30~40代の女性の多くは、ビタミン・ミネラル不足
ここ数年、女性の栄養不足が問題となっています。そもそも「栄養素」とは、「人間が生命を維持するために必要な成分」のこと。タンパク質、炭水化物(糖質)、脂質、ビタミン、ミネラルの5つを指します。
「栄養不足」とは文字どおり、生きるために必要な栄養素が不足している状態。グラフで30代女性の栄養の摂取状況を見ると、ビタミン・ミネラルが厚生労働省の推奨する、健康の維持・増進に必要な量に足りていないことがわかります。40代女性もほぼ同じ状況なので、30~40代の女性は、生きるために必要なビタミン・ミネラルを十分に摂取できていない人が多いといえます。
では、なぜビタミン・ミネラルが不足するのでしょうか。その原因のひとつは、朝食を食べないこと。人間の胃の容量は、1.5~2.0リットルで満腹状態になり、1日3回食事を摂ることで必要な栄養素を摂取しやすく、栄養バランスも整ってきます。しかし、「国民健康・栄養調査」によると、朝食をまったく食べない人のほか、朝食として菓子パンやフルーツだけを食べる人、サプリメントなどの錠剤を飲むだけの人も。つまり、朝食を食べているつもりでも、十分な栄養素が摂れていない場合があるのです。
・朝食を食べない
・野菜不足
・食べる野菜の種類が少ない
野菜の量と種類を意識して食べよう
野菜不足も、ビタミン・ミネラルが不足する原因のひとつ。ある種のビタミン・ミネラルの推奨量や目安量を摂取するためには、1日350~400gの野菜が必要とされています。しかし、同調査によると、1日350g以上の野菜を食べている人は30代女性で17.4%、40代女性で22.1%と圧倒的に少なく、野菜不足であることがわかります。
さらに、ビタミン・ミネラル不足を解消するには、食べる野菜の種類を意識することも大切です。日本人が日常的に食べている野菜は「トマト、ニンジン、ホウレンソウ、ピーマン、キャベツ、キュウリ、ダイコン、タマネギ、ハクサイ」の9種類程度。さらに緑黄色野菜より、いわゆる淡色野菜の摂取量のほうが多い状況です。
グラフを見ると、日本人がよく食べる野菜だけでは、摂取できるビタミン・ミネラルに偏りがあることがわかります。つまり、野菜不足だからと、やみくもに野菜の量を増やすだけでは、ビタミン・ミネラル不足を改善することは難しく、いろいろな野菜、特に緑黄色野菜を意識して摂ることが重要なのです。
不調の改善には、三大栄養素の摂取が不可欠
ビタミンやミネラルは生命を維持するために、体内で多様な役割を果たしているもの。例えば、ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える際に必要な栄養素です。そのため、不足すると、疲れ・だるさなど、さまざまな不調をもたらします。
しかし、栄養素はすべてが連動して生命を維持しているうえ、心身の不調も多様な要因が重なって引き起こされます。そのため、特定のビタミン・ミネラルを補うだけでは不調を改善することは困難です。
何より大切なのは「タンパク質、炭水化物、脂質」の三大栄養素をきちんと摂取し、栄養のバランスを整えること。そのうえで、疲れがひどいときはビタミンB1を補うなど、不調に応じたビタミン・ミネラルをプラスしていくことが重要です。そこで今回は、不調の改善に役立つビタミン・ミネラルを紹介します。
ツラい症状を感じたら、食べ物で改善!《不調別》摂りたいビタミン&ミネラル
【疲れ・だるさ】
ビタミンB1と鉄で、エネルギーの産生をサポート
“疲労回復ビタミン”と呼ばれる「ビタミンB1」の補給を。ビタミンB1は、糖質がエネルギーに変わるときに必要で、不足すると糖質が分解されず、活動のためのエネルギーも不足し、疲労がたまりやすくなります。さらに脳や神経にエネルギーが送られず、疲労感やだるさを引き起こすことも。
また、「鉄」は酸素を全身に運ぶ赤血球の材料に。不足するとエネルギー代謝が滞り、無力感を招きます。そのほか臓器の新陳代謝の低下も疲れの原因に。アミノ酸の代謝やタンパク質の合成を助ける「ビタミンB6」「亜鉛」を摂取して。
