WHOの報告によると「不妊に悩む夫婦のうち、男性のみに原因があるケースが24%、男女ともに原因があるケースが24%」。不妊カップルの約半数は、男性にも原因があるということがわかります。今回のテーマは「男性不妊」。妊活や不妊治療に取り組む夫婦をサポートする事業を展開する、吉川雄司さんとともに「男性不妊」のリアルをひもといていきましょう。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/miya227)

100〜200人に1人は無精子症

男性不妊の主な原因の一つは、精子を正常につくることができない造精機能障害です。また、勃起障害や射精障害が原因で妊娠に至らず悩む男性も多くいます。

「精液のなかに精子が一匹もいない状態を、無精子症といいます。無精子症は100〜200人に1人と言われています。決して珍しい症状ではない、と思いませんか? また、精子の数が少ない乏精子症、精子の数は正常だけれど運動率が悪い精子無力症と診断される人もいます」

ただ、精子の状態は日によって大きく異なります。そのため、乏精子症や精子無力症に悩む人がどのくらいいるかは、正確なデータをとることが難しいそう。

「座りっぱなしの時間が長いこと、ストレス、不規則な食生活、お酒の飲み過ぎ、いろいろな生活習慣が重なって、精液の所見が悪くなることもあります。精液検査で自分の精子の健康状態を把握しつつ、精子にいい生活を心がけることが大切ですね」

一般男性の15%に不妊のリスク要因がある

自覚症状はないものの、精子の健康状態を悪化させる症状もあります。

「精巣にこぶがある、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)の症状がある男性は、約15%と言われます。血流を悪化させたり、精巣の温度が上がってしまうことがあるため、不妊の原因となります。精索静脈瘤があるからといって精子が不健康とは限りませんが、10人に1人か2人はリスク要因を持っている、ということです」

精索静脈瘤の有無は、泌尿器科での検査でチェックできます。

妊活をスタートするときには男女いっしょに検査を受けることが推奨されているのは、精子に問題を抱える人が決して珍しくないから。男性側の原因を見逃したために、時間や治療費用をムダにしてしまうケースも少なくないのです。

排卵日セックスが妊活男子のメンタルを直撃!

勃起障害や射精障害も、不妊の原因となります。性行為のときに勃起ができなかったり、継続しない勃起障害は、プレッシャーやストレスなど精神的な問題が影響すると言われています。

妊活中のカップルでは「妻だけED」や、排卵日周辺のタイミングのときだけ性交が難しい、という悩みも。

「男性なら多くの人に経験があると思いますが、メンタルに左右されるところもすごく大きい。『今日排卵日だからよろしくね』と言われることがプレッシャーとなり、セックスが苦痛になってしまう、ということもありえます。

セックスは、夫婦のコミュニケーションとしての側面と、子どもをつくるための側面がありますよね。子どもを作ろうとするとうまくいかないのであれば、人工授精など、医療の助けを借りるのもいいと思います。だって、人工授精なんて、そのプロセスは自然妊娠とほとんど変わりませんから」

妊活をスタートしてから、セックスが子作りのための義務でしかなくなってしまった、というエピソードは、多くの妊活カップルから聞かれるもの。「2人の赤ちゃんが欲しい」という望みのために、かえって夫婦関係がギスギスしてしまうなんて、こんな悲しいことはありません。

もし精神的なプレッシャーから勃起障害、射精障害に陥っているなら、夫婦のコミュニケーションと子作りを切り分けるという視点を持つことで、お互いにストレスから解放されることもありそうです。

強い刺激に慣れすぎると、射精障害のリスクが高まる

自慰行為では問題なく射精まで至れるのに、膣内では射精ができない、という障害も。間違った自慰行為が原因になると言います。

「自慰行為の際にグリップが強いとか、床に押し当ててする人、ちょっと変わったAVが好きな人などは、普段のパートナーのセックスで興奮できなかったり、刺激が足りなかったりして射精ができないこともある。男性むけのセミナーなどで『床オナしてませんか?』と投げかけると、みなさんかなり興味を持って聞いてくれます」

強すぎる刺激に慣れてしまった人のために、膣内射精障害を改善するトレーニングツールも登場しています。

自慰行為は超プライベートゾーン。学校で教わることもなければ、男性同士でも、その方法をオープンに話すことはなかなかないでしょう。適切なマスターベーションを学び直すことも、妊活の準備といえるかもしれません。