豪華に海外を巡るイメージのあったクルーズ旅行も、日本発着クルーズが増え、もっと身近になってきた。国内の多くの港では、増えつつあるクルーズの発着に合わせて施設やサービスを整え始めている。2018年の訪日クルーズ船の寄港回数は、前年比5.9%増の2928回(国土交通省発表)。過去最高を記録している。利用価格も身近になってきた。そんなクルーズ旅行を実際に体験してみた。

クルーズ旅行ってどんなもの?

クルーズといえば“豪華客船”という言葉がセットで思い浮かぶほど、レストランやプールや映画館などが詰まった巨大な客船での旅が魅力。

横浜港から出発した直後、レインボーブリッジの下を通過する。スレスレで通過する様子を見守っていると、ディスコ音楽がかかりみんなでお祝いしながら、そのままデッキはダンスパーティー状態に。

クルーズ船にも、大きく分けると上から「ラグジュアリークラス」「プレミアムクラス」「カジュアルクラス」と3つのカテゴリーがあるそうだが、今回利用したプリンセス・クルーズ社は、プレミアムクラスで17隻もの船を所有している。乗船した「ダイヤモンド・プリンセス」は乗客定員約2700人で、日本で造られた船だ。2014年には改装され、海を眺めながら入れる大浴場まである日本人にはとても快適な船内になっている。

日本発着客船であったとしても、海外の会社が運行する船であれば船内は海外だ。パスポートを持って乗船する。たいてい日本語が通じる乗務員もいるため会話は問題ないが、乗務員の国籍もさまざまで英語と日本語を織り交ぜてコミュニケーションを取ることも多く、気分は外国! もちろんメニューや案内は日本語もあるので心配はいらないが、船に一歩足を踏み入れた瞬間から海外旅行気分が味わえるのはなかなか面白い。

ちなみに日本発着のお手頃クルーズ旅行で人気の会社で言えば、プリンセス・クルーズとロイヤル・カリビアン・クルーズはアメリカ、コスタ・クルーズはイタリアに本拠地を置く会社だ。

入った瞬間から荘厳なアトリウムに圧倒される。吹き抜けのラウンジで日中は演奏などもあり、優雅な気分に。

3食ついて1泊1万円代ってホント?

夜は、メインダイニングのレストランで食事の時間が各自決まっている。コースメニューがあるが、お腹のすき具合に合わせて好きなものを好きなだけ頼めるのがいい。

さて、まずはこのクルーズの料金体系をひもといてみよう。

クルーズでは、基本的に料金の中に室料、食事代、基本的なショーやジム、プールなどの利用料金などが全て含まれている。

例えば食事で言えば、ダイヤモンド・プリンセスにある5つのメインダイニングでの食事やピザ、ハンバーガースタンドなどでの食事は無料だが、アルコール飲料や寿司やステーキハウスなど特別な3つのレストランでの飲食は別料金、といった感じ。さらに早朝から夜遅くまでオープンしているビュッフェスタイルのレストランや24時間対応のルームサービスもあるので、お腹がすいたら好きな時間にフラッと行って、食べたいものだけ食べられるのもうれしい。

ルームサービスの食事代もインクルーシブ! バルコニーでゆったり朝食だって心置きなくできてしまう。

同様にプールやジムは無料で利用できるが、大浴場やスパは別料金、といったように日常の楽しみや食事は料金に含まれ、ちょっとぜいたくしてみようかなと思ったら別料金をプラスするような形になっている。

このインクルーシブの旅行代金は、シーズンや旅程によっても異なるが安いときだと1泊1万円台にまで下がっているときもある。交通費や滞在費、飲食代を考えると、オールインクルーシブでこの値段は見逃せない。

客室って快適なの?

クルーズで旅を左右するのは、部屋選びかもしれない。それによって価格も変化するので、旅をどう楽しみたいか個人差があるだろう。

ダイヤモンド・プリンセスでは部屋のカテゴリーは大きく5種類ある。上から、スイート、ジュニア・スイートは、バスタブとバルコニーが付いた部屋。海側バルコニーは、その名の通り海に面したバルコニーとシャワーが付いた部屋で、それ以下の海側と内側と呼ばれる部屋は、バルコニーがなくシャワーが付いている部屋だ。内側になると、窓がないので室内から海を臨むことはできないが、「部屋では寝るだけ。船内のいろいろなエンターテインメントを楽しみたい」という人にはいいかもしれない。「バルコニーで海を眺めながらワインを飲みたい」人には、もちろんバルコニーありの部屋だろう。

(左)ツインの海側バルコニーの部屋。シングルベッド2台とテレビやデスク、シャワーブースやトイレがそろい、クローゼットもついていて快適(右)長い廊下の両側に客室のドアが並ぶ。2日目には、自分の部屋に近い階段やエレベーターを把握し、ショートカットで動けるように

ちなみに船内は長細いため、部屋は長い左右の廊下2本の両側に位置しており、ずーっと部屋のドアが片側に60室以上並んでいる。慣れるまでは部屋番号を頼りに自室を探しながら、迷子になりそうだった。

船内でも運動不足にならない

プリンセス・クルーズの日本発着クルーズの場合、短くても5日から、長いと2週間以上になってくる。そんなに長い期間を船の上で過ごして飽きないのだろうかという心配もあるだろう。ましてや海を毎日眺めていたら、さすがに美しくても飽きてしまう。

そんな心配はご無用。毎晩部屋には翌日の日程とプログラムのスケジュールが書かれた船内新聞と呼ばれる紙が配られる。朝から深夜まで盛りだくさんのイベントが船内のあらゆるところで開かれていて、どれに参加しようかワクワクしながら選べる上に、ほとんどは無料イベントだ。

さらにデッキの巨大スクリーンでは、話題の映画を上映し、その時間になるとポップコーンまで配ってくれる。音楽が好きならば、船内のあちこちでやっている演奏を聞いてあるいてもいいし、美容に興味があればヘアーカウンセリングやメイクレッスンなどに行ってみてもいい。

デッキの巨大スクリーンでは、話題の映画がよく上映されている。夜は、星空を眺めながらのんびり見るのも楽しい。

そして、船の上での運動不足を解消する施設も充実。利用し放題のジムはもちろんのこと、室内、室外のプールもそれぞれある。さらに船内プログラムの中には、「ズンバ」「ラインダンス教室」「社交ダンスレッスン」「ヨガ」などもあり、参加自由。興味半分で行ってみたズンバレッスンは、普段着からスポーツウエアの人まで100人くらいが集まり、インストラクターの陽気なトークとダンスに合わせてみんなでノリノリに踊っていた! 年齢層も20〜70代以上と幅広く、うまい下手を気にせずとにかくみんな楽しんで踊るという雰囲気が何より入りやすく、ついつい一緒に踊ってしまう。30分もすると、じんわり汗ばんで気持ちもアップ。夜にはフォーマルなダンスパーティーなどが開かれる日もあるが、こういうレッスンに参加しておくと、抵抗感なく楽しめるかもしれない。

ちなみに一人で旅行に来ている人も案外多く、そういう人たちが集まって交流できるイベントもある。男女問わず旅の友達を作ってみる機会にもなるそうだ。

(左)開閉式のガラス天井のある室内プールエリアは明るくて気持ちがいい。(右)船から見る夕日はまた格別。仕事や喧騒から離れて、ぼーっと夕日を眺めるぜいたくな時間を楽しみたい。