仕事の成果ばかりに目が行きがちな今の時代ですが、エレガントな大人なら、その経緯や丁寧さにもきちんとこだわりたいところ。そこで“もう誰も叱ってくれない”大人のためのマナーをお伝えする連載、今月のテーマは、仕事ができる人こそ気をつけてほしい3つの言動について。リモートワークで電話やチャットの機会が増えたり、業務が忙しい人は必見です。
スマートワーキングとビデオ会議
※写真はイメージです(写真=iStock.com/seb_ra)

相手が聞き取れない発言は意味がない

「あの人は仕事が早い」──これって紛れもない褒め言葉ですが、そう言われている人ほど留意すべきマナーがあるのはご存じでしょうか? それは、“仕事上でせっかちになっていないか”という点です。

誰でも一度は経験あるのが「電話での受け答え」。あまりの早口に相手が要点を聞きとれず、会話がスムーズに進まなかったり、何度も聞き返されてしまったり……。これではどんなに急いでいても逆効果。自分勝手な印象すらもたれてしまいます。

たとえば自身の会社名や名前など、自分では何百回、何千回と言いなれていることでも、相手は初めて聞くこともあれば、ましてや電話を介していて聞き取りにくいことも。そもそもあなたが発する言葉は相手のためのものです。常に聞き取りやすいように配慮して、とくに電話口ではいつもに増して丁寧な発声を心がけましょう。何度もやり取りしているお得意様が相手の場合も同様です。

「もう一度お名前をよろしいでしょうか?」「少々お電話が遠いようでして……」と、聞き取りにくかったときの決まり文句をよく言われる人は要注意。もしかして原因は通話相手ではなく、あなたの早口すぎる話し方にあるのかもしれません。

相手の心に届かない話し方の特徴

また、電話のみならず普段の会話でも気をつけたいのが、相手の語尾をかき消してしまうような話し方。いわゆる相手の発言に“かぶせる”話し方です。

昨年10月のマナー配信「間の取り方」でもお伝えしましたが、相手の発言を最後まで聞かずに自分の意見を話し始めてしまうのは、ときに威圧的で、かつ否定的な印象に。そのときは滞りなく会話が進んだとしても、相手側にはどこか不快感が残ってしまいます。

「会話は言葉のキャッチボール」とはよくいいますが、これでは投げられたボールを自分の前でたたき落とすようなもの。それをされた人は決していい気持ちはしませんし、なによりその数秒を縮めることにどれほどの意味があるでしょうか。むしろデメリットとリスクのほうが大きいかもしれません。

相手の発言にかぶせるような話し方は、悪気はなくとも一種の癖になっている場合もあり、自分では認識するのが難しかったりもします。リモートワークによって急増したオンライン会議などでは、とくに発言が渋滞しやすいので注意が必要! 部下をはじめ、周りの人にそのような態度を取っていないかを今一度、振り返ってみましょう。

意識の向けどころが動作に出る

ビジネス ドキュメントを交換しています
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意外と気になる人が多いとされるのが、書類を受け渡しする際の振る舞いについて。あなたは部下が渡してきた書類を目線すら合わせず、まるで奪い取るようにパッと取り上げてしまってはいないでしょうか。きっと忙しさのあまりほかのことに意識が向いていて、わざとやっている人などほとんどいないと思いますが……言わずもがな、これも立派なマナー違反。先ほどと同じように当然悪気はなかったとしても、相手からしたらなんだかただの小間使いにされたような、いうなれば存在を無視されているような気にすらなるものです。

時と場合、そして間柄によっては必ずしも両手で受け取る必要はありませんが、どんなに急がしくてもあえてそこで時短するのはナンセンスですし、ましてや書類を乱暴に受け取ることで多忙アピールをするなんていうのは言語道断! 管理職にふさわしく、感情に流されることのない行動は信頼性にもつながる大切な部分です。

仕事が早い人は普段からの行動が素早く、決断力に優れていますが、そういう人ほど注意したいせっかちな言動。同じ仕事の成果を上げられたとしても、細やかな振る舞いによってあなたが“迅速で仕事ができる人”か、それとも“いつも慌ただしくせわしない人”か、印象が分かれます。

エレガントな人ほど動作がやわらかくゆっくりしているものです。常に落ち着きのある振る舞いができるように、クライアントの前だけで意識するのではなく、普段からの心がけが大切です。