元Google社員の林勝明さんは、立ち上げた数々のコミュニティ活動から多くの人の仕事や恋愛の縁を生み、時に「歩く縁結び神社」とも呼ばれています。ビジネスでも恋愛でもSNSが主流となった今、良いご縁を結ぶにはどんなお誘いに乗るべきなのか、聞いてみました。

※本稿は林勝明『人見知りでもセレンディピティ 身近な奇跡が爆増する20のルール』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

一緒にお酒を飲む若者
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Yue_)

なぜか誘いたくなる人の口癖

いつも同じ日々の繰り返し、家と会社の往復ばかり、そんな状況が続いてしまっている時は誰にでもありますよね。

そんな日常から、セレンディピティのきっかけを生む魔法の言葉があります。

その言葉は、「ヒマです」。

誰かに「最近どう?」と調子を聞かれたら、いろんな事情はあったとしても、騙されたと思って、「うん、結構ヒマです」と勇気を出して言うだけ言ってみてください。

それがあなたのセレンディピティあふれる冒険のスタートボタンになるはずです。

簡単すぎて拍子抜けしましたか?

最初はただなんとなく誘われる。誘われやすい人になることから、予想外の出来事を楽しむ冒険は始まるのです。

自分だけで探せる興味よりも、人から誘われることで、自分では思ってもみなかった世界に足を踏み入れることになります。

「ヒマです」と言うことは一見簡単そうに思えますが、実際は、「いやー、結構忙しくて」だったり、「ちょっと今は余裕がなくてしんどい時期かも」と答えてしまう人は多いのではないでしょうか。

もし自分が誘う立場になってみるとよく分かります。忙しそうなオーラを出している人にはまず声をかけませんよね。

どうせ声をかけたところで既読スルーされるか、ごめんなさい……と言われてしまう気がしてならないからです。

こちらもなんだか忙しいところ、迷惑かけて申し訳ないという気持ちにもなります。

逆に、いつでもニコニコ、とまではいかなくても、たぶん何かしらの返事はくれるだろうなという人は、まず連絡はしてみようかな? となります。

お誘いの良し悪しを見分ける3つのサイン

「ヒマです」と言ってみることにしましたが、誘われるにしてもできるだけよいお誘いに乗っかって、よりよいセレンディピティに出会いたいですよね。

そう思った時に何を基準にお誘いの良し悪しを判断すればいいでしょうか?

見分けるサインが表れるのは、「誘い方」「人数」「会費」の3つです。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

NGサイン①:「あなたの名前がない」

まず、どのお誘いに乗っかるべきかは、気をつけていれば一言目で分かります。悪い例から見ていきましょう。次のメッセージを見てください。

あなたの名前もきちんと入れずに、「こんにちは!」から始まるテンプレートです。

これは一番のNGサインと思っていいでしょう。

こんにちは! いつもお世話になっております。
明日11/28に、パリから来たカリスマフレンチシェフ◯◯◯を囲んだお食事会を六本木で開催します。
普段はめったに日本に来ることもないのでまたとない機会です。
これを逃すと次の機会は数年先になってしまうかもしれません。
ぜひお見逃しなく!
会費:1万円(税込み)
シェフ略歴:
1972年夏 渡欧 ベルギーのホテル「◯◯◯◯」を皮切りにフランスへ渡り、パリの一つ星レストラン「オーベルジュ◯◯◯◯」、二つ星レストラン「◯◯◯◯」などで4年半修業
1981年春 株式会社◯◯◯◯入社 レストラン「◯◯◯◯」料理長となる
1983年 株式会社◯◯◯◯取締役総料理長となる
1989年5月 フランス「◯◯◯◯」エグゼクティブシェフとなる
1989年9月 ◯◯◯◯コンクール優勝、1989年度最優秀料理人となる
1989年10月 フランス料理アカデミー日本支部会員に認定される
1990年 ◯◯◯◯コンクール2年連続優勝、1990年度最優秀料理人となる
1991年 ◯◯◯◯料理長に就任
2006年 パリにレストラン ◯◯◯◯◯ 独立開業

完全にコピペパターンの優先度は低めにしよう

このパターン、結構多くないですか?

