※本稿は佑貴つばさ『なぜ、あなたは「黒い服」を着るのか 人生が変わる色の魔法』(マキノ出版)の一部を再編集したものです。
黒は“無難”ではないことを知ろう
毎日のように黒を着ていると、心のなかにどんなことが起こってくるでしょうか。
黒は人が目にする色のなかで最も暗く、最も重く感じる色です。着る服の色は、潜在意識に強い影響を与えます。「黒を着ている自分」は、「いつも気持ちを抑えている自分」や「心のずっしり重い自分」として、潜在意識にインプットされてしまうのです。
自ら積極的に黒を選んでいない場合には、黒という「強い色」が持つイメージのなかでも、マイナスの効果が表に出てしまうからなのです。
そもそも黒は、無難な色だと本当に思いますか。
黒は、どんな色より強くて頑固で、気高さを感じさせる特別な色。
実は、大人の女性にとって、黒ほど着こなしの難しい色はないのです。
黒い服をよく着ている、という大人の女性にもう一度お聞きします。
最近のあなたに、黒は似合っていますか。
顔映りはどうでしょう。黒はあなたの気持ちに添った色ですか。
「どうも最近、しっくりこない」
「顔映りが悪い気がする」
「なんだか、老けて見えるように感じる」
「気持ちが重くなる気がする」
そんなふうに感じることがないでしょうか。そうであれば、もはや黒が似合わなくなっている証。「無難だから」と黒に頼っていい時期はすぎた、ということです。
大人の女性が、黒を着てはいけない理由は四つあります。
1.大人の女性を老けて見せる
黒について、顔映りの面から見ていきましょう。
顔のそばに明るい色を持ってくると、その明るさが顔に反映し、肌が明るく見えます。シミやシワが目立ちにくくなります。反対に、顔のそばに暗い色を持ってくると、その暗さが顔にも反映し、肌が暗く濃く見えることになります。
人の目に見える色のなかで、いちばん明るい色が白、いちばん暗い色が黒です。白と黒で顔映りを比べると、顔色の変化がよくわかります。
実際に、洋服を顔の下に当ててみるとわかりやすくなります。黒い服と白い服の両方をお持ちのかたは、「交互に」首元に当て、鏡で見てください。ハンカチでもかまいません。
しっかり自分の顔を見つめてみましょう。その効果は一目瞭然。白い服を首元に当てたときと比べ、黒い服は顔色を暗く見せているはずです。とくに、ほうれい線やあごのラインなど、顔の下半分に顕著に表れます。
顔は服と一体化して見えやすく、色が同化して見えることが多くなります。顔のそばにある服が明るい色ならば顔も明るく見え、暗い色ならば顔も暗く見えます。暗い色は、顔にあるものを、より濃く見せ、影もつくります。
アラフォーのころから、目元のシワ、クマ、ほうれい線、シミなど、いくつかの悩みが増えてきていませんか。黒を顔のそばに持ってくると、それら「悩み」の部分が、服の色と同化し、より濃く深く見えてしまうのです。
肌の色も暗くなり、シワやクマが濃く見えることで、顔に険しさも感じさせます。このため、大人の女性が黒を着ると、実際よりも老けて見えてしまうのです。
もちろん、どんな色にも、マイナスの効果があれば、プラスの効果もあります。黒のプラスの効果は、顔の上にあるものをより濃く見せることから、目鼻立ちをくっきりと顔を立体的に見せるとともに、輪郭を引きしめてシャープに見せる側面もあります。このプラスの面とマイナスの面を天秤にかけながら、もう一度、自分の顔映りを、鏡の前で客観的に見てください。黒のマイナス面のほうが目立ちませんか。大人の女性が、黒い服を選ばないほうがよい大きな理由の一つがここにあります。
2.女性を「重たく」見せる
多くの女性が黒い服を好む理由に、「やせて見えそうだから」という答えもあります。
たしかに、黒には「収縮効果」があります。物が、よりシャープに引き締まって見える効果です。
この効果がよくわかる例として、碁石の大きさがあります。
黒の石の大きさと白の石の大きさは、異なるようにつくられています。黒には収縮効果があるので、実際に同じ大きさにすると、黒の石のほうが小さく見えてしまうからです。そのため、黒の石は白の石より、ほんの少し大きくできています。そうすることで、両者は同じ大きさに見えるのです。
一方、色には「軽い」と「重い」という印象があります。色の明るさと暗さが、見た目の軽さ・重さの印象につながっています。
具体的には、色違いの二つの物があったとき、明るい色のほうが、より軽く感じられ、暗い色のほうが、より重く感じられます。
人の目に見える色のなかで、いちばん明るい色が白で、いちばん暗い色が黒です。
白と比べると、黒は見た目に感じる重さが、なんと1.87倍にもなるという実験結果もあります。黒を着ている人は、そのくらい重たく見えてしまうのです。
体型がスリムで引き締まっている人は、黒の収縮効果で、よりスリムに見えます。一方、ふっくらした体型の人が黒い服を着た場合、収縮効果より重たく見える効果のほうが顕著になります。つまり、ふっくらした体型を黒で覆ってしまうと、ズッシリと重たそうに見せてしまうのです。ましてや、トップスもボトムスも黒。全身を黒で固めてしまったら、黒の分量が大きくなってしまい、さらに重たく見えてしまいます。
最近は、ワイドパンツが人気です。「体型を隠すのによさそう」と、黒いワイドパンツを履いたときには、その幅広の形から、よりズドンと重たく見せてしまうので、要注意です。
いつも黒を着ている人は、まわりの人にも自分自身にも、重たそうに感じさせています。
「やせて見えそうだから」というのは、黒を着る理由にはならないのです。
3.コミュニケーション下手になる
黒ばかり着るあなたはコミュニケーションが苦手では?
