本誌夏号から前回まで投資やバブルについてお話してきました。これまでの内容を基に、また投資スタイルが多様化してきた現代の事情を踏まえて、われわれが今後するべき投資の姿を考えてみたいと思います。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Kengo-Matsuura)

歴史上の事例は、反面教師として学ぼう!

経済史から学べる教訓は、どうもみなさんが学ぶべきではない「反面教師」の事例のほうがはるかに多いようです。いくら世界一の大金持ちでも、ヘティ・グリーンみたいにケチでギネスに載るような生活はイヤですし、リバモアも成功と破産を繰り返し、最後は自ら命を絶っています。ケインズにも破産の危機はありましたし、日本のバブル期も、極端な浮き沈みの結果、破滅というイメージが強いのではないでしょうか。

参考までに、バブル期もっとも有名だった女性に“北浜の女相場師”尾上縫(おのうえ・ぬい)がいましたが、彼女は時流に乗っているときは、料亭の女将をしながら「占いと神のお告げ」で株式相場に勝ち続け、銀行からも数千億円単位の融資を受けていました。しかしバブル崩壊とともに没落し、最後は信金支店長と組んで預金証書を偽造したのがバレて、懲役12年の実刑判決を受けています。しかしながら、反面教師も「教師」です。彼らと同じてつを踏まないという教訓の中に、成功へのヒントが隠れているはずです。

ゴール設定のない投資はギャンブルと同じ

失敗した相場師たちに、おおむね共通しているのは、「投資自体が目的」になっていることです。おそらく彼らを投資に駆り立てた原動力は「金が欲しい! もう貧乏はイヤだ!!」みたいな、粗くて暗くて強い衝動であり「○○を実現するために、いつまでにいくら稼ぐ」という堅実で具体的な目標ではなかったと思われます。こういう人が、なまじ投資に成功すると、やめられなくなります。暗い動機、強烈な成功体験、ゴール設定のない投資は、引き際を失ったギャンブルと同じです。いつしか彼らの思考は「マネーゲームが楽しい」だけのギャンブル脳になり、そういう人は、たとえ1000万円稼いでも、それを2倍にすることしか考えられなくなります。投資がリスクの伴うものである以上、「やめられないギャンブル」は、いつかリスクで身を焦がすことになります。リスクと達成感そのものを快感としてはいけないのです。

長期的な投資プランが成功のカギ

ならば、どうすればいいか? そう、みなさんは「明確な目的をもった投資」をしましょう。たとえば、みなさんの目的が「豊かな老後」だとしたら、そのためには「何歳までにいくら稼げばいいか」を決めてしまいましょう。「60歳までに1500万円」だとしたら、その長期的な計画に合わせて投資プランを立てます。

投資プランは、長期になればなるほど、リスクを減らす選択肢が増えます。逆に短期的な投機は、リスキーで常に市場や相場に振り回され、生活や本業に支障が出てしまいます。みなさんの多くはデイトレーダーではなく、本業のかたわら投資“も”したい方々だと思われますので、長期的な「ローリターンだけど、ほっといてもおおむね大丈夫」なタイプの金融商品を選ぶべきだと思います。さらに、今日のように金融商品が多様化していれば、分散投資で、もっとリスクを減らすこともできます。「つまらない投資だな」なんて考えてはいけません。そもそも「おもしろい投資」という発想そのものが危険です。長期でローリスクの投資というものは「貯金よりけっこうましだな」ぐらいのイメージでちょうどいいのです。

王道はやっぱりコツコツ積立!?

“投資の神様”ウォーレン・バフェットは、こういったローリスクの投資で大金持ちになりました。そのほか、アメリカ人女性のアンネ・シャイバーも、40歳の時から、税務署職員としてもらう給料から、生活費を切り詰めつつ、毎月少しずつ株式投資を続けた結果、101歳で亡くなった時には、なんと当時の時価総額で22億円もの資産ができていたそうです。ちなみに彼女の投資スタイルは、バフェットと同じで「優良な企業を見極めて株を買い、それを手放さず長期的にもうける」スタイル、いわゆるバリュー投資です。

確かに成長途上の優良企業の株を買うと、数十年の間に時価総額は上がり、その間も高利回りの配当金や株主優待も受けられる。優良企業の見極めさえできれば、投資後は本業に没頭していても継続的に金が入り、老後の生活資金がほしい頃には、ひと財産できているわけです。

ライフプランに合わせて戦略を立てよう

今はネット環境や手数料の自由化、金融商品の多様化などで投資環境が充実し、逆に銀行の預金金利はまったく期待できない時代です。ならば、『PRESIDENT WOMAN プレミア』本誌で紹介した「iDeCo」に預金分を回せば、積立金は所得控除が受けられ、運用益は非課税ですから、仮に運用益が預金と同じ「ほぼゼロ」でも確定申告すれば、積立金分にかかっていた所得税から還付金がもらえます。同じ金額を預金しても、還付金はもらえません。それだけでも、かなりお得です。

ほかにも今日は、「つみたてNISA」や「純金積立」「REIT(不動産投資信託)」「個人向け国債」、外貨建ての「貯蓄型生保」など、探せばいくらでも良さそうな金融商品があります。みなさんも、まずは「65歳から90歳まで、毎月年金以外に5万円もらうには?」といった具体的目標を決め、それに合わせて投資を始めてみてはいかがですか。