ビタミンB1……エネルギー代謝に必須で、疲労感・倦怠(けんたい)感などの不定愁訴を軽減
鉄……赤血球の構成材料となり、無力感・食欲不振を軽減
ビタミンB6……タンパク質の代謝に必須
亜鉛……体内でのタンパク質の合成に必須
▼摂取できる食品
豚もも肉、ハム、きな粉、マグロ、ホウレンソウ、雑穀 など
【不眠】
ビタミンB12には、睡眠・覚醒リズムの調整作用が
不眠の原因は、心身のストレスや体調不良、不快な睡眠環境など実にさまざま。それによって、改善策は異なります。
ただ、最近の研究では、「ビタミンB12」に睡眠・覚醒リズムを調整する作用があることがわかっています。また、「マグネシウム」には心理的・身体的なストレスを軽減する働きがあるので、心身のストレスからくる不眠の場合は「マグネシウム」を摂るといいでしょう。さらに、「ビタミンB6」はイライラや情緒不安定の緩和に役立つので、併せて摂るのがおすすめです。
ビタミンB12……睡眠・覚醒リズムの調整
マグネシウム……心理的・身体的なストレスの軽減
ビタミンB6……イライラや情緒不安定の緩和
▼摂取できる食品
アサリ、ハマグリ、イワシ丸干し、カキ(貝)、サバ缶、イワシ缶、サンマ缶 など
【食欲不振】
鉄が不足すると、貧血から食欲不振に
食欲不振も不眠と同様、原因が多岐にわたるもの。そのため、疲れが原因なら「ビタミンB1」、ストレスなら「マグネシウム」など、原因に応じて、ビタミン・ミネラルを摂ることが大切です。
また、「鉄」が欠乏して貧血になると、食欲不振を招くことも。鉄に加えて、赤血球の構成材料となるタンパク質の代謝に必要な「ビタミンB6」を摂りましょう。さらに、味覚障害が原因の場合は「亜鉛」を補給。亜鉛が不足すると、舌などにあって味を感じる「味蕾(みらい)」の細胞が生まれ変わりにくくなり、味覚障害を引き起こします。
鉄……食欲不振を軽減
ビタミンB6……タンパク質の代謝に必須
亜鉛……体内でのタンパク質の合成に必須
▼摂取できる食品
カツオ、蒸し大豆、納豆、鶏レバー、牛ひき肉、雑穀 など
【イライラ】
抗ストレス作用をもつビタミンCを補給
「ビタミンC」と、ビタミンB群の一種である「パントテン酸」は、ストレスに対抗するホルモンの合成に不可欠なもの。抗ストレス作用があり、イライラをやわらげるのに役立ちます。
そのほか、心理的・身体的なストレスの軽減にかかわる「マグネシウム」や、神経の興奮を抑える働きがある「カルシウム」も、イライラの緩和に役立ちます。また、エネルギーが不足すると、体だけでなく気持ちも不安定になる傾向があります。そんなときは、エネルギーの代謝に必要な「ビタミンB1」を意識して摂ってください。
ビタミンC……ストレス対抗ホルモンの合成に必須
パントテン酸……タンパク質の代謝に必須
マグネシウム……心理的・身体的なストレスの軽減
カルシウム……神経の伝達に関与
ビタミンB1……エネルギー代謝に必須
▼摂取できる食品
ブロッコリー、水菜、小松菜、モロヘイヤ、春菊、チーズ、ヨーグルト など
【肌荒れ】
ビタミンCは、コラーゲンの合成に不可欠
肌を構成する材料として、タンパク質は必要不可欠。タンパク質はアミノ酸から成るため、アミノ酸の代謝に必要な「ビタミンB6」や、タンパク質の合成に欠かせない「亜鉛」が不足すると、肌荒れを招きます。
また、臓器や筋肉を支えるコラーゲンの合成には、「ビタミンC」が必須です。さらに、新陳代謝にかかわる「ビタミンA」、“皮膚のビタミン”といわれ、タンパク質や脂質の代謝にかかわる「ビタミンB2」も、日ごろから不足しないよう心がけたいものです。
ビタミンC……コラーゲンの合成に必須
ビタミンB6……タンパク質の代謝に必須
ビタミンA……新陳代謝を促進
ビタミンB2……タンパク質・脂質の代謝に必須
亜鉛……体内でのタンパク質の合成に必須
▼摂取できる食品
赤パプリカ、カボチャ、菜花、小松菜、ブロッコリー、豆苗、鶏レバー など
【シミ・シワ】
抗酸化作用のあるビタミンで、肌の老化をストップ