色は、体験や記憶、イメージとつながっています。そして人は、色に象徴的な意味を感じています。色の持つイメージ・意味には、すべてポジティブなものと、ネガティブなものがあります。
黒のポジティブなイメージ・意味には、「自己確立・意志の強さ・集中・高級感・威厳・重厚」などがあります。「プロフェッショナルに見える色」でもあります。
ネガティブなイメージ・意味には、「孤独・人と距離を置きたい心理・重苦しい・抑圧・反抗・悲しみ・威圧感・恐怖」などがあります。
私たちが色に惹かれるのは、その色のイメージ・意味がそのときの気持ちに合っているから。
そのときの自分の心と体に必要な色を、無意識にも選んでいます。
また、自分の気持ちを物語ってくれる色に惹かれることもあれば、その色のイメージにあたるものが今の自分に足りず、求めているときに惹かれることもあります。
では、黒に惹かれるのは、どのような心理でしょうか。
「強い意志を持って自分を確立していくとき」など、ポジティブなイメージが、気持ちに合っているときがその一つ。「強い自分」を表現したいときです。
プロフェッショナルであることや、ストイックさも感じさせます。自分の感情を表に出さないことから、仕事向きの色ともいえるでしょう。
でも、もしも「無難だから」との理由で、黒い服を着ているとしたら。あなたの心は、黒を通して「強い自分」を表現したいと求めていますか。
もし、ふだんから黒をよく着るならば、今、こんなことを感じていないでしょうか。「人間関係に疲れちゃった」「少し休みたい」「そっとしておいて」「自分を守らなくては」人とのコミュニケーションを今は避けたい。自分の気持ちに踏み込まないで欲しい。そんな思いが、もしかしたら黒い服を選ばせているかもしれません。
また、「孤独感が強まり、さびしい」「自分の本当の気持ちを抑えている、我慢している」というときにも、黒い服を無意識にも選んでしまうのです。
黒を習慣化しないことが大事
思春期に、黒ばかり選んで着ることがあります。思春期特有の言葉にできないような葛藤や悩みに苛まれ、身近な大人への反発心が高まってくると、黒を好むようになります。それは「私にかまわないで」「そっとしておいて」「少し休ませて」、そして「孤独」「さびしい」という言葉にならない表現であることも多いのです。
また、心に深い悲しみを抱えているときにも、黒に惹かれることがあります。そんなときの黒は、心に寄り添ってくれる色です。黒に自分の心を重ねることで落ち着き、支えられ、心が守られることもあります。
こんなふうに、「黒で心をガードしたい」との心理から黒に惹かれているときには、黒で自分を守ってあげることも必要です。
しかし、着慣れているからという理由で、黒ばかりを毎日のように着ていると、人と距離を置きすぎてしまったり、孤独感が増したりします。考えが頑固になりすぎることもあるでしょう。自分の感情を抑えてしまうことにもつながっていきます。
しかも、色は習慣になります。慣れてしまうと、ついその色ばかりを選んでしまい、ほかの色を取り入れにくくなるのです。だから、黒をよく着る人のクローゼットには、黒の服がますます増えて、毎日のように黒を着ることになるのです。
4.気持ちを抑えてしまう
色みを持たない色であり「無彩色」と呼ばれる、白・黒・グレイのなかでも、黒はとくに「感情を抑え込むイメージ」と重なりやすい色です。
少し専門的な話になりますが、色は、物体が光のなかの特定の波長域を反射、透過、吸収することで見えるものです。
黒は、可視光(目が感じることのできる光の波長)のほぼすべての波長域を吸収することで見える色。「光をすべて内側にしまい込んだ状態」「外側に表現していない状態」というイメージとつながります。
また、黒は人の目に重たさをもっとも感じさせる色です。人は物を見るとき、その物自体のイメージを重ねて見ます。黒は、心に重石をずっしりと乗せているようなイメージとつながりやすいのです。
こうしたことが、「自分の感情を抑圧するイメージ」と重なります。
私たちが目にする色は、心に影響を与えます。私たちは、鏡を通して、1日に何度も自分を見ます。
頻繁に黒を着ていれば、それだけ多く、黒のイメージと自分を重ねて、潜在意識にインプットしやすくなるのです。反対に、自分の感情を抑えているからこそ、黒い色が気になることもあります。惹かれる色には、自分の気持ちが投影されているからです。
だからといって、長い間、黒い服を着たり、身近に黒ばかり置くと、自分の本当の感情をさらに表に出せなくなります。黒は、そんな悪循環も起こしやすい色なのです。
色を取り入れて新たな自分になろう!
色彩心理・自己分析のセッションに来てくださる大人の女性たちには、「いつも黒ばかり着ている」というかたが多くいらっしゃいます。
お話しをうかがうと、「知らずに自分の本音を抑えてしまっている」と答えるかたがほとんどです。
自分の素直な気持ちを表現するのが苦手で、まわりの人にイヤな思いをさせたくないと、本音で向き合うことを我慢してしまうのです。
「私も、自分の本音を抑えて生きている」
そう気づかれたあなた。気持ちに無理のないペースでよいのです。少しずつ、色みのある色を身近に取り入れていきましょう。
色は感情とつながっています。一つの色は一つの感情。洋服や小物に取り入れる色の種類を、少しずつ増やしてみましょう。
そうすることで、自分の心を解放し、表現できる感情の幅を広げていかれるのです。