前回に続き、税金のお話です。今回は「節税」について解説しましょう。日本は世界的にも重課税国。払うべきものは払わなければなりませんが、うまく節税できるならそれに越したことはありません。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

女性の稼ぎ力を阻む“配偶者控除”

『プレジデント ウーマン』の読者の方には少ないかもしれませんが、女性の節税という点で、一般的に切実に考えられているのが「配偶者控除」です。

従来この制度は、妻の年収が「103万円」を超えると適用されませんでしたが、2018年に改正され、「201万円」まで特別控除を受けられることになりました。

「それはありがたい! これでもう少し所得を増やしても控除を受けられる」。……ついつい喜んでしまいそうですが、果たしてそれでいいのでしょうか?

実はこの制度、女性の自立という点から見ると、マイナスに作用する可能性が高いのです。確かに「家計の税負担」にとってはプラスですが、枠にこだわりすぎると、働き方が著しく制限されてしまいます。つまり「配偶者控除を受けるためには、私は年収201万円を超える仕事に就いちゃいけない!」という考えです。

これが、配偶者控除で陥りがちなワナです。つまり、豊かになるために始めたはずの共稼ぎが、いつの間にか「控除を受けることが目的」になってしまうのです。

配偶者控除に縛られていると、どうしても発想が「引き算」になり、気がつくと「いかに所得を増やさないか」ばかりを考えてしまいます。せっかく就業チャンスに恵まれても、こんな守りの発想に足を引っ張られたのでは、かえって不幸です。

本来、税は稼げば当然支払うものです。対して配偶者控除は「稼ぎが少ない人への救済」です。これは課税とは発想の違う、弱者救済のための一種の社会保障です。就業時にまず社会保障を気にする人は、「稼ぎたい」より「守りたい」の気持ちが強い人です。

金を稼ぐチャンスになるたび、どこからともなく「ただし201万円までだがな!」という声が頭の中に響いてくる人は、弱者サイドです。この声の主は、天使なのか悪魔なのか!? 少なくとも、女性がリッチになるのを邪魔していることだけは確かです。

だから女性たちは皆、この考えを思い切って捨ててしまいましょう。心配はいりません。控除以外にも、節税方法はいくつもあります。会社員でもできる節税方法を、いろいろ考えてみましょう。

「つみたてNISA」と「iDeCo」は基本

まずはオーソドックスに、この辺から攻めてみましょう。

この2つは、感覚的には「預金」に近いです。ただし普通の預金と違い、預金すればするほど税金が安くなるといったニュアンスです。

2018年から始まった、つみたてNISAは「少額からの長期の積立・分散投資を支援するための非課税制度」です。毎年40万円まで、最長20年間、投資の運用益が全額非課税になります。通常、投資の運用益には20%少々の税金がかかりますが、そこが非課税になるのはうれしいですね。ただし運用は「低水準だがリスクが少ない商品」に限られますから、感覚としては「少しだけ割のいい預金」に近い節税です。

一方iDeCoは「個人型確定拠出年金」、つまり任意で加入し、自分で運用方法を選ぶ私的年金です。これは職種により毎月運用できる額に制限はあるものの、公的年金同様の扱いを受けるため、節税効果は非常に高いです。運用益が全額非課税なのはもちろんのこと、月々の掛金も全額所得控除され、年金受取時にも各種控除が受けられます。

ちなみに月々の掛金は、自営業者ならば上限月額6万8000円、会社員なら上限2万円前後というのが一般的です。ただし、つみたてNISAと違い、途中で商品を売却して資金を引き出すことができません(原則60歳まで引き出せない)。なので、資金に余裕がない人には、あまり掛金を高くしすぎないようお勧めします。

本業以外に収入があるなら「青色申告」

会社での仕事以外に副業や不動産所得がある人なら、青色申告です。青色は通常の確定申告(白色申告)より書類作成に手間がかかりますが、その分見返りが大きいです。なんと青色にすると、65万円もの控除(青色申告特別控除)を受けることができるのです。

しかも青色だと、経費が認められます。これも相当大きいです。800万円の所得に対し300万円分集めた領収書が経費として認められれば、あなたの課税対象所得は500万円とみなしてもらえます。事業内容に関係がある出費は、パソコンだろうがインクだろうが書籍だろうがタクシー代だろうが食事代だろうが経費になる可能性がありますので、嬉々として領収書を集めましょう。

なお、書類作成に手間がかかると言いましたが、会計ソフト「freee」を使えば、白色とほぼ同じ手間で、書類を作成できます。これは、やらないと損です。

「法人設立」は節税効果抜群!

最後の奥の手としては「法人設立」があります。

これは会社が副業を認めている人限定です。実は私も、自由度の高い職業(予備校講師と執筆)に就いているため、法人設立をしていますが、節税効果は非常に高いです。具体的には「青色よりもさらに経費の幅が広がる/法人役員用の生命保険に加入でき、法人の利益を圧縮できる/小規模企業共済(退職金制度)への積立金が所得控除される/倒産防止共済(倒産への備え)への掛金が法人の損金となって節税でき、しかも全額返ってくる」などです。

ただし、これは自分がやっているからわかりますが、いいことばかりではありません。法人設立にかかる費用(節税効果の高い法人にするには税理士の指導が不可欠なので、その費用がかかります)、法人税・消費税の支払い(収入は通常「売上金」になるので、それに対する消費税を納税します)、税理士への月々の顧問料、社会保険への加入など、お金もかかりますし、面倒なことも多いのです。

そのほかにも、住宅ローン減税・ふるさと納税・医療費控除など、節税効果のあるものは、探せばいくらでもあります。

節税する際に気をつけてほしいのは、劇的な効果を期待しないことです。脱税につながるリスクを負ってまで派手な節税をするよりも、多方面に少しずつ気を配った結果、ちりも積もれば山となっているのが、健全な節税です。

基本は常に「しっかり稼いで、しっかり納税」ですが、できる努力はしちゃいましょう。健全な節税は、慣れてくると達成感が楽しいし、貯金箱に1円玉をコツコツ貯めていくような喜びがあります。皆さんもぜひ、この機会に取り組んでみてください。