新型コロナウイルスの感染拡大により、新卒においても中途においても採用活動がウェブシフトしつつある。得られる情報が少なくなる中、採用で失敗しないために面接では何を見るべきなのか。
オンライン面接。オンライン会議。オンライン ビジネス。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/ijeab)

オンラインだけで採用を決めてもいいのか

困難な社会情勢下で多くの業務がオンラインに移行している。採用活動も、新卒・中途問わずオンライン面接が主流になりつつある。我々のクライアント先からも「オンライン面接主流となり応募数が圧倒的に増加した。遠隔地からのエントリ増が要因」という話を聞く。

「空間の制約」が無くなった今、採用はこの前提でやり方を変えなければならない。いや、変えることによって自社の採用力を飛躍的に向上させることができる。

一方、まだオンラインに慣れていないために、

・なかなか、対面でない面接で人物像や雰囲気を見抜くのが困難だ
・さすがに、最終面接まで一度も対面なく、採否を出していいものか
・候補者側に立ってみても、会社の雰囲気などを見せずに入社承諾可否を求めていいものか

など、懸念する声が目立つ。

社会情勢の展開によっては、オンライン採用を主軸に据えざるを得ない状況も起こりえるし、前述の通り、母集団形成に寄与することも考えると、オンライン採用からでも活躍する人材を集め、見抜き、魅力付け、活躍してもらう人事システムの構築が求められる。

結論、この時期を好機ととらえ、面接の仕方を整理することによって、この体制構築は可能だ。むしろ、情報量が相対的に少ないオンラインの方が人材を見抜くためには好都合だ。

今回は、オンラインの「面接」においてどのようなスタンスで臨めば入社前後のギャップを極小化し、自社で活躍できる人材を見抜けるか考えてみたい。

期待と全然違った! という失敗が多い

ところで採用・面接という領域でどのような課題感をお持ちだろうか。我々が、組織コンサルティングの現場でよく聞くのは以下の様な話だ。

・面接では期待度が高かったのに……。
・採用前に言っていたことが全然できない……
・組織になじまずすぐやめてしまう
・やる気のないローパフォーマーだった

といった、いわゆる入社前後のギャップに採用時は気づけなかった、というものだ。

・どうしても性善説で採ってしまう……
・採用は結局のところ“賭け”のようなものだ

と、主観的、感覚的な判断を基に採否を決定してしまった結果、上述のような事態に陥ってしまう。

採否を決める2つの評価軸

では、そもそも採否はどのように決定するものなのか。基本的な評価軸についておさらいしてみたい。

一般的に、採否に用いられる評価軸は2つ。

①スキルセット

→職務遂行に必要な技能、経験、専門知識、コミュニケーション力

②マインドセット

→やる気、コミット力、雰囲気(人柄)、企業文化へのフィット感など

この2軸を用いて、採用ポジションの緊急度や難易度などを加味して落としどころ(採否基準)を設定している。新卒や若手営業職ならば①はさほど期待されないだろうし、年収が1000万円以上の管理職・専門職なら②よりもまず①を重視するだろう。

(そもそもこの2軸すら意識できていない場合は、まずこの2つを意識して面接して欲しい)

採用成功の鍵はマインドセットを正しく見抜くこと

スキルセットについては、比較的評価するのは容易だ。当該部署のマネジャーなど直属上長や経験のある部長クラスなどが面接にあたることによって、何ができるか、どんな実績があるかは見えやすいからだ。営業などであれば達成率など明確な事実を基に判断できるし、技術職なども「5分話せば何ができるかわかる」という話をよく耳にする。

一方、評価が困難なのはマインドセットだ。やる気、コミット力、雰囲気(人柄)、企業文化へのフィット感といったものは採否基準として重要視されていながら、抽象度が高く、そもそも自社の求める水準も不明確なことが多いし、候補者を「やる気がある人物」と評価する面接官もいれば、そうでない面接官もいるだろう。

例えば「彼(彼女)はウチに合っているよね」とか「フィットしている/してない」「ウチの会社の社員“っぽい”/“ぽくない”」という会話がかわされるが、一体何に対する適合度を評価しての発言かは曖昧だ。つまり、面接を“難しいもの”にしているのはマインドセットであり、このマインドセットを正しく見抜くことが採用力強化につながる。

