虫さされやじんま疹以外は、皮膚の乾燥が主たる原因です

何度もぶり返す「かゆみ」。ひどくなると「眠れない」「仕事に集中できない」など、かゆみに悩まされた経験のある人は多いはず。そこで皮膚科専門医である順天堂大学の髙森建二先生にかゆみの原因とその対処法を伺った。

自宅の手によってかゆみを女性の腕の傷を閉じます。健康・医療のコンセプトです。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/spukkato)

「“掻きたい気持ちを引き起こす不快な感覚”が『かゆみ』の定義。一種の生体防御反応です。『痛み』と違って命にかかわることはありませんが、しつこいかゆみ症状に悩む方は多いですね。かゆみを大別すると、①皮膚症状がある、②皮膚症状がない、の2つ。虫さされやじんま疹は①。②は皮膚症状はないけれど全身にムズムズしたかゆみを感じ、がんや貧血、内臓疾患が原因です」

虫さされやじんま疹などの皮膚症状があるものは、たたく、冷やすなどの対処法や抗ヒスタミン薬での治療が可能。しかし皮膚症状のないかゆみは、原因となる病気を突き止めるしかないと髙森先生。

「普通のかゆみは強く掻けば痛くなるので掻くのを止めます。しかし、病気が原因のものや、アトピー性皮膚炎は掻くほどにかゆみが増すため、さらに強く掻き続けてしまう『かゆみの悪循環』に。結果、なかなか治らない『難治性かゆみ』に移行してしまうのです」

病気によるかゆみも、初期は疾患が引き起こす「肌の乾燥」からはじまる。乾燥肌→かゆみ神経を刺激→掻く→肌を守るバリア機能が衰える→外部刺激に反応しやすくなる→さらに掻く→皮膚症状が悪化、といった悪循環となる。アトピー性皮膚炎も同様だそう。

「乾燥肌になると、かゆみの神経線維が皮膚の表面近くまで伸びてくることが判明。乾燥肌は洗いすぎでも起こるため、清潔にしすぎる女性にも増加しています」

まずは皮膚科を受診

内臓疾患によるかゆみは、虫さされなどのように抗ヒスタミン薬は効かない。また、繰り返すかゆみを「単なるかゆみ」と放っておくと、病気そのものが悪化することも。乾燥肌ケアのために保湿剤を塗ってもかゆみが治まらないならば、内臓の病気を疑おう。まずは皮膚科を受診し、血液検査などを行うのがおすすめだ。

かゆみのタイプチェック
髙森建二(たかもり・けんじ)
順天堂大学附属浦安病院 かゆみ研究センター所長
順天堂大学大学院医学研究科環境医学研究所所長、同大学院医学研究科皮膚科学特任教授。難治性のかゆみのメカニズムを解明し創薬へとつなげるなど、多くの成果を上げ続けている。かゆみに悩む多くの患者の治療にもあたっている。