コロナ禍がきっかけとなり、この先のビジネスにおいてなくてはならない存在となったリモートワーク。全国的に外出自粛が明けた今、リアルな対面とリモート上の交流が共存していく時代へと本格的に突入しました。そこで新たに考えたいのが、リモートワークでの働き方のマナー。今月は上司が部下にやりがちなオンライン上でのマナー違反について考えます。
ノート パソコンとコーヒーが付いているオフィスの疲れ女性実業家
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Poike)

プライベートなツッコミには要注意!

リモートワークといっても業務内容はこれまでとほとんど同じ。ならば、複数人が集まってミーティングをする機会も少なくはないでしょう。そんなとき気をつけたいのが、うっかりプライベートに介入してしまうこと。

オンライン会議などでは相手の部屋の中が背景として映るのは当然のことですが、だからと言って皆の前で話題に取り上げてほしいかどうかは別の話。ツッコミ側はコミュニケーションの一端だと思っていても、相手はそうは思わないこともあります。プライベートな話をどこまですべきかは、ふだんの関係性があってこそのことなのです。

それは部屋の中だけでなく、相手の服装や身だしなみなどについても同じこと。最近“リモハラ”、“テレハラ”などという単語が使われることでもわかるように、行き過ぎた言動はマナー違反を通り越してハラスメントにもなりかねません。リモートワークは、あくまで働く場所が変わっただけ。普段NGだった話題がOKになることは、そうあり得ません。

また、プライベートへの介入という意味では当然、時間外の仕事を要求するような言動や、なしくずし的なリモート飲み会への誘いもご法度。基本、部下は要求を断りづらいもの。管理職であるからには自分の立場を自覚し、威厳はあっても威圧のない振る舞いを心がけることが大切です。

執拗な監視・催促は逆効果

リアルなオフィスとは違い、同じ空間にいないことで部下の動きが把握できないのがリモートのもどかしいところ。それは仕事のバーチャル化が進むにつれて、誰もが感じていることでしょう。ですが、まるで監視するかのように(その必要がないのに)常にオンラインにしておくことを求めたり、すぐに返事がなかったときにしつこく電話やメールで催促したりというのはちょっとやりすぎ。

これまでのオフィス業務同様、すぐに応答できなかった部下も決して仕事をサボっているわけではなく、ほかの急ぎの作業をしていたり、クライアントと電話をしている最中かもしれません。

無駄な監視は相手を萎縮させ、健全な労働環境を奪うことにもなりかねません。第一、常に見張られているような状況下で本領を発揮できる人なんてなかなかいないはず。そればかりか、管理職である自身の仕事の効率も下がることでしょう。

リモートワークにおいて大切なことは、部下の一挙手一投足すべてを監視することではなく、信頼をもってある程度の許容範囲を示すこと。管理職の人たちが、「仕事として結果を出す」というシンプルな本来の目的さえ見失わなければ、まるで“見張り”ように部下をコントロールする作業は必要なくなるのです。

拡大鏡でラップトップコンピュータを見ているビジネスマン
※写真はイメージです(写真=iStock.com/taa22)

リモート上での伝わり方に配慮する

直接会えないともなると、増えてくるのがチャットやメール。リモートワークとは切っても切り離せないツールですよね。しかしながら抑揚やが伝わらないぶん、「こんなふうに書いたら相手がどう受け取るか」という想像力がいつもに増して大切になります。とくにクイックなやり取りが多くなるチャットでは、急ぐがあまり単語でぶっきらぼうに伝えたり、感情的になったりしないよう気をつけましょう。こちら側が何を伝えたいかにプラスして、相手にどう伝わるかを客観的に考える必要があるのです。

それはオンライン会議での“カメラ映り”でも同じこと。この“カメラ映り”とは美醜の問題ではなく、コミュニケーションの一環にもなる振る舞いの話です。

たとえば自分としては発言者の話を真剣に聞いているつもりでも、まるで静止画のように無表情・ノーリアクションでは、「もしかして怒ってる?」「ちゃんと聞いているのかな?」と周りに余計な心配をさせてしまいます。また反対に、話に割って入ることが難しいオンラインでのやり取りでは、自分ばかりが発言したり、相手の言葉にかぶせるのは絶対NGです。

初めてのことだらけで誰もが戸惑うリアルとリモートの境界線。けれど“リモハラ”も“テレハラ”も、はじまりは相手の気持ちを思いやるマナーの欠如から。非常事態だからこそ、上司も部下もお互いの立場に気を配って、できるだけストレスのない働き方を少しずつつくりあげたいものです。