言葉には不思議な力があります。言葉によって相手をいい気分にすることもできるし、いやな気分にすることもできる。相手だけでなく自分に向けた言葉も影響力があるので、間違えた言葉をつぶやくと、自己肯定感が下がり、負のスパイラルに入ってしまうことも……。そう話すのは産業医の井上智介先生。プチネガティブが起きたときこそ使いたい言葉を教えてもらいました。
考える若い女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

希望通りにいかなかったときのつぶやき

(1)「終わったら仕方ない」
(2)「なるようにしかならない」
(3)「そういうときもある」

この3つは、結果を受け入れるために自分自身にかける言葉です。

どんなことも、いつも自分の希望通りにいくわけではありません。結果というものは、実力以上にタイミングや環境、運など自分ではコントロールできない要素が絡み合って出るものです。

それなのに「失敗した」という結果だけに注目して、すべて自分のせいにしてしまうと、自己肯定感はどんどん下がる一方。これら3つの言葉をつぶやくようにすると、自分を責めずに、結果だけを受け入れることができて楽になれます。

ネガティブループから抜け出すためのつぶやき

(4)「そうとも言い切れない」
(5)「本当にそうなのかな」

仕事でもプライベートでも依頼を断られたり、返事がこなかったり、といった期待外れなことは多々あります。そのときに自己肯定感が低い状態だと、「嫌われた」「自分の言い方が悪かった」「今後の査定に響くかも……」などと、頭の中にネガティブな考えがぐるぐると回ってしまいます。

こんなふうなネガティブな思い込みをストップさせたいときに、この2つの言葉を自分にかけて、いったん立ち止まりましょう。

そうすると、「相手も忙しくて手伝えないから断っているだけなんじゃないか」「メールの返信がないのも何か理由があるんじゃないか」と落ち着いて考えてみることができますし、相手に期待しすぎていた自分に気がつくこともできるはずです。

良い意味での「割り切りワード」を持っておこう

(6)「組織ならそんな考え方もありかな」

自分としては一生懸命やって上出来だと思っている業務も、上司に相談するとネガティブな反応だったというのは、よくあることです。

批判されても、それはあくまでも上司の感想。そもそも全員から認められるのは不可能ですし、逆にいうとわかってくれる人はわかってくれるので、そこまで気にしなくていい。

ただ会社という組織である以上、自分個人の意見より上司の意見が優先されるのは仕方ありません。自分を責めるのではなく、「組織ならそんな考え方もありかな」と割り切って考えたほうが楽になります。そこにかみついてもトラブルになるだけですから、組織なんてそんなもん、と大きくとらえたほうがいいでしょうね。

(7)「変化があって当然かな」

これは今までいいとされてやってきたことが、何らかの変化によって、うまく評価されなくなったときに、自分にかける言葉としておすすめです。

そもそも時代が変われば、働き方が変わったり、新しい環境に身をおいたりということがよく起こります。転職や異動も、そのひとつですね。

ですから働き方や環境の変化によって周りの人が変わり、今までOKだったことがダメになるのはよくあること。そこでダメ出しされて、なんでだろうと悔やむとつらいだけです。そういうときこそ「変化があって当然」と受け流して割り切ったほうが、気持ちが楽になります。

もともと、この世の中には変化がないということはありえないわけです。変化があることが当たり前、今までうまくいっていたことでもこれからは違う、と言われることはよくある話、と最初から思っておくことが大事です。

また変化といっても、悪いことばかりでなく、良い方向に変わっていくこともあります。今までやっていたことを、ダメ出しされてネガティブにとらえるのではなく、この変化自体にどんないい意味があるのかなとポジティブにとらえてほしいですね。

「成功」ではなく「成長に」注目しよう

(8)「成長はした」

自己肯定感が低くなっているときは、結果を成功か失敗か、択一で考えてしまいがち。当然、物事が思い通りに運ばないと、それは「失敗」にカテゴライズされてしまいます。

でも失敗したという結果があったということは、挑戦したということ。そのプロセスにおいて、いろいろと試行錯誤していますから、当初よりは十分に成長しています。その経験は財産として今後も役立っていくことは確かですので、成功しなくても「成長した」と胸をはっていいと思います。

自分を奮い立たせる言葉を持っておこう

(9)「このままじゃ割に合わない」
(10)「大丈夫、大丈夫」

ネガティブな気持ちに引き込まれそうなときこそ、自分を価値のある存在と考えて自分を奮い立たせるのが、この二つの言葉です。

「このままじゃ割に合わない」は、自分は一生懸命やっている、たとえマイナスなことがあっても、こんなに価値のある自分がこのままで終わるわけがない、このままで終わるには割に合わなすぎるというときにぜひつぶやいてほしいですね。

気持ちを切りかえて、自分をポジティブにもっていくために必要なのが「大丈夫、大丈夫」です。これは元プロレスラーのアニマル浜口さんの「気合いだー!」と近いですね。これも自分の気持ちをポジティブに切り替えるための彼なりのルーティンなのでないかと思うのです。何があっても、大丈夫、大丈夫と自分に声をかけてやっていきましょう。

成功した人の話を聞いて落ち込んだときは

インターネット上では、いろいろな成功した人の話があふれています。そういった話を読んで、「この人に比べて私はふがいない……」とモヤッとしたら、まずそういった成功談は、苦労した背景があるけれど、日の当たるところだけがフューチャーされている、そう読み取ってほしいですね。

成功しているところだけに自分を照らし合わせると、しんどくなるのは当然です。でもあなたには、あなたの強みがあります。大成功した人と比べてもしょうがありません。SNSなどもいくらでも加工できるので、自分と比較してしまうと、自分のエネルギーばかり奪われてしまいます。注意しましょう。

モヤッとしたら「大丈夫、大丈夫」と言っておけば、本当に大丈夫ですから!