シミ・シワの大きな原因のひとつは、紫外線です。日々の生活の中で紫外線を浴び続けると、肌の老化を招く活性酸素が体内に発生し、シミやシワを引き起こします。これを防ぐには、抗酸化ビタミンである「ビタミンC」「ビタミンE」を摂ることが大切です。また、緑黄色野菜に含まれ、体内でビタミンAになる「βカロテン」も、抗酸化物質として作用します。
ちなみに、ビタミン・ミネラルではありませんが、リコピンやポリフェノールといった抗酸化物質も、シミ・シワ予防に役立ちます。
ビタミンC……抗酸化
ビタミンE……抗酸化
βカロテン(プロビタミンA)……抗酸化
▼摂取できる食品
モロヘイヤ、菜花、赤パプリカ、カボチャ、ブロッコリー、スイカ、ミニトマト、オリーブオイル など
【抜け毛】
タンパク質の合成に必要な栄養素を摂って
抜け毛の主な原因は、髪の材料となるタンパク質不足。タンパク質は20種類のアミノ酸が組み合わさったものなので、この代謝に必要な「ビタミンB6」を摂ることが重要です。加えて、タンパク質の合成に不可欠な「亜鉛」や、タンパク質と脂質の代謝にかかわる「ビタミンB2」を補給しましょう。さらに、新陳代謝を促し、頭皮の健康維持に役立つ「ビタミンA」も摂取して。
また、ホルモンバランスの乱れによる抜け毛の場合は、ホルモン分泌調整作用がある「ビタミンE」を摂りましょう。
ビタミンB6……タンパク質の代謝に必須
亜鉛……体内でのタンパク質の合成に必須
ビタミンB2……タンパク質・脂質の代謝に必須
ビタミンA……新陳代謝を促進、頭皮の健康維持
▼摂取できる食品
マグロ、牛肉、鶏ひき肉、きな粉、ナッツ類、チーズ、ヨーグルト など
【冷え】
血の巡りを促す、ビタミンEやナイアシンを
「ビタミンE」と「ナイアシン」には血行促進作用があります。また、貧血も冷えにつながるので、「鉄」不足に注意してください。
ただ、冷えの原因は人それぞれ。例えば、自律神経の乱れから冷えが生じることもあり、さらに自律神経が乱れる原因もストレスや睡眠不足、朝食の欠食、朝に太陽光を浴びないなど、さまざま。1度、普段の生活スタイルを見直してみるといいでしょう。また、ビタミン・ミネラルではありませんが、血行促進にはタンパク質やカプサイシンもおすすめです。
ビタミンE……血行の促進
ナイアシン……むくみ改善
鉄……貧血予防
▼摂取できる食品
落花生、タラコ、ツナ缶、ウナギ蒲焼、サバ缶、調整豆乳 など
【PMS】
栄養バランスを整えつつ、症状に応じた改善策を
PMS(月経前症候群)にはイライラやストレス、お腹の張り、むくみなど多様な症状がみられます。栄養バランスを整えることで、不快な症状は改善されることが多いですが、併せて症状に応じたビタミン・ミネラルを摂るといいでしょう。
イライラや気分のむら、不安といった症状には「ビタミンB6」、心理的・身体的なストレスには「マグネシウム」の補給を。さらに、「ビタミンE」も精神機能の安定に役立ちます。また、むくみが気になる場合は、利尿作用のある「カリウム」を摂るようにしましょう。
ビタミンB6……気分のむらやイライラ、不安、腹部膨満などの緩和
マグネシウム……心理的・身体的なストレスの軽減
カリウム……むくみ改善
ビタミンE……精神機能の安定化
▼摂取できる食品
きな粉、ナッツ類、マグロ、蒸し大豆、バナナ など
【更年期障害】
ビタミンEを摂取して、ホルモンの分泌を調整
更年期障害は女性ホルモンの影響によるところが大きく、大豆イソフラボンが諸症状の改善に役立つとされています。
ビタミン・ミネラルで根本から改善することは難しいのですが、「ビタミンE」にはホルモン分泌調整作用があります。
また、PMSと同様、不快な症状に応じてビタミン・ミネラルを補給することも○。イライラや気分のむら、不安といった症状があるなら「ビタミンB6」を、心理的・身体的なストレスがあるなら「マグネシウム」を摂りましょう。
ビタミンE……ホルモン分泌の調整
ビタミンB6……気分のむらやイライラ、不安、腹部膨満などの緩和
マグネシウム……心理的・身体的なストレスの軽減
▼摂取できる食品
きな粉、蒸し大豆、赤パプリカ、調整豆乳、納豆、ブロッコリー など