MBAを取得し一部上場金融機関に勤務した後に企業経営を経て、なんと幼稚園の副園長となった森田晴彦さん。潰れかけた幼稚園を短期間でV字回復させたヒントは、会社とは程遠い幼稚園の中に落ちていたといいます。幼稚園の「当たり前」が教えてくれた、難しい経営理論よりもシンプルで本質的なビジネスのコツとは――。

※本稿は、森田晴彦『MBAでは教えてくれない リーダーにとって一番大切なこと』(彩流社)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/real444)

幼稚園の先生が子供と目線を合わせる理由

外国人の先生が、私たちの幼稚園に常駐することになってから、日本人の先生と外国人の先生のさまざまな違いに、私は気が付くようになりました。

日本人と外国人の行動の違いは、ほんのささいな一瞬の動作にも表れます。たとえば、子どもが困っているときに、先生が歩み寄るシーンです。日本人の先生は、すぐに床に膝をついて、子どもに目線を合わせて話を聞きます。子どもに何が起きたのかをより良く知るために、そして何より子どもに安心感を与えるために、日本人の先生たちは躊躇なく、膝を床や地面につけて、子どもに寄り添う姿勢になります。

一方で、外国人の先生はこうしたシーンで、床に膝をつけて子どもに目線を合わせるということはなかなかしないように思います。一度、そのことを外国人の先生に聞いてみました。すると、その先生は「教師と子どもの立場の違いを、しっかり明確にさせるために、ひざまずくということはしませんね」と教えてくれました。もちろん、私たちの幼稚園に勤務する外国人の先生には、日本の教育観をしっかり伝え、共感してもらった上で、必要な時には子どもと目線を合わせるために、膝をついて子どもたちと接してもらっています。

子供から見えている世界を覗いてみる

私も、ときどき、しゃがみこんで園児がみている世界をのぞいてみることがあります。子どもの目線までしゃがんで見えるその風景は、私がいつも見ている風景とまるで違います。地面が近く、先生の顔ははるか頭上にあります。子どもの視野は大人よりも狭いと思われがちですが、子どもは大人には見えない広い世界を実は見ているのです。

森田晴彦『MBAでは教えてくれない リーダーにとって一番大切なこと』(彩流社)

子どもはよく、公園や道端で拾った棒きれや小石を拾って、家に持ち帰ろうとすることがあります。お母さんは「そんなの、置いておきなさい。家に持って帰ってもゴミになるだけだから」と言うかもしれません。たしかに大人にとっては、棒きれはゴミにしか思えないかもしれませんが、子どもにとっては、広い広い世界の中から見つけた、大切な宝物です。大人が子どもの考えや想いを理解するのは難しいことですが、私たち教育者は、いつも子どもの目線になって、歩み寄らないといけません。

顧客の立場を理解するには

ビジネスの現場においても、顧客の立場や目線に立つことは、とても重要です。モノが売れるときは、顧客のニーズと商品がマッチしたときです。顧客が何を欲しているのか、何に困っているのかを理解しようとせずに、解決策となる商品やサービスは提供できないのです。仕事は商品やサービスがあるから成り立つのではなく、ニーズがあるから成り立つのです。

これは、とても基本的で当たり前のことのように思えますが、商品やサービス、コンセプトばかりにフォーカスして、顧客が本当は何を欲しているのかが、見えていない企業はとても多いと感じます。たとえば、エナジードリンクのCMを思い出してみてください。企業がどんなことをアピールしているか、皆さんは覚えていますか? 各企業は、飲んだ時に感じる味や、そのドリンクが体にどれだけ良いかではなく、タウリンが何ミリグラム入っているかを一生懸命伝えようとしています。ライバル企業が500ミリグラムなら、こっちは1000ミリグラム入れるぞ。なら、こちらは2000ミリグラムだ! というように。

当然ですが、私たちはタウリンが欲しくてエナジードリンクを買うわけではありません。「元気になりたい」「エネルギーをチャージしたい」という気持ちからであることを、顧客の視点に立って理解することが重要なのです。一流と言われている企業でも、いざ競争に巻き込まれたりして回りが見えなくなると、つい顧客の目線を忘れてしまいがちになります。「売りたい」という気持ちが先行し、「顧客が知りたいこと」ではなく「企業が伝えたいこと」が優先されてしまいます。

意見が違うときこそ自分の目線を押し付けない

相手をまず理解し、受け入れることは、言いたいことを的確に伝えるために、必要なプロセスなのです。

特に、リーダーは、たくさんの部下のさまざまな意見を束ね、ひとつのゴールに向かっていかなければなりません。部下の意見が自分の意見と違う場合、ついリーダーは自分の意見を押し通したくなるものです。しかし、自分の意見にだけ固執してしまうのは、とてももったいないことです。自分とは異なる視点は、自分だけでは気づくことができない大切なことをチームにもたらしてくれるはずです。