マインドセットを把握する8つの要素

マインドセットを正確に評価するためには、その全体像を把握する必要がある。識学ではこれを8つの要素に分解して捉える。

それぞれの簡単な説明は以下の通り。

自己評価:自身の価値を自身が決めると考えている度合い
組織内位置認識:自社に位置している意識(所属)、上司を上司と思っている度合い(上下関係)。これらの意識の度合い
結果明確:自身のミッションをどの程度明確に捉えられているかの度合い
成果視点:やる前に熟慮する度合い やる前のプランニングに時間をかける意識の強さ
免責意識:他責思考の強さ
変化意識:成長したいという指向性の強さ
行動優先意識:速やかに取り掛かる、繰り返し取り組む、といった意識の強さ
時感覚:スピード感 時間短縮に価値があるという感覚の強さ

当社では、この8つの要素をベースにマインドセットを評価し、採否を決定しているわけだが、すべてを見抜く技能を身に着けるのは大変困難で時間もかかる作業なので、ここでは最優先している2つをご紹介する。

絶対に採用してはいけない人材のタイプとは

【1】自己評価意識

いわゆる“自己評価が高い系人材”は、あなたの周りでも必ず1名は顔が浮かんでくるのではないだろうか。「自分なりにやってますけど何か?」「ベストをつくしました」「取り組みは良かったと思います」「お客さんの反応は良かった」というように他者評価をほとんど意に介さない人材が、これにあたる。

組織コンサルティングを行ってきた我々の見解として、自己評価意識はマネジメントによって修正するのは極めて困難、と考えている。つまり、採ってしまったが最後で、在籍する限りは常に組織が求める成果を意識せず自己評価の中にいることになり、組織貢献度の低い人材として居続けられる状態になる。自己評価意識の高い人材は採ってはならない。

では、どう見抜くか。結論、候補者の発言を「事実」と「見解(意見)」で分けて捉える。見解を多く述べる人材は自己評価意識が高い傾向がある。先述の「ベストをつくしました」「取り組みは良かったと思います」「お客さんの反応は良かった」はすべて「見解」であり、事実ではない。面接を多く経験してきた読者は、見解ばかり述べる人材とは話が長くなる、という実感があるはずだ。なぜなら、事実が見えないために質問が多くなり、キャッチボールの回数が多くなるからだ。

自己評価意識を見抜くための質問

質問例としては、「全力で取り組んだ仕事とその達成度を教えてください」等がある。「全力で」という質問が、自己評価で回答するよう促しているのでいささか意地の悪い質問だが、この問いに対して、しっかりと客観的事実、達成率などの定量的実績を述べてくる候補者は期待できる。他者評価を意識して仕事ができる人物と評価できるのだ。新卒採用においても仕事ではなく、学生自体の取り組みなどに置き換えて質問すればよい。

【2】組織内位置認識

2つ目は組織内位置認識。耳慣れない言葉だが、入社前後のギャップ要因として非常に重要な要素である。この認識が低い人材も採ってはならない。当該社員の言動は以下の通り。

組織内位置認識の低い社員
・自分は賢いと勘違いし、自社の批判や評論にまわる
・自社の方針、ルールは基本自身が取捨選択できると考えている
・同時に、上司を上司と認識していないため、指示を聞かない
・業務指示に対して「なぜやるのか」といった納得、腹落ちを求めてくる

スキルセットが一見高く見えても、このような社員は組織全体にとってマイナスだ。こういったマインドセットも事前に見抜くことで採用後の事故を防ぎたい。「転職理由」や「仕事ぶり」を問いながら、自社や上司の過度な批判、または、自責に対する傍観者的発言を見逃してはならない。会社組織に属したことのない新卒採用においても、出身校や部活といった集団に対してどのような発言をするか注視すればよい。

オンライン面接の極意まとめ

オンライン面接のポイントをまとめると以下の通りとなる。

・面接では、スキルセットとマインドセットの2軸を見る
・スキルセットが高いと判断できても、マインドセットを見抜けなければ入社前後の不具合を防ぐことはできない
・よって、マインドセットを見誤らないこと
・識学でマインドセットは8つの要素に分解される
・面接では、特に自己評価意識と組織内位置意識の2つを意識して評価をすべし
・この2つを見抜ければ多くの不具合を回避できる

このように、収拾できる情報量の少ないオンライン面接でこそ、「何に注視して」面接するかを明確に設定できれば、面接力を向上させることができる。ここに記載したノウハウを実行し、有用性を検証しながら自社の採用力向上にトライしてみてはいかがだろうか。