秋から冬は乾燥の季節。肌のうるおいも失いがちなこの時期、肌以上に乾燥しやすい唇のケアにぬかりはない? 見た目印象をダウンさせる「荒れた唇」の正しいケア方法をマスターしましょう。

環境変化に早めの一手が必須!

季節の変わり目、特に秋から冬に変わる頃は、全身の至るところに一年でもっともケアが必要と感じる時期でもある。なかでも唇は荒れてしまうと、話すことや食べることにも影響するだけでなく、自身の不快感以上に、人の目線がいきやすい箇所でもあるため、特に気にする女性も多いはず。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Dutko)

ビジネスシーンはもちろん、化粧やおしゃれを楽しみたいイベントも増えるこれからの季節、荒れた唇では口紅のノリが悪いだけでなく、唇の血色が悪くなり、メイクも映えないという悲しい事態にもつながってしまう。

そこで、唇の正しいケアについて、東京・六本木のアオハルクリニック院長で皮膚科医の小柳衣吏子医師に話を伺った。

「秋頃、特に最低気温が10度を下回る11月中旬以降は、気温の低下だけでなく湿度も下がり、空気の乾燥により唇荒れが起こりやすい環境といわれています。秋冬は、空気の乾燥に加え、屋内と屋外との温度差や湿度差など、唇にとって過酷な季節。クリニックに来院される患者様の唇荒れが特に気になる時期でもありますね。肌をケアすることも大切ですが、唇のケアも早めに対策し怠らないようにすることが大切です。唇が荒れていると見た目の印象も変わってきます。唇荒れが重症化する前にしっかりとケアをして、唇のうるおいと本来の血色を取り戻しましょう」

唇ケアは早さが命! ケアアイテムの選び方もキモに

唇は皮膚と粘膜の移行部であり、ほかの部分の皮膚と異なり皮膚膜がほとんどなく、角質層が薄く毛細血管が密集しているのが特徴だ。

唇のターンオーバーは3.5〜10日間と唇以外の皮膚と比較すると早いため、正しいケアをすればそれだけ早く効果も得られやすい部位ともいえる。

「唇の荒れを改善するには、ケアアイテムの選び方と塗り方の正しい知識が必要です。リップクリームには大きく分けて化粧品と薬用、さらに医薬品の3種類がありますので、症状に合わせて選ぶようにしましょう。きちんと選んで、正しく塗れば、ひどく荒れた唇もたった3日で改善できる可能性もあります」

画像提供=ユースキン製薬

新事実! 利き手によって唇の荒れる場所が違う理由

長年、手荒れの正しいケア法を提唱し、ヒビやシモヤケ、アカギレなどの手荒れに効くハンドクリームを製造販売してきたユースキン製薬が、皮膚科医監修のもと唇についてのモニター試験を実施。その結果により、小柳先生は唇には荒れやすい場所があることや、唇荒れがさらに荒れを引き起こす「唇荒れスパイラル」があることに注目した。

「モニター試験で、利き手の反対の下唇が荒れるなど、人によって塗り方にクセがあることがわかりました。リップクリームの塗り残しがあるのかもしれません。また、荒れた唇が改善するとともに、唇をめる・む・ギューッと閉じるなど、唇の刺激になるNG行動も減少しました。このことから、唇の荒れが気になって舐めてしまっていたのではないかと推測されます。唇の荒れが荒れを助長する“唇荒れスパイラル”につながっていたのです」

唇荒れの3大NG行動は、唇を「舐める」「噛む」「上唇と下唇を互いに強く押しながら閉じる」ことだそう。どれもつい無意識でやってしまいがちだが、リップクリームを塗れないときや、秋冬の乾燥シーズンには特に気をつけたい。

リップクリームの正しい選び方と塗り方とは

前述のとおり、きちんとしたリップケアは唇荒れの改善だけでなく、血色も良くなり、見た目の印象も明るくなる。さらに、唇の荒れを助長するNG行動がなくなることで「荒れにくい」唇を育てていける可能性も。

そこで、自分の唇の状態に合った正しいケアアイテムの選び方、そして塗り方について伺った。

「乾燥しがちなときは、化粧品や薬用のリップクリームなど自分の唇に合うものを使いましょう。唇が割れがちなときは薬用を選び、刺激の少ないものがオススメです。ヒビ割れやただれがあるなら、治療効果のある『医薬品』と表記のあるものを選びましょう。また、塗り方については、唇を上下4つのブロックに分け、1ブロックずつリップクリームを、縦に円を描くようにマッサージしながら塗ると、塗りムラがなくなります。塗る際は荒れやすい口角を意識しましょう。リップクリームの量を意識し、指でなじませるようにマッサージするといいですよ。ケアをしても改善しない場合は速やかに専門医の受診をオススメします」

リップクリームの塗り方
画像提供=ユースキン製薬
【4ブロックリップマッサージ】

①唇を上下左右の4ブロックに分ける
②1ブロックずつ、唇の縦ジワに沿ってリップクリームを塗る
③唇の縦ジワに沿って中央から口角へ向けて、楕円を描くようにやさしく塗る
④荒れやすい内側を意識して塗るのがポイント!

*直接、指で塗るジャータイプの場合は強く押し当てずに馴染なじませるようにやさしく塗るように注意。荒れがひどいときは、量を多めに取って塗るとよい。

4ブロックリップマッサージ動画サイト
【リップクリームの選び方】
◆乾燥しがちな唇:化粧品リップクリーム/薬用リップクリーム
◆割れがちな唇:薬用リップクリーム
◆ヒビ割れ、ただれ、口唇炎、口角炎がある場合:医薬品リップクリーム

就寝前の新しいメソッドケアで唇を荒れから正しく守る

先出のモニター試験を実施したユースキン製薬は検査結果を受け、唇荒れの実態から、新しいリップケアメソッド「4ブロックリップマッサージ」を小柳先生監修のもと開発した。夜寝る前にこのメソッドを実施してもらったモニター試験では、参加者全員の唇荒れが改善したとか。その方法とは……。

「最大のポイントは、唇をブロック分けして1つのブロックごと丁寧に塗っていくこと。これまでは上唇から下唇までグルッと横に回しつけるのが主流だったと思いますが、そのやり方では利き手によって塗りムラが出る可能性があることがわかったため、少しずつ塗っていくという方法を考えました。また、この塗り方は唇をマッサージしながら塗るので、血行促進につながり血色改善も期待できます。荒れやすい口角はより気をつけて塗っていただきたいですが、特に症状が気になるときは、就寝前のスペシャルケアとして、同じ要領でやさしく行うのがオススメです」

放っておくと深刻にもなりかねない唇の荒れ。見た目の悪さだけにとどまらず、皮がむけ痛みを伴う場合は仕事に集中できないばかりでなく、プライベートの楽しい時間の妨げになる恐れも。寝る前に簡単にできるメソッドで、これからやって来る厳しい季節を乗り越えよう。

小柳 衣吏子(こやなぎ・えりこ)
ウェルエイジングをめざす患者のため日々探求している皮膚の専門家。平成23年、東京・六本木のAOHAL CLINIC院長に就任。著書に『美肌の王道』(日経BP社)など。雑誌、テレビ番組などメディアでも活躍中。