが取れるようになりますし、お客様からも感謝されます。営業スタッフも会社もお客様も幸せになります。まさに“天国”になるのです。

どちらのやり方を選んだかで、今後のリモート営業において大きな差をもたらします。

リモート営業は、メールの第一印象が大事

メールの目的はお客様と面談のアポイントを取ることです。

対面営業は初対面の第一印象が大切ですが、リモート営業はメールの第一印象が決め手になってきます。

お客様に、メールをパッと見て「これはスパムや単なる売り込みじゃないな……ちょっと読んでみよう」と思ってもらうことです。お客様はメールを最後まで読んでくれません。というか開封すらしてくれません。ですからまずは開封してもらい、そのうえで「この営業スタッフと会ってみたい」と感じてもらう必要があります。

そういった第一印象のいいメールの文章とはどんなものでしょうか? その書き方について、3つのステップで説明します。

①どこの誰かを伝える
②メールを送った動機を伝える
③会うに値する信頼を得る

第一印象のいいメールの書き方3つのステップ

①どこの誰かを伝える

新規のお客様にアプローチする際は、お客様はあなたのことを知りません。「名刺交換をした」「展示会で一度顔を合わせた」くらいでは知らないに等しいといえるでしょう。

菊原智明『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)
菊原智明『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)

実際に顔を合わせていたとしても、「○○株式会社の○○です」といったメールの書き出しでは思い出してもらえないのです。

そこで、「お客様は自分のことを知らない」という前提で文章を考えましょう。自分がいったいどこの誰なのかを示すところからスタートします。

・会社、所属している企業や団体
・会社の場所、担当エリア
・どんな活動・仕事をしているか
・(可能なら)キャリア、年齢など

可能な限り具体的に記述して、「どこの誰かわからない」→「素性がわかる」というところまでランクアップさせることです。

この文章が丁寧であればあるほど、「せっかくだから読むだけ読んでみよう」と思ってもらえる確率が上がります。

②メールを送った動機を伝える

「どうしてこのメールを送ったのか」といったお客様が納得するような動機を伝えてください。

メールを受け取ったお客様は、なぜ自分にこのメールが届いたかを知りません。メールを送ろうと考えたきっかけやプロセスを簡潔に伝えましょう。

③会うに値する信頼を得る

ここで重要なのは「自分がいかに役立つ存在であるか」を明確に伝えることです。

お客様に対して「私どもはこういった内容でご協力できると思います」といった経験を織り交ぜます。会う価値を感じてもらえるとともに“独自性”も伝えられます。

このような文面にすれば、「これは迷惑メールだ」などと思われなくなります。

お客様によっては、相手のアクションを促すような「ぜひ○○について、一度お話だけでも聞いてはいただけませんでしょうか」といった内容を伝えてもいいでしょう。

この3ステップを踏んでいれば、アポイントが取れる可能性が高くなります。