今回は、大型連休でなくてもできる「プチ休息法」をご紹介。遠出する時間がとれなくても、平日や週末、さらには仕事中にも脳を休めることはできるのだとか。茂木さんおすすめの「令和型休日プラン」とは――。

たき火をするだけでも楽しめる

【茂木】GWでしっかり休息できたとしても、それが終わったらまた忙しい日々が始まりますね。

【山本】リフレッシュって、実は特別なところへ行かなくてもできると思うんです。僕は、よく庭にテントを張って子どもとキャンプしていますね。テントで一晩過ごすだけでアウトドア気分を満喫できて、すごく楽しい思い出になります。

【茂木】キャンプは楽しいですよね。僕は、最近はできるところが少なくなったけどたき火が大好きなんですよ。カナダに旅行しているとき、みなでたき火を囲んでマシュマロを焼いたりして、あれは楽しかったなぁ。キャンプといってもそんなに特別な準備はしないんですよ。それこそ山本さんが庭でキャンプするような気軽な感じで、チーズとパンとワイン1本だけ持っていって、好きなところにテントを張って。日本でも気軽にできるといいんだけど。

【山本】キャンプより身近なところでいうと、僕は犬の散歩も楽しくてたまらないんです(笑)。ただ近所を散歩するだけですが、この風景の魅力的な部分はどこだろうと探しながら歩くとわくわくしてくるんですよ。

【茂木】その場の魅力を感じとる力があれば、どこででも楽しめそうですね。新元号の「令和」は万葉集の一文からとったそうですが、元の文は大伴旅人の邸宅でひらかれた「梅花の宴」を表したものだそうです。この宴って、要は家で梅の花を見ながら酒を飲むだけなので、お金もかけていないだろうに、すごくラグジュアリーな雰囲気が伝わってくる。しかも、それが千年以上も後に元号になるんですよ。これも感じる力のなせる技ですよね。

平日に効く!令和型の休日プランとは

【山本】感じる力さえあれば、どこででもいくらでも楽しくなれると思うんです。そうした楽しみは心のリフレッシュにもつながるはず。普段から身の回りで魅力的なものを見つけるように意識して、この力を鍛えておきたいですね。

【茂木】「令和」の精神に学んだ休日プランっていうのはどうかな。今の季節なら、ちょっと外に出て新緑を見ながら飲むとか。平日や週末のリフレッシュって、お金や時間をかけなくても、自然を味わう力さえあれば意外としっかりできるのかもしれない。

【山本】茂木先生は、よくやっているリフレッシュ法はありますか?

【茂木】僕がよくやるのは「缶ビール1本プラン」ですね。仕事が早めに終わったら、夕暮れどきに公園や川沿いや林の近くを歩きながら缶ビールを1本だけ飲むという……。地方に出張したときはもちろんですが、都内でもあんがい気持ちのいい散歩道は見つかるものです。もちろん、マナー違反にならないように気をつけながらですけど(笑)。僕なんかは、これだけですごく贅沢感を味わえるんですよ。お酒が飲める人はそこから始めてみたらどうかな。

【山本】朝から必死で仕事をしていると、夕方には頭がパンパンになりますよね。そこで「缶ビール1本プラン」ができたらすごい解放感が味わえそうです。でも、まだ仕事をしなくちゃいけないときは、僕の場合は10分ほど会議室に隠れて瞑想します。電気もつけずにひたすらボーッとする(笑)。そうすると脳に空きスペースができるというか、「これ以上何も考えられない!」って思っていたのがスッと切り替わって、思考力や集中力を取り戻せる。顔も、むくみがとれてスッキリする気がします。

【茂木】それなら会社にいるときもできますね。目の前の仕事に飽きたり集中力が続かなくなったりしてきたら、会議室やトイレでちょっと瞑想するといいかもしれません。もちろん、トイレは済ませたらすぐに出ないと、迷惑になりますが(笑)。それでこまめに脳を休息させておいて、週末には近場の自然に触れ、もう少し長い休みなら大自然の中に出かけるようにしたいものです。

休みを通して本来の自分を取り戻す

【茂木】4月から年5日の有休取得も義務付けられました。休みをとることが明確にルール化されたわけですから、みなさんには上司に気を使わず堂々と休んでほしいですね。

【山本】有休も含めれば、生活の中でできる休息法ってたくさんありますね。茂木先生の缶ビールプランもそうですし、仕事中に瞑想するのもひとつの手。加えて、今は日帰りや土日だけで行ける自然体験プランも豊富です。

【茂木】生活の中でできることといえば、ガーデニングも脳にいいと実証されていますよ。植物を育てる、緑に触れる、手を動かすといった要素が、脳の活性化や感性を鍛えることにつながると言われています。休日に対する意識を、「家でゴロゴロする日」から「積極的に休息する日」へと変えれば、誰でも自分なりの「したいこと」が浮かんでくると思うんですよ。

【山本】本当にそうですね。大人だけではもちろん、家族で楽しめるスポットもたくさんあります。仕事が忙しい人ほど、休日にはそうした場所へ出かけて、本来のいい状態を取り戻してほしいと思います。

【茂木】最高の休み方とは、脳をしっかり休息させる休み方。大事なのは、ボーッとしたり仕事中とは違う体験をしたりすること。そのためにも、ぜひ自然の中に身を置いてみてほしいですね。休み明けのパフォーマンスが、きっと変わってくると思います。

茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者。1962年、東京都生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。第4回小林秀雄賞受賞の『脳と仮想』(新潮社)、第12回桑原武夫学芸賞受賞の『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)、『脳を使った休息術』(総合法令出版)など著書多数。
山本 貴義(やまもと・たかよし)
そとあそび研究家。アメリカ・ワイオミング州にあるグランドティトン国立公園の大自然に感銘を受けたことをきっかけに、2004年7月、アウトドアレジャー専門予約サイト「SOTOASOBI(そとあそび)」を創設。現在も、年間100日はアクティビティを取材する日々を送る。