誘う側の人も実はうっかりやってしまっていないでしょうか?

たとえどんなに内容自体が面白そうであっても、誘った人は参加者であるあなたのことをこれっぽっちもケアしてくれないでしょう。

なぜなら、このお誘いはあなたを個別の人間として見ていないからです。SNSでの投稿や宣伝文をそのまま送りつけている状態ですね。シェフの異常に長い経歴もそのまま貼り付けてきています。

このマインドが実際の会でもそのまま表れている確率が高いため、参加したあなたを1フォロワー増えたくらいの感覚で見てしまっている可能性が高いのです。

かろうじて「林さん、こんにちは」と名前だけ入っていたとしても、以下は完全にコピペなようなら、この手のお誘いの優先度は低くしておくのがよいでしょう。

優先度を高めるべきお誘いパターン

逆の例を見てみましょう。

一度ぐらいはラグビーの試合を見てみたい人!?
いたらぜひ気軽に連絡ください!
試合の見所から、注目ポイントまで、全部解説しまくります。
そして僕の大好きな友人だけにお声がけしているので、終わったら軽くメシにでも行きましょう。
僕のパッションが熱すぎてウザかったらごめんなさい! 笑
でも絶対損はさせません。
今後もワールドカップもあるし絶対日本のラグビーは面白くなります。
楽しく知ったかぶりもめっちゃできるポイントがあるのでミーハーな動機も大歓迎です。
とにかくラグビーの面白さを知ってもらいたい! と思って前のめりに企画してみました。
会は実費だけ、僕には一銭も入りませんw

僕の友人で、ラグビーが流行る前から定期的に仲のよい知人を集めて、一緒にラグビー観戦をしようという企画を重ねていた仲間がいます。

実際彼が何かそれで稼ぎを得ることはなく、ただ純粋に自分が愛してやまないラグビーをみんなと共有したいという気持ちから発したものでした。

私が誘われた時(2017年)は、「ラグビーか、あんまり興味ないな……」と思ってしまいましたが、彼は、個別のメッセージでも、「私のいい友達でラグビー全然知らないやつらもたくさん来ますし、俺が全部分かりやすく、ルールや見どころも紹介します! ぜひ林さんには来てほしい。ワールドカップも10倍楽しめます!」

と、至れり尽くせりの誘い文句を出してきてくれたのです。

私からすると何か余計な費用が発生するわけでもないし、ラグビーに詳しくなれそうだし、楽しそうな友人も紹介してくれる。こんなにお得ポイント満載なら一度くらい行ってみるか、となるわけです。

見極めるポイントは「自分を誘ってくれた背景」

実際彼のおかげで、全くルールが分からないながらも仲間はずれになることもなく、ワールドカップに向けてにわかファンじゃない素地を早めにつくることができました。

もちろん参加者もみな感じがいい人ばかりで、新しい素敵なつながりも生まれました。

これは今でもよくおぼえている印象的な経験です。

このように、一言でも「なぜあなたを誘っているか」の背景がある場合は、ぜひ前向きに考えてみましょう。

誘ってくれた人の熱意でもよいですし、「あなたならたぶん興味をもってくれるんじゃないかと思い……」という少しの配慮でもかまいません。

たとえ興味が合わなかったとしても、その人はあなたのことをそこそこ考えてくれています。

つまらなそうにしていたら、少し解説をしてくれるかもしれませんし、誰か話の合いそうな人を紹介してくれるかもしれません。

きっとそういうお誘いのもとに集まったメンバーですので、一定のフィルターはかかっている、つまりセレンディピティの確率は高まっていると言えるでしょう。

NGサイン②:「参加人数の制限がない」

参加人数はとても重要な問題です。

林勝明『人見知りでもセレンディピティ 身近な奇跡が爆増する20のルール』(飛鳥新社)
林勝明『人見知りでもセレンディピティ 身近な奇跡が爆増する20のルール』(飛鳥新社)

多すぎると結局印象に残る体験ができなくなってしまいますが、少なすぎるのもシャイな人は気が重くなってしまうかもしれません。

「いろんな素敵な人が集まるから紹介するね」と言われたのに幹事が手一杯で、人見知りな人たちはなんだか不発に終わる、というパターンもよくあるかと思います。

音楽イベントやグルメイベントなど人数がどうあれテーマだけで楽しめる場合は別として、これから何か新しい仲間や人間関係に触れていきたい、という方は、人数が多いところを選ぶのは極力避けましょう。

最大10人、3~4人で話せる機会がある集まりがオススメ

なぜ僕は、4人以上の場になると途端に会話が苦手になるのか』の著書がある行動分析士・岩本武範さんの説によると、多くの人は4人以上の会話になると脳がパンク状態になり楽しめなくなってしまうといいます。

それくらいの少人数で安心して話せるグループがいくつかあるような場だと、質と量ともにバランスがよくなります。

逆に30~100人ほどが一度に集まるような大人数の懇親会では、1人あたり5分ずつ、トータルで10人くらいと名刺交換して話して終わりという流れのものが多くあります。

こうした会のデメリットは、特に仕切りもない場合は、話が1対1のサシになりがちです。

サシになってしまうと、話の切り上げどころが難しく、話がやたらと長い人の餌食になったり、謙虚な人はトイレに行ったりブッフェを取りに行ったりするタイミングを見失ってしまいます。

それでいて、相手にあからさまに切り上げられるととっても寂しい気分になります。

変に欲を出して、たくさんの出会いがあるかな? と狙って大人数の会に参加すると、こうして残念な結果に終わることが多いのです。

NGサイン③:「会費の根拠がない」

会費はいつも微妙な問題です。価値があることにお金を払うのは問題ないけど、何かちょっと微妙な会費のせいで後味の悪い経験をしたことはありませんか?

これが続いてしまうと、新しい場所に出向くのが嫌になってしまいます。

素敵な人ばかり集まる会だからとか、ご飯もとっても美味しいからとか、絶対楽しいからと言われて素直に参加してみたものの、

「こんな感じのブッフェメニューで5000円取るのか?」とか、

「お酒の種類やたら少ないけど、飲み放題で3000円くらい取ってない?」

といった会は結構あるものです。

自分なりのラインを決めよう

満足度が高く、コスパもいいお誘いはどうやって見極めればいいのでしょうか?

まずは自分の中で、何か比較する物差しをもっておくと変に迷わなくなるでしょう。

私の場合は、映画やランチの値段と比較することが多いです。

映画の場合は約2時間で1800円、思いがけず面白い映画に当たる時もあれば外れる時もあります。

ランチの場合なら、1時間程度で1000円くらい。ちょっと奮発したランチのコース料理なら3000円くらいでしょう。

これくらいの基準で考えると、1000~3000円くらいの費用で参加できるものを選べば満足できることは案外多いです。

しかし、世の中にはよく分からない価値をつけられて、5000~1万円くらいの参加費を取られる会も結構あります。

もちろん幹事側の言い分もあります。

イベントにはドタキャンがつきものなので、当日まで参加確定が読めないことも多いため、少し余裕をもたせて赤字の出ないようにしておきたい。それはもっともな主張です。

ですので、高いからといって一概に怪しむ必要はありませんが、ポイントとしては、その会が何を付加価値としてその参加費になっているのか少しだけ気にしてみることが大事です。

本当にいいお誘いは、幹事側もそれで儲けてやろうというよりも、自分の好きなものを共有したい、いい仲間をつなぎたいなど、ある意味精神的に余裕のある人が多いです。

手当たりしだいに誘われて行くのではなく、このような機会をしっかり選べると、セレンディピティがより